フライブルク移籍から2年、木下康介の今 U−23監督が見た現在地と未来予想図

中野吉之伴

課題はボールの呼び込み方

メタクサス監督は木下の具体的な課題としてボールの呼び込み方を挙げた 【中野吉之伴】

 現在では調子も上向いてきているという。2月8日からのトルコ合宿に参加できたことも大きい。では心身ともにコンディションを取り戻せば、問題はないのだろうか。

 メタクサスは「自分の長所を試合の中で発揮できるかどうかが大切になる。例えば彼のようにスピードのある選手だったら、その速さを生かして相手ゴールを目指すことが重要だ。ゴールから遠ざかる動きではない。この辺の感覚を繊細にさせることが大切で、今練習から取り組んでいる」と説明してくれた。この辺りは木下の戦術理解とも深く関わるところ。

 掘り下げて聞いてみると、メタクサスは「おそらくコウスケはこれまで自分のフィジカル能力でなんとかなってきた部分が大きいのではないだろうか。優れたフィジカル能力を持つ選手は極端な話、ロングボール一本で抜け出し、それをチャンスに結びつけ、ゴールすることができる。しかし、そのうち周りの選手も大きく、速くなり、それだけでは通用しないようになる。そうなるとプレースタイルを変える必要が出てくる。コウスケは今その段階にいるのだと思う。これまでと違ったボールの呼び込み方を身に付けなければならない」と具体的な課題を挙げてくれた。

 やるべきことは見えてきた。しかしどんなに正しいことでもそれが深いところでしっかりと伝わらないと意味がない。フライブルクでは外国人選手に対して教育学の専門家がドイツ語の授業をしている。ドイツ語でのコミニュケーションも相当上達してきていることだろう。しかし相手の意図をしっかりと理解できるレベルまで来ているのかどうか。

 メタクサスは「(理解してくれているかは)分からない(苦笑)。ゆっくりと話すようにはしているし、向こうがうなずいて『分かった』と言えば、こちらも『分かってくれた』と祈るしかない」と話し、「それに重要なのは監督が言ったことや練習でやったことをそのままやることではない。『今日は監督が言ったからその通りのプレーをして、明日監督が言わなかったら、そのプレーはしない』では成長がない。われわれはビデオ分析も多くやる。自分たちのチーム分析もするし、トップレベルのチームのプレーを見せることもよくやる。さまざまな情報を一度バラバラにして、自分なりに整理をしていくことが必要なんだ。指導者はその助けをする。そうすることで成長を支えることができると思う」と補足してくれた。

才能を試合の中で発揮できたら……

 育成クラブとして有名なフライブルクは成長するためには時間が必要だということを理解している。大人のサッカーとユースサッカーの差は大きい。フィジカル、駆け引き、プレーインテリジェンス。成熟した選手になるために身に付けなければならないことは多岐にわたる。今すぐに求められるレベルに到達することは簡単なことではない。でも、木下がコンディションを取り戻し、試合の中で必要な動きを身に付けたら?

「それはさっき言っただろう? 彼が自身の才能を試合の中で発揮できるようになったら、間違いなく上への道が拓けてくる」

 メタクサスは確信に満ちた様子で答えた。

 インタビューが終わり、オフィスの外に出ようとした時、壁に立てかけられた作戦ボードが目に入った。そこには次の練習試合に向けての予想スタメンと思われるメンバー。FWの位置には“KINOSHITA”の名前があった。まずはじっくりと体を作り、後期開幕を迎えてほしい。そして着実に経験を重ね、得点力不足に悩むトップチームを救う存在へと育ってほしいものだ。

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著者プロフィール

1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで経験を積みながら、2009年7月にドイツサッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU15チームで研修を積み、016/17シーズンからドイツU15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。

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