東京五輪へ選手強化はどう変わる? 強化費増で地域スポーツにも恩恵

高樹ミナ

強化育成で成果を挙げる卓球では、平野美宇(左)、伊藤美誠らジュニア世代が躍進を見せている 【写真:ITTF via Action Images/アフロ】

 2020年東京五輪・パラリンピックを控えた日本人選手の強化育成が急務となっている。18日には日本スポーツ振興センター(JSC)が、金メダル獲得数で世界ランキング5位以上をめざす文部科学省の「2020ターゲットエイジ育成・強化プロジェクト」の一環として、ジュニア世代を重点強化する6競技9種目(卓球、テニス、トライアスロン、水泳、陸上、ライフル射撃)を発表。こうした動きを受け、今後ますます加速する選手の強化育成と、そのための強化費について考えてみたい。

競技団体ごとに行われる特色ある取り組み

 選手の強化育成は基本的にNF(National Federation)と呼ばれる国内競技連盟ごとに行われている。強化費は国からの補助金など。それぞれプランに特色はあるものの柱は共通しており、「代表チームおよび選手の強化」「ユース世代の育成」「指導者の養成」のほぼ3点に集約される。

 実際に成果を挙げている例はいくつかあるが、例えば卓球はその筆頭と言えるだろう。かつて卓球王国と呼ばれ世界をリードしていた日本は、中国にその座を奪われて以降、1980年代後半から年代別の全国大会を設け、2001年には小学生のホープスナショナルチームを結成。長期計画のもと若い有望選手の強化育成に組織的に取り組んできた。そして、中学1年生から高校3年生のジュニアナショナルチーム、トップのナショナルチームまで継ぎ目のない継続強化をめざし、年代に幅を持たせて競争させる仕組みを構築。その結果、男女ともに選手層が厚みを増した。女子卓球界をけん引する福原愛(ANA)やそれに続く石川佳純(全農)、さらは平野美宇(JOCエリートアカデミー)、伊藤美誠(スターツ)らジュニア世代、すなわち東京五輪世代の成長には目を見張るものがある。

 また今年6月、日本バレーボール協会から「Project CORE」という新たな強化プロジェクトが発表された。柱は日本バレーにふさわしい「指導方法策定」、バレーボール教室を拡充する「普及事業」、長身選手などをリクルーティングする「有望選手発掘」、東京五輪をめざす世代の「選手強化」の4つ。とりわけ東京五輪世代に至っては普段所属している高校や大学で試合がない時期にナショナルトレーニングセンター(NTC)での強化合宿に参加したり、国際大会に出場して多彩な経験を積むなどしながら国際競争力を磨いていく方針を打ち出している。

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著者プロフィール

スポーツライター。千葉県出身。 アナウンサーからライターに転身。競馬、F1、プロ野球を経て、00年シドニー、04年アテネ、08年北京、10年バンクーバー冬季、16年リオ大会を取材。「16年東京五輪・パラリンピック招致委員会」在籍の経験も生かし、五輪・パラリンピックの意義と魅力を伝える。五輪競技は主に卓球、パラ競技は車いすテニス、陸上(主に義足種目)、トライアスロン等をカバー。執筆活動のほかTV、ラジオ、講演、シンポジウム等にも出演する。最新刊『転んでも、大丈夫』(臼井二美男著/ポプラ社)監修他。

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