「昨季は本当にきついシーズンだった」 フィギュア無良崇人インタビュー 前編
スケートカナダに出場予定の無良が、苦しみぬいた昨シーズンを振り返った 【スポーツナビ】
「昨シーズンの前半は何もかもうまくいっていなかったので、すごくきつかった」と無良は語る。2012−13シーズンはグランプリシリーズで初優勝を果たし、全日本選手権でも3位。確かに五輪は手の届くところにあったのだ。しかし、昨季は序盤から精彩を欠き、本来の演技をなかなか取り戻せなかった。その理由は一体どこにあったのか。今季に懸ける思いを伺いつつ、苦しみ抜いた昨シーズンを振り返ってもらった。
「振付師の方々から学んでいる」
まずはしっかりと実績を残すことが目標となってくるシーズンかなと思います。
――今季はショートプログラム(SP)で『カルメン』、フリースケーティング(FS)で『オペラ座の怪人』を選曲しています。その経緯を教えてください。
FSの『オペラ座の怪人』に関しては、結構前から「やりたい」という話はしていました。ただ、ボーカルが入らない曲だと、多くの選手が使用していたこともあり、どうしても同じような感じになってしまうんですね。でも今季からはボーカル入りの曲が使用可能になり、いろいろと幅が広がったので、選曲したという経緯です。
SPに関しては、シーズンが始まる前のアイスショーで『ヴァイオリン協奏曲(作曲:メンデルスゾーン)』を使いました。ただ全日本の合宿時に、僕自身の力不足もあったと思うんですけど、ちょっとインパクトに欠けるというか。ベーシックな曲なのですが、自分がそういうベーシックな部分をきれいにやりきれなかったんですね。それもあって、連盟の方から「ちょっと違う曲を考えてみたらどう?」と言われました。僕自身としては『ヴァイオリン協奏曲』を気に入っていましたし、「すごく良いものができているな」と思っていたので、その点は残念です。
でも、今季は使わないというだけです。もう少ししっかりとダンスやバレエのトレーニングをやって、来季以降に使うという考えでもいいんじゃないのかということで、今回は『カルメン』にしました。本当に急な話だったので、いきなりお願いをして作っていただいたんですけど、結果的にすごく良いプログラムになって良かったなと思います。
――振り付けでこだわっている部分はありますか?
FSはトム(・ディクソン)にお願いしていますが、今はいろいろなコレオグラファー(振付師)の方に見ていただいて、毎年違う曲で違う動きを取り入れるようにしています。今回、『ヴァイオリン協奏曲』は宮本賢二先生にお願いしました。『カルメン』は米国のコーチの方に作っていただいたんですけど、本当に人それぞれ、いろいろな作り方があるし、その方々から逆に僕が学んでいる感じなので、こだわりというのはあまりないですね。
4回転の入り方を変更した理由
10月4日のジャパンオープンでは今季のフリープログラムである『オペラ座の怪人』を披露 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
それは作ったプログラムによって変わってきますね。特に『オペラ座の怪人』や『カルメン』はストーリーが元々あるので、そのストーリーに合わせるというのはあると思います。FSは特にトムが細かい音も拾って振り付けをするので、演じる側からすると結構大変なんですけど、すごく良い感じに仕上がっていると思います。
――4回転トウループの入り方を昨シーズンの終盤から変更していますが、その意図は?
1つの要因となったのが、スリーターンだったら流れの中で回転をつけていけるんですけど、モホーク(編注:スケーティング中に体の向きを変える時に使われるターン)で入ると、1回止まってもう1回という動きをする時に、どうしても力が入るので、足に負担が掛かってしまっていたんですね。結構足の甲が痛かったので、負担を減らすということもそうですし、やはりFSで4回転を2回入れることを考えると、スリーターンのほうが比較的慣れてくれば、安定するというのが実際にあったんです。それで変更しました。
――9月のロンバルディア杯に出場されていましたが、今季に対する手応えは感じられましたか?
初戦にしては良い感じだったかなと。もちろん課題も出てきているので、もうちょっと滑り込まないといけないし、細かいミスが出ないようにしなければいけないなと感じていますね。