“カリスマ”立嶋篤史の長男がプロデビュー=父譲りの右ローもドローで「甘くない…」

中村拓己

デビュー戦では異例の第6試合

1990年代前半に“キックのカリスマ”としてキックボクシングブームを巻き起こした立嶋篤史の長男・挑己(写真左)がプロデビュー。注目の結果は三者三様のドローに終わった 【中村拓己】

“キックボクシングのカリスマ”立嶋篤史の長男・挑己(いどむ)が12日(月・祝)、東京・後楽園ホールで開催されたJ−NETWORK「J−KICK2015〜Return of the warriors 1st」でキックボクサーとしてプロデビューを果たした。

 1990年代前半に全日本キックボクシング連盟で活躍し、人気お笑い芸人ダウンタウンの松本人志さんも著書でその活躍ぶりに触れるなどキックボクシングブームを巻き起こした立嶋。43歳となった現在もプロのリングに立ち続け、ついに自身の長男・挑己がプロのリングに立つことになった。

 挑己はアマチュア大会で実績を残し、国内でプロデビュー出来る規定の16歳を迎え、今大会で待望のプロデビュー。デビュー戦ながら休憩明けの第6試合に組まれ、入場曲あり&客席の中階段からの登場という異例のプロデビュー戦となった。

 挑己は立嶋と同じ入場曲「Holding out for a hero」が流れる中、立嶋の後ろに続くようにリングに上がる。対戦相手の一斗缶テツは関西で活動する契明ジムの所属で、未だ勝ち星には恵まれていないものの、すでにプロでの試合を経験している選手だ。

応援団の立嶋コールが後押しも…

父と同じ入場曲「Holding out for a hero」でリングに上がった挑己 【中村拓己】

 試合開始のゴングが鳴ると、サウスポーのテツに対して、挑己が右ストレートで思いきりよく飛び込む。それを皮切りに挑己が右ストレート、テツが左ストレートを打って首相撲という展開が続き、終盤、挑己が右フック、ボディへのヒザ蹴りで攻勢に出る。

 2Rも先に挑己が右フックで前進。テツも左のパンチを返して突進し、お互いに一発パンチを当てては首相撲という展開を繰り返す。インターバル中、立嶋から挑己に「自分らしいところ見せてないぞ!」と檄が飛ぶ。

 最終R、挑己が立嶋の得意技でもある右ローを連打。立嶋は応援団に立嶋コールを煽って挑己を後押しする。しかし中盤以降、テツが左ストレートを強振して前に出ると挑己が後退。挑己も必死に右ローを蹴り返すが、テツの前進を止めることが出来ない。

 このまま試合終了となり、判定は3者三様(30−29、29−30、29−29)と差がつかず、立嶋篤史の長男として注目を集めた挑己のプロデビュー戦はドローに終わった。試合後、控室に戻った立嶋は挑己のバンテージを外しながら「おつかれさま。練習通りに上手くいかないのがプロのリングだから」と声をかけた。

「試合の緊張に負けました」

父譲りの右ローを連打で後楽園ホールを沸かせたが、一斗缶テツの前進を止めることができなかった 【中村拓己】

 バックステージで「(プロのリングは)甘くないです、当たり前ですけど。イメージとは違いました」とデビュー戦を振り返った挑己。前日計量から試合を迎えるまでは「すごくリラックスしていい感じだった」というものの「いざリングに上がったら、ビビッて緊張してしまいました。試合中も終始、肩に力が入っていてリラックスできなかったです。所々でいけるという感覚はあったけど、下手したら負けていたかもしれない試合だったので、もっと(プロとして)意識してやらなければいけないと思いました」と思い通りの試合が出来なかったという。

 異例の扱いを受けて、周囲の注目を集める中でのデビュー戦だったが、挑己は「そこも考えて意識して試合をやるようにしていたんですけど、周りの期待のプレッシャーというよりも、ただの試合の緊張に負けてしまいました」とあくまで周りのプレッシャーよりもデビュー戦の難しさを感じたと話した。

 一方、「相手がサウスポーだったので、右ストレートやサウスポー対策をやりました。でもそれを全部理解しても(試合になったら)難しいよって。相手は右(オーソドックス)とやっている経験は多いけど、こっちは実戦もサウスポーも初めてだから、思い通りにはいかないよと言っていました」と戦前から難しい試合を予想していたという立嶋。

