米国メディアが見た、日本人投手の今季 田中、ダル、岩隈、黒田…黄金期の到来

杉浦大介

「いつ受賞してもおかしくない」ダルのサイ・ヤング賞

今季10勝のダルビッシュ(左)にとっては物足りないシーズンだったかもしれないが、現地の評価は変わっていない 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 開幕前にはサイ・ヤング賞の有力候補となったダルビッシュにとって、14年はやや物足りないシーズンだったかもしれない。

 前半戦では8勝5敗、防御率2.97の好成績でオールスターに選出され、3度目にして初めてマウンドに立ったのが今季のハイライト。しかし、後半戦は防御率3.41と数字が落ちると、右肘の炎症で8月15日にDL入り。最下位に沈んだチームの低迷もあって、以降は登板がないまま今季を終了した。

 もっとも、メジャー自己最低の10勝(7敗、防御率3.06)で終わった後でも、この投手のスケールの大きさに対する評価は変わっていない。
「彼は本物だよ。誰もが(メジャーでも)エースの素材だと確信していたが、実際にチーム側が望んだ通りのスピードで米国野球に適応したことでその総合力の高さは証明されたと思う」

 自著のために行った取材中、某チームのスカウトはそうコメントしていた。他にも多くのメジャー関係者が、“日本出身選手の中ではダルビッシュこそが過去最高の素材”と認めている。資質への評価は、日本より米国国内での方がむしろ高いかもしれない。

「1年をフルに働ければという条件付きで、(サイ・ヤング賞を)いつ受賞してもおかしくない」

『スポーツ・イラストレイテッド』誌のベン・ライター記者がそう語っていたのをはじめ、近未来のサイ・ヤング賞受賞を予期する声は消えない。28歳の大型右腕のメジャーでの完全開花は、もう時間の問題と考えられていると言って良い。

知名度を一気に高めた岩隈

岩隈は自己最多、日本人今季最高の15勝をマーク。毎年勝ち星を増やし、実績を上げている 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 ここ2年で米国国内での知名度を一気に高めた岩隈は、3年目にして自己最多、日本人今季最高の15勝(9敗、防御率3.52)をマーク。特に好調だったシーズン中盤までは、「スーパースター級の数字を残している」と、ESPNシアトルラジオのシャノン・ドレイヤー氏も絶賛していた。

 9月に防御率7.61と崩れて、プレーオフ争いを続けていたマリナーズを助けられなかったのは残念だが、それでも9、14、15と1年ごとに勝ち星を増やしているのは好印象。このまま数字を伸ばし、契約が満了する15年オフにFAマーケットに出れば……来年4月に34歳になる岩隈が、エース級の新契約を手にする可能性もありそうだ。

黒田は“日本人史上最高の投手”

 今季に5年連続2桁勝利(11勝9敗、防御率3.71)、7年連続防御率3点台、日米通算3000投球回達成といった金字塔に到達した黒田の安定感も忘れるべきではない。CC・サバシア、田中をはじめ、故障者が続出したヤンキース先発陣の中で、唯一1年間ローテーションを守ったことは特筆に値する。

 昨季は8月18日以降に0勝6敗、防御率6.56と乱れたが、逆に今季はオールスター以降に防御率3.16と調子を上げてリベンジを完遂。その姿からは、ベテランの意地とプライドがにじみ出るかのようだった。

「キャリアを通じた実績を考慮するなら、日本人史上最高の投手には黒田を選ぶべきだと思う」

『日本人投手黄金時代』の巻末に掲載した「メジャーリーグにおける真の評価」と題して行った鼎談(ていだん)でも、出席者の1人であるフリーライターのジョー・レミア記者はそう語っていた。来季もヤンキース残留か、日本球界復帰か、あるいは現役引退するのかは分からない。ただ、黒田の実績が米国国内でもリスペクトされているのはもう紛れもない事実である。

 これまで見てきたカルテットはすべて勝利数で2桁超えを果たし、日本人投手の1シーズン10勝以上が4人は史上最多となった。また、上原、田澤、松坂大輔(メッツ)、和田毅、藤川球児(ともにカブス)の挙げた勝ち星を合わせると合計66勝。これもまた日本人投手の歴代最多記録である。

 昨年から2年続けての活躍ならば、もうまぐれとは思えない。1995年に野茂英雄がメジャーの扉を無理矢理こじ開けてから19年――。現在、日本人投手たちは“黄金期”を迎えると言ってももう大げさではないのだろう。

『日本人投手黄金時代』

 田中将大、ダルビッシュ有、黒田博樹、上原浩治、岩隈久志ら日本人投手のメジャーでの活躍が目覚しい。実際その活躍と質の高さは、米国でも驚きをもって伝えられている。では、メジャーリーグでの日本人投手の評価とはどんなものか。ナンバーワン投手は、ダルビッシュ有か田中将大か、それとも……。質の高い日本人投手は、なぜ生まれるのか? 「投げ過ぎ」と言われる日本野球、甲子園についてどう考えているのか――。ジーターをはじめとした現役メジャーリーガー、スカウト、現地記者に聞く驚きの真実。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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