ドイツ専門誌による選手採点の基準 前半戦を終えた日本人選手の評価とは?

採点を始めたのは『キッカー』誌

『キッカー』誌が始めたという選手の採点。その基準や今季の日本人選手に対する評価とは 【写真:アフロ】

 2010年に亡くなったカール=ハインツ・ハイマンが存命であれば、昨年12月で90歳になっていた。サッカーの天国へと去った彼の遺産は、スポーツジャーナリストに不死の価値を与えた。『キッカー』誌の編集長として、彼は同誌に独特のアイデンティティーを残したのだ。

 ハイマンは、ブンデスリーガ最多得点者に贈る『トーアイェーガーカノン』という賞を創設し、もう一つ、つくり出したものが選手採点である。ファンのみならず選手たちにとっても、自身が得た印象と『キッカー』の採点を比べることは、もはや儀式ともなっている。

 ドイツでは、採点は最上級の「1」からその正反対の「6」の中で評価される。そして『キッカー』はポジティブにもネガティブにも極端で、ロッカールームで議論がスタートするのだ。

 今日、選手採点は『キッカー』の専売特許ではない。ドイツ最大の大衆紙である『ビルト』や、地方紙最大の『WAZ』のインターネット版でも、概して似たものにはなるのだが、ブンデスリーガのスターたちのパフォーマンスを採点している。

 外国人にとっての大きな問題はこんなところだろう。どうやって、採点されるのか? 良し悪しを判断する基準は何なのか?

基準はスタジアム内部の印象

他のリーグと比べて、ドイツの採点はスタジアム内部の印象によるところが大きい 【写真:ロイター/アフロ】

 欧州の他のリーグでは、選手のパフォーマンスが数値的なデータと関連付けられることが多い。だがドイツでは、採点はスタジアム内部の印象によるところが大きい。サッカーにあるのは、単にゴールとアシストだけではないのだ。走るコースどりや守備での貢献度、またはやる気といったものが重要かつ判断を分ける要素となる。もしかすると半分、いやほとんどがそうした傾向にあるかもしれない。

『キッカー』は、月曜より前に採点を公開することはない。会議のような話し合いを行うためだ。例えば『WAZ』では、試合終了の笛とともに2人の編集者が送ってくる主観的な印象がベースとなる。『ビルト』とは対照的に、『WAZ』の記者はなぜこの採点になったのか、説明をする必要があるのだ。そのため、『WAZ』が地盤とする西ドイツ地方のシャルケ04やドルトムントの全選手に対する採点には、短いコメントがつけられる。

 例えば、シャルケの内田篤人はブンデスリーガ第17節、0−0で引き分けたハンブルガーSV戦で守備面は堅固だった。だが、攻撃に関してはスパイスを欠いていた。内田につけた「3」という評価について、『WAZ』のエディターは語る。「内田はとても注意深くプレーして、ハンブルクの選手にほとんど抜かせなかった。だが、敵陣では最後の瞬間でミスをしていた」。

 ドルトムントの香川真司は同じく第17節の1−2で負けたブレーメン戦で、後半しかプレーしなかった。チームの黒星にストップをかけられず、出場した45分間で存在感は皆無だった。『WAZ』が彼につけた採点は、下から2番目の「5」だった。理由は、「中央からマークを外すことに失敗し、ペナルティーエリア周辺で仕事ができなかった」からだ。「概して彼のアクションは、成功しなかった」。さらには絶好機を逃していた。

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著者プロフィール

フランソワ・デュシャト 1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net。 ダビド・ニーンハウス 1978年生まれ。20年以上にわたり、ルール地方のサッカークラブに焦点を当て、ブンデスリーガの取材を続ける。09年からは「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)で記者を務める。ツイッターアカウントは@ruhrpoet。自身のサイトはwww.david-nienhaus.de。

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