父からは「精神面を強くしたい」

セコンドについた父・篤史からは「自分らしいところ見せてないぞ!」との檄が飛んだ 【中村拓己】

 その上で今後の挑己に「何を教えていきたいか?」と聞かれると「大きな声で挨拶すること、まずはそこからです。やっぱり気持ちの問題なんで。積極的に自分から教えてもらうことだったり、何を覚えるにしても気持ちがあるかないか。気持ちがないと形しか覚えないし、気持ちよりも技術という人がいるけれど、技術は気持ちあってのものでしょう」と精神面を強くしたいと答え、「(気持ちがない)見せかけの選手を欲しいとは思わないし、僕のところでキックをやるなら気持ちが大事です」とキックボクサーとしての気持ちの重要性を説いた。

 立嶋は挑己のプロ2戦目について「春くらいには出来たらいいなと思います」とコメント。挑己は「今日の試合で次の目標が出来たので頑張ります。(次の目標は?)気持ちとか練習をもっとやらなきゃダメだと思いました」と今まで以上に気持ちを入れてキックに取り組むと話し「次は誰が見ても勝ちだと分かるように、しっかり要所要所で自分らしさを出さないとダメだと反省しています」と次戦でのプロ初勝利を誓った。

J−NETWORK結果

 今大会のメインイベントでは空位になっていたJ−NETWORKスーパーライト級王座決定戦で1位・鈴木真治と8位・潘隆成が対戦。本戦の3分5Rでは決着がつかなかったが、延長Rでボディを効かせた鈴木が一気に連打をまとめて潘からダウンを奪うと、潘のセコンドからタオルが投入され、鈴木がTKO勝利で新王座に就いた。

以下は大会結果

■J−NETWORK「J−KICK2015〜Return of the warriors 1st」
1月12日(月・祝)東京・後楽園ホール

<メインイベント J−NETWORKスーパーライト級王座決定戦 3分5R・延長1R>
○鈴木真治(藤原ジム/同級1位)
(延長R1分9秒 TKO)
●潘隆成(クロスポイント吉祥寺/同級8位)

<セミファイナル 58.5kg契約 3分3R>
○八神剣太(レジェンド横浜/J−NETWORKフェザー級王者)
(3R2分21秒 KO)
●大樹(ARENA/NJKFフェザー級3位)

<第7試合 68kg契約 3分3R 肘あり>
△森本一陽(レグルス池袋/J−NETWORKスーパーウェルター級王者)
(判定0−1 ※29−30、29−29、29−29)
△CAZ JANJIRA(JANJIRA GYM)

<第6試合 51.2kg契約 3分3R>
△一斗缶テツ(契明ジム)
(判定1−1 ※29−30、30−29、29−29)
△立嶋挑己(ASSI−PROJECT)

<第5試合 52kg契約 3分3R・延長1R>
●難波久美(契明ジム)
(延長判定0−3 ※9−10、9−10、9−10)
○トモコSP(WSRフェアテックス)

<第4試合 58kg契約 3分3R 肘あり>
○立澤敦史(チャモアペットムエタイアカデミー)
(判定3−0 ※30−29、30−29、30−29)
●長崎秀哉(WSRフェアテックス)

<第3試合 ヘビー級 3分3R>
△遊笑(Y’s glow)
(判定0−1 ※27−29、29−29、29−29
△OD・KEN(Reborn経堂)

<第2試合 60kg契約 3分3R>
○KAZUMU(Gwinds)
(1R2分17秒 反則)
●森戸広文(TEAM SPARKY)

<第1試合 46kg契約 3分3R>
○COMACHI(MSJ)
(判定3−0 ※30−28、30−27、30−27)
●剛力DATE(Team DATE)
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著者プロフィール

福岡県久留米市出身。プロレスファンから格闘技ファンを経て2003年に格闘技WEBマガジンの編集部入りし、2012年からフリーライターに。スポーツナビではその年の青木真也vs.エディ・アルバレスから執筆。格闘技を中心に活動し、専門誌の執筆、技術本の制作、テレビ解説も務める。

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