東京五輪へ選手強化はどう変わる? 強化費増で地域スポーツにも恩恵

高樹ミナ

選手やNFの自己負担の軽減など課題も

JOCエリートアカデミーでは現在52人が寮生活を送りながら五輪での金メダルを目指している 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 東京五輪での活躍が期待されるターゲットエイジの発掘・育成・強化は、NTC内にある日本オリンピック委員会(JOC)のエリートアカデミーでも行われている。全国の小・中学生の中から将来有望なタレントを発掘して召集し、一貫したシステムのもとで中学1年生から高校3年生までのジュニア世代を育成。現在はレスリング10人、卓球19人、フェンシング16人、飛込み3人、ライフル射撃4人の計5競技52人が寮生活をしながら、五輪での金メダル獲得を目指している。

 これら選手の強化育成には国の財源が投入されているが、東京五輪・パラリンピックの招致に成功するまで十分とは言えなかった。しかし、文部科学省から財務省へ提出された平成27年度概算要求主要項目を見てみると、選手の強化育成は「2020年五輪・パラリンピック東京大会等に向けた準備」の「競技力向上推進プログラム」に盛り込まれ、概算要求額は117億円に上る。平成26年度予算約48億5000万円の倍以上だ。

 強化費の増加が選手のトレーニング環境や競技力向上と密接なことは言うまでもない。そのため文部科学省は今後2020年まで右肩上がりに増額される予算を念頭に、NF向けの強化費を一元化。各競技のメダル獲得の可能性や強化計画を踏まえたメリハリのある強化費配分を実現するなどして選手強化の充実を図ろうとしている。その際、選手の立場に立ったアスリートファーストの視点は欠かせず、例えば強化費不足から生じる選手個人やNFの自己負担の軽減、適正な待遇が受けられないトレーナーの地位向上といった課題の改善が望まれる。

地域活性にも活用されるスポーツ予算

 2020年とその先を見据えた選手の強化育成の一環として、NTCの拡充整備も予定されている。五輪競技とパラリンピック競技の共同利用化を視野に入れ施設の機能強化を図る計画で、現在第一線で活躍するトップアスリートはもとより、新時代を担う東京五輪世代の大きなメリットとなるだろう。

 一方でスポーツ予算はスポーツを通じた地域活性にも役立てられる。文部科学省の平成27年度概算要求主要項目の中にも「豊かな心と健やかな体の育成」「青少年の健全育成の推進」という項目が設けられ、生涯スポーツの推進や社会体育施設の耐震化事業、学校と地域における子どもたちのスポーツ機会の創出や学校給食をはじめとする食育推進にも投じられる。また、青少年の国際交流および東日本大震災で被災した福島県の子どもたちの体験交流活動、障害者スポーツの普及など、ほかにも数々の事業に費やされることとなる。

 これら広範にわたるプロジェクトを一体的に進めるのが、2015年10月までに発足する見通しのスポーツ庁だ。同庁は文部科学省の外局として設置され、日本のスポーツ振興の拠点となってトップスポーツと地域スポーツの両方を推進していく。2012年ロンドン五輪・パラリンピックで成功を収めた英国をはじめ世界のスポーツ先進国に勝るとも劣らない日本のスポーツ政策に期待したい。

2/2ページ

著者プロフィール

スポーツライター。千葉県出身。 アナウンサーからライターに転身。競馬、F1、プロ野球を経て、00年シドニー、04年アテネ、08年北京、10年バンクーバー冬季、16年リオ大会を取材。「16年東京五輪・パラリンピック招致委員会」在籍の経験も生かし、五輪・パラリンピックの意義と魅力を伝える。五輪競技は主に卓球、パラ競技は車いすテニス、陸上(主に義足種目)、トライアスロン等をカバー。執筆活動のほかTV、ラジオ、講演、シンポジウム等にも出演する。最新刊『転んでも、大丈夫』(臼井二美男著/ポプラ社)監修他。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント