米国メディアが見た、日本人投手の今季 田中、ダル、岩隈、黒田…黄金期の到来
「いつ受賞してもおかしくない」ダルのサイ・ヤング賞
今季10勝のダルビッシュ(左)にとっては物足りないシーズンだったかもしれないが、現地の評価は変わっていない 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】
前半戦では8勝5敗、防御率2.97の好成績でオールスターに選出され、3度目にして初めてマウンドに立ったのが今季のハイライト。しかし、後半戦は防御率3.41と数字が落ちると、右肘の炎症で8月15日にDL入り。最下位に沈んだチームの低迷もあって、以降は登板がないまま今季を終了した。
もっとも、メジャー自己最低の10勝(7敗、防御率3.06)で終わった後でも、この投手のスケールの大きさに対する評価は変わっていない。
「彼は本物だよ。誰もが(メジャーでも)エースの素材だと確信していたが、実際にチーム側が望んだ通りのスピードで米国野球に適応したことでその総合力の高さは証明されたと思う」
自著のために行った取材中、某チームのスカウトはそうコメントしていた。他にも多くのメジャー関係者が、“日本出身選手の中ではダルビッシュこそが過去最高の素材”と認めている。資質への評価は、日本より米国国内での方がむしろ高いかもしれない。
「1年をフルに働ければという条件付きで、(サイ・ヤング賞を)いつ受賞してもおかしくない」
『スポーツ・イラストレイテッド』誌のベン・ライター記者がそう語っていたのをはじめ、近未来のサイ・ヤング賞受賞を予期する声は消えない。28歳の大型右腕のメジャーでの完全開花は、もう時間の問題と考えられていると言って良い。
知名度を一気に高めた岩隈
岩隈は自己最多、日本人今季最高の15勝をマーク。毎年勝ち星を増やし、実績を上げている 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】
9月に防御率7.61と崩れて、プレーオフ争いを続けていたマリナーズを助けられなかったのは残念だが、それでも9、14、15と1年ごとに勝ち星を増やしているのは好印象。このまま数字を伸ばし、契約が満了する15年オフにFAマーケットに出れば……来年4月に34歳になる岩隈が、エース級の新契約を手にする可能性もありそうだ。
黒田は“日本人史上最高の投手”
昨季は8月18日以降に0勝6敗、防御率6.56と乱れたが、逆に今季はオールスター以降に防御率3.16と調子を上げてリベンジを完遂。その姿からは、ベテランの意地とプライドがにじみ出るかのようだった。
「キャリアを通じた実績を考慮するなら、日本人史上最高の投手には黒田を選ぶべきだと思う」
『日本人投手黄金時代』の巻末に掲載した「メジャーリーグにおける真の評価」と題して行った鼎談(ていだん)でも、出席者の1人であるフリーライターのジョー・レミア記者はそう語っていた。来季もヤンキース残留か、日本球界復帰か、あるいは現役引退するのかは分からない。ただ、黒田の実績が米国国内でもリスペクトされているのはもう紛れもない事実である。
これまで見てきたカルテットはすべて勝利数で2桁超えを果たし、日本人投手の1シーズン10勝以上が4人は史上最多となった。また、上原、田澤、松坂大輔(メッツ)、和田毅、藤川球児(ともにカブス)の挙げた勝ち星を合わせると合計66勝。これもまた日本人投手の歴代最多記録である。
昨年から2年続けての活躍ならば、もうまぐれとは思えない。1995年に野茂英雄がメジャーの扉を無理矢理こじ開けてから19年――。現在、日本人投手たちは“黄金期”を迎えると言ってももう大げさではないのだろう。