“山の神”なしでも青学大は勝っていた 駒澤大OB神屋氏が箱根駅伝を解説

構成:スポーツナビ

心の柱となった藤川の存在

青山学院大の藤川(右)は9区の歴代2位の記録となる1時間8分4秒で走り、強さを見せた 【写真:アフロスポーツ】

――復路のレースに限ると、どの選手が印象に残りましたか?

 やはり9区の青山学院大・藤川選手ですね。(昨年11月の)世田谷246ハーフマラソン大会で藤川選手が優勝していますが、その自信もあったのだと思います。もちろん5区で神野選手がヒーローになったように見えますが、藤川選手も9区区間歴代2位という記録で走っていますので、非常に強い選手だったと思いました。青山学院大にとって、心の柱になっていたと思います。

 早稲田大の三浦雅裕選手も6区の山下りで良い走りをしていました。往路で前のチームと差がついてしまった中で、復路で崩れても仕方がないかと思いますが、そこをしっかり三浦選手が走ったことで、なんとか5位で持ちこたえたと思います。復路の総合タイムを見ても復路2位の駒澤大と20秒程度しか変わりませんし。三浦選手のスタートダッシュで意地を見せられましたね。

 駒澤大では8区の大塚祥平選手、9区の其田健也選手も来年につながる良い走りをしたと思います。簡単には崩れないというところを見せました。

――そうなるとやはり、来年も青山学院大、駒澤大は抜きん出た存在になりそうですが

 青山学院大はもちろん強いと思います。駒澤大も大塚選手、其田選手、7区を走った西山雄介選手もいますし、往路を走った中谷圭佑、工藤有生がいます。5区の馬場選手も次回は平地を走るかもしれません。その中で先ほど言いました2区、4区、7区、9区で区間賞を取れる強さがあれば、勝てるのではないでしょうか。

 これからは、今大会で青山学院大が奪っていった区間賞を、どれだけ他の大学が奪い返せるかですね。東洋大も服部勇馬、弾馬の兄弟がいますし。青山学院大を見ながら、強いチームを作り直すことが課題だと思います。
 村山兄弟(謙太/駒澤大、紘太/城西大)の卒業で大学長距離界のイメージが変わると思いますが、そこで青山学院大の時代になることを阻止できるかどうかですね。

シード権の獲得を見越したチーム作りを

――シード権争いに目を向けると、山梨学院大、大東文化大などがシード権を獲得し、帝京大、順天堂大などがあと一歩のところでシード権を逃しました。シード権争いの明暗を分けた要因は何だと思いますか?

 山梨学院大は1区、2区でブレーキ、またエースのエノック・オムワンバ選手が欠場ということもありましたが、それでもシード権を獲得できました。結局のところ、力が均衡している中で、ミスをしても取り返せる部分まで残れるか、それとも中央大のように最後に致命的なブレーキをしてしまうかの違いはありますね。
 トップ争いにも言えますが、いまの大学長距離界では1万メートルの持ちタイムが28分台というのはたくさんいて、27分台がトップになっています。それぞれのチームが28分の持ちタイムを持っている選手を抱えることになりますが、その中でどれだけ自分の力を発揮できるか、ミスをしてもそれを取り返せる選手がいたかどうかだと思います。

――そのあたりが駅伝のうまさという部分でしょうか?

 シード落ちをしてしまった神奈川大もそうですが、持ちタイムが28分台という選手を数人抱えていても崩れてしまうことはあります。オーダーにもよりますが、きちんと10人がそれぞれの力を発揮して、ミスをしても補えるかどうか、トータルで戦えるかどうかですね。
 次回大会は中央大、日本大、日本体育大、順天堂大といった古豪が予選会に回ります。これらのチームが駅伝を知らない、ということはないのですが、空回りしたり、かみ合わなかったことが差だったと思います。ただ、ひとことで明暗を分けるのはどこかと言うのはむずかしいですね。
 予選会を突破することは、今回は創価大も成功しましたし、次回は東京国際大あたりもしっかり狙ってくると思います。ただチーム作りをする中で、本戦を見据えた組み方をしないと、箱根で上位に上がるのは難しいと思います。とりあえず持ちタイムが28分台の選手をそろえれば良いというわけではないので。

――やはり箱根駅伝本番は、持ちタイムだけでは力が図れないと?

 優勝争いもそうですが、一番難しい区間、ハイリスクな区間が5区、次が下りの6区、さらに距離の長い2区、9区、そして遊行寺坂がある8区の順で難易度があると思います。1区に関しては、高速レースになることはありますが、通常のハーフマラソンと距離的にも変わらないし、コースも同じなので、そこまでリスクは高くなく、大きなブレーキとはなりません。
 その中で、予選会だけを見据えると、このハイリスク区間の難易度が高いんですよね。特に復路は8区、9区で差が広がります。そのリスクを考え、本戦に合わせてトレーニングできるかどうかが、やはり大事かと思います。

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