青木宣親、新天地の役割は不透明なまま けがなくチームに貢献できるかがカギ
けがなく使い勝手の良い選手になれるか
2月6日のメディアデーの記者会見でも、1つのプランとして7番か8番に青木の名前を挙げたが、ラインアップについては多くのオプションがあると前置きし、いまだに確定させていない姿勢を変えていなかった。
しかし、これは球団の例年のやり方とも見て取れる。スプリングトレーニングで選手を十分吟味する。シーズン中も打順を入れ替えたり、状態の良い選手を使うというのはボウチー監督のやり方である。1つの特徴として、内野手なら内野全部、外野手なら外野全部のように、基本的にはどこでも守れるという選手を好む球団である。
メジャー通算1618勝の名将・ボウチー監督は選手交代のタイミングなどにも優れ、守備も打順も状況に応じて順応できる選手が多ければ多いほど、監督の采配もさえる。
青木に求められていることは何か? どうすればジャイアンツでレギュラーとして生き残れるのか?
チームの勝利のために戦力となることは言うまでもないが、しかしそれは個人的に、3割を打つことでもヒットを200本打つことでもない。守備でファインプレーを連発し、ゴールドグラブに輝くことでもない。
試合に出た時に常に最高のパフォーマンスができること。そう、けがをしないで1年間、シーズンを通して働けることだ。そうすることでチームから信頼を得て、いつでも使える選手になる。いい意味で使い勝手の良い選手になれるか、である。
ファンから愛され本人もチーム残留を強く望んでいたマイケル・モースが再契約に至らなかった理由は、一部では外野の守備力などと言われているが、やはりけががちであったことが大きいとされる。それだけ1年契約というのはけがをしてしまうと厳しいのだ。
日本人初のメジャーリーガーでジャイアンツOBでもある村上雅則氏は「守備が良く、足も速いので、機動力を使うボウチー監督としても使いやすいと思う。確か奥さんもカリフォルニアの方を希望していたようなので、本当に良かったと思う」と期待を寄せた。
チームワークを重視するジャイアンツ
2010年、12年、14年とここ3回ワールドチャンピオンになったチームは、それぞれ違うカラーだったが、全てに共通しているのは全員が己のためではなくチームのためにプレーできる選手たちであること。人格者であるボウチー監督の人柄もあり、選手たちと話していてもよく聞くのが「For Team」という言葉。チームのために、たった1つの目標に向かって選手がみな同じ方向を向いているチームである。普段からまとまりのあるチームなだけに、ポストシーズンという独特の緊迫した状況ともなれば、より結束力を深めて大きな力が発揮できる。
12年のナ・リーグ地区シリーズでは、今日負けると終わりという崖っぷちまで追い込まれながら勝利した後、験を担いで翌日も全員同じ洋服で球場に来たこともあった。そんなチームのことを常に優先する集団である。
チームワークを重んじるこのチームにフィットするためには、勝利のためにチームプレーに撤することができる選手であることは大前提だが、多くの選択肢を備え、チームに必要な選手になることだ。
まずはこのスプリングトレーニングでレフトのレギュラー争いに勝たなくてならない。ライバルとなる選手たちは守備力では青木よりも優れている選手が多い。守備面だけではライバルより抜きん出ることは難しい。レギュラーを確実なものにするためには、打撃面で期待されている以上の成績を残し、どこまでアピールできるかがカギになると思われる。首脳陣は青木を、ラインアップに多くの選択肢を可能にする選手として捉えている。外野はどこでも守れて、打順が上位でも下位でも、その時のチームの状況や戦略に順応し、結果を出せる選手になれるか。
ボウチー監督はオープン戦でも、いろいろな状況で多くの作戦を試すだろう。青木は守備も打順も与えられた状況に応じて、いかに対応し結果を残せるかを試されることになる。
パワーではなくスピードと出塁率重視の戦略を選んだチームは、より足や小技を使ったスモールベースボールを多用する可能性がある。それは青木にとっては朗報だろう。青木のプレースタイルはチームの戦略にフィットするであろうからだ。
パブロ・サンドバル(現レッドソックス)のようにファンから愛される選手になることは難しいが、チームのために結果を残し、チームメートやファンからチームに必要な選手として認識されるようになれば、“好きな街”に歓迎される選手になれるのではないか。そしてボウチー監督の魔法のカードになることができたら、青木は再びワールドシリーズの舞台でプレーできるかもしれない。