往路の潰し合いを抜け出した青山学院大 駒澤大OB神屋氏が箱根駅伝往路を解説

構成:スポーツナビ

トップギアで走り続けた神野

1時間16分台という大記録を打ち出した青山学院大・神野は、山でも恐れずに走りきった 【写真:日本スポーツプレス協会/アフロスポーツ】

――最終の5区について、優勝の立役者となった神野選手は1時間16分15秒と、参考記録となった柏原竜二選手の記録(1時間16分39秒)を上回りました。神野選手の走りについて、どんな違いがありましたか?

 最初から最後まで普通に走っていましたよね。山の厳しいコースを走っているという感じではなく、23キロを、平地の2区と同じ感覚で走り切ってしまったという感じです。駒澤大の馬場翔大選手もそうでしたが、恐る恐る走って、山に耐えるために、どこかローギアに落としていたと思います。
 今までの山を走った選手では、柏原選手ぐらいしかトップギアで上り切った選手がいませんでしたが、神野選手は柏原選手と同じような走りをしたと思います。最後まで体幹がぶれず、フォームもぶれたという印象もなく、きつそうな表情は見せていましたが、気持ちはぶれていなかったですね。前々から粘り強いと言われていましたし、前回は2区を区間6位で走る走力も持っています。そういった意味でも信頼を置ける選手だったのだと思います。

復路での逆転には積み重ねが必要

――明日は総合優勝が決まる復路となります。青山学院大は4分59秒のアドバンテージを持ちましたが、逆転される可能性は?

 過去にそのタイムを逆転されたことはないのではと思います。今回の青山学院大は復路に藤川拓也選手、小椋裕介選手、高橋宗司選手、さらには勢いのある若い選手もいます。6区の山下りを安全に走るかもしれませんが、そこで2分つめられても3分の余裕があるので、よほど調子が悪い選手が出なければ大丈夫かと思います。

 駒澤大で言いますと、6区の西澤佳洋選手を始め、ハーフマラソンを1時間2分台で走れる選手を7区から9区までそろえることができます。走力的には追えないことはないと思いますが、無理に差を縮めようとすると、5区で馬場選手が失速したような状態になりかねません。
 明治大、東洋大、駒澤大の3チームが一緒に優勝を狙って追うのなら別ですが、2位を取るために潰しあうような展開になると、厳しいかもしれませんね。

――青山学院大を追うチームが逆転優勝するためのポイントは?

 自分たちのレースに徹し、1区間1区間のタイムを刻めるかどうかですね。もし2位争いで潰しあいをしてしまうと、結局タイムは伸びないと思います。
 無理に突っ込むのではなく、とにかく1区間1区間、区間記録に近いタイムで走ったり、自分の設定する目標タイムを目指して走る。例えば駒澤大の西澤選手なら、2位に上がることよりも、前回の58分台よりも速いタイムで走ることを目指すのがよいと思います。そのひとつひとつを積み上げた結果として、青山学院大の背中が見えるかもしれませんね。

激しくなりそうなシード権争い

――復路ではシード権争いも注目されますが、往路を見ていて期待ができるチームはありましたか?

 東海大が上がってきているなという印象がありました。若い選手を並べていますので、この先に期待が持てます。両角速監督に代わって、年々よいイメージを作り、確実に力をつけているなと思います。
 あとは駅伝巧者の中央大ですね。予選会の時期には本戦出場も危ぶまれましたが、しぶといレースをして、駅伝をうまく走っていると思います。中央学院大も同じようなチームですね。

――このあたりのチームがシード権を獲得しそうでしょうか?

 もちろん13位ぐらいまではそれほど差がありませんから、もし1つや2つの区間で失敗があるとあっという間に落ちてしまう可能性はあります。やはり復路は優勝争いよりも、シード権争いの方が激しくなりそうですね。

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