新生スマイルジャパンの新たな一歩 「考えるホッケー」でさらなる進化へ

沢田聡子

GK藤本が再三の好セーブ

再三の好セーブを見せ第1戦のゲームベストプレーヤーに選ばれたGK藤本那菜 【写真:アフロスポーツ】

 8日の第1戦、声援を受けて登場した日本の立ち上がりは少し硬さが見られたが、GK藤本那菜による再三の好セーブにも助けられ、最終的には2−0の完封勝利で幸先の良いスタートを切った。

 ソチ五輪予選から、本選まで日本の守護神として活躍してきたGK中奥梓に代わり日本のゴールを守る藤本は、新生チームでも守りの軸として欠かせない存在になっている。ゲームベストプレーヤーに選出されたGK藤本は試合後、新チームになってからの代表でのプレーは「頭を使う」とコメントした。
「味方の動きも相手の動きもしっかりと見て判断することが多くなったのかなと思います。そうすると守りとしては、結構今までの形と違う動きが増えたりするので」

 1998年長野五輪でも代表候補となるなど、長年日本のポイントゲッターとして活躍してきたエース・FW久保英恵もシステム上の変化を指摘した。
「スピードを生かすホッケー+状況判断が求められるのが今のシステム。その状況判断をすれば、もっともっといい攻めができるのかなと思います」

 試合後、藤澤監督も言及していた「状況判断を早くすること」が、新チームが取り組んできた、そして今大会で実行したい課題といえる。

気持ちでの勝利

第3戦のポイントとなった先制点を奪ったFW藤本もえこ(左)。ゲームベストプレーヤーにも選ばれた 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】

 苦しみながらもきっちり勝利を挙げた第1戦の印象から連勝も期待された第2戦、しかし日本はチェコに先制点を許し、チャンスを決められないまま追加点も献上。第1試合とは逆スコアの0−2で敗れ、1勝1敗で最終戦に臨むことになった。

 両者にとって負けられない第3戦、気迫は双方から感じられたが、第1ピリオドから相手陣内に入り込んでいく日本により強い気持ちがにじむ。大きな意味を持つ先制点は、第1ピリオド終了まで2分を切ったところで、FW藤本もえこにより日本にもたらされた。その後1点を追加した日本は、試合終了まであと9分足らずという時点でチェコに得点を許すも、その後は逃げ切って2−1で辛勝。必勝を期して臨んだ入れ替え戦をなんとか制し、新生スマイルジャパンはまずは順調といえる第一歩を踏み出した。

 勝因を「チェコより勝ちたい気持ちがあった」ことと分析した久保は「初戦から3試合目まで通して、徐々に状況判断ができてきていた」と振り返った。今大会でも課題として残った決定力についても、早めの状況判断で解決できる部分はあるという。
「パックキャリア(保持者)が落ち着いて周りを見られる状況にあれば、(攻撃の)三番手、後から(攻撃に)入ってジャンプアップしたディフェンスなどを使えると思うので、いい展開になるのかなと」

 ゲームベストプレーヤーに選ばれたFW藤本もえこは、試合後「今日の試合の前に監督から、お互い負けられない試合なので先制点が大事になると言われていたので、決められてほっとした気持ち」と語った。ソチ五輪でチームに何も貢献できなかったという思いを抱いた藤本は、現在フィンランドでのプレーを選択している。
「たった1点ですけれども、成長を見せられたのではないかと思っています」

平昌へ続く新たな未来へ

98年の長野五輪にも出場したFW久保英恵も、平昌に向けての強化への手応えを感じている 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】

 ソチ五輪での経験を成長の糧にしているのは藤本もえこだけではない。ソチ五輪を「上には上がいるんだなとすごく実感した大会」と振り返る藤本那菜、またソチ五輪出場をきっかけに就職を決め「トレーニングは今まで以上にできる環境を整えてくれている」と語る久保も同じだ。

 ソチ五輪での惨敗の記憶を、前を向くエネルギーに変え、平昌五輪に向けさらに上を目指すスマイルジャパン。持ち前の献身的なスケーティングによるプレーの速さに状況判断の早さが加わり、真の意味で「考えるホッケー」が身についたとき、新生女子日本代表に新たな未来が開けるはずだ。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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