ラグビーW杯「成功の定義」とは何か? マーケティング部長が戦略を語る
組織委員会マーケティング部長の宮田氏がW杯「成功の定義」などについて見解を語った 【スポーツナビ】
宮田氏は広告会社でマーケティングやコミュニケーションのプランニングを担当。組織委員会には今年の2月から参加している。直近の活動状況を説明し、ターゲットや基本戦略、W杯の成功の定義などについて、自身の見解を交えて語った。
直近の活動と日本の市場分析
組織委員会は11月5日に、14の開催都市立候補地を発表しており、来年の3月までに正式な開催地を発表する。これは過去4大会のスケジュールと比べて2年も早いものであり、その後の準備に時間を掛けることができるようになっている。16年にキャンプ地の選定プロセス発表や組み合わせ抽選会、17〜18年にチケット販売やボランティア募集を開始するなど大まかなスケジュールが発表された。
次に、さまざまなデータ分析からマーケティング課題と市場機会を紹介。課題としては「市場規模の拡大」「高齢化対策(現状40代以上が69%)」「女性対策(男性が72%)」「ラグビーとW杯のブランディング」「W杯の認知向上」という5つを挙げた。一方で、市場機会としては、「若年層から高齢者の方々まで多数の愛好者がいること」「トップリーグのスポンサーに日本を代表する企業16社が参加していること」「日本代表の活躍」「7人制ラグビーがリオ五輪・パラリンピックで正式種目となったこと」「政府・自治体・経済界の強力な支援が得られること」などを挙げた。課題があるものの市場機会もあり、もっとやれることがあるということが分析結果から見てとれる。
コミュニケーションの目的とターゲット
(1)海外、日本でのチケットの計画的な販売
(2)W杯をラグビーそのものの普及の契機にする
(3)W杯を情報発信の機会に
(1)は、単純に黒字化を目指すということではなく、子どもたちなど多くの人に見てもらえる価格設定で、どのスタジアムも満員になることを目指す。(2)はW杯だけが盛り上がるのではなく、大会前そして大会が終わってからもラグビーの普及につながることを目的とする。(3)は、W杯を通じて社会や地域の一体感の醸成し、日本や開催される地域そのものの理解促進につながること、そのための情報発信の機会となることが目的だ。
そのため、ターゲットはコアファンやかつての選手・ファン、外国人だけにとどまらず、現在はラグビーファンとは言えないスポーツファンや開催都市の周辺住民に広げてアプローチしていく。
ターゲットにアプローチするための基本戦略
(a)コア・ラグビー・ファン参画の運動を作る
(b)ファンとの新しい関係を作る。ラグビーへの見方、感じ方を変える
(c)ラグビーファミリーと一緒にラグビー普及活動、W杯の認知活動
ラグビーはロイヤリティーの高いファンがいるものの、ファン以外の関心が極端に落ちる。そのため、(a)では会員組織を整備し、ラグビーファミリーのデータベース構築。コアファンにラグビーを普及してもらう。(b)は時間がかかることとしながらも、ブランディングを行い、日本でやる意味、社会にとっての意味を伝えることでライト層のファンを取り込めるようなストーリーづくりを行っていく。(c)はW杯のみの普及活動をするのではなく、日本ラグビーフットボール協会(JRFU)の普及活動に連動し、ラグビーそのものの普及を図ることで、W杯の認知拡大を目指す。
W杯「成功の定義」とは何か
そして、来場者に「あなたの考える『成功の定義』は何か」というアンケートへの記入を呼びかけて、第1部を締めくくった。(詳細は次ページ)