国際大会が地域に残すレガシーとは? 心に残す大会運営を4度の五輪から学ぶ

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提供:(公財)日本ラグビーフットボール協会

冬季五輪4大会にスタッフとして参加し、現在は2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会に勤務する小林氏。講演では国際大会が残すレガシーについて語った 【スポーツナビ】

 公益財団法人港区スポーツふれあい文化健康財団と日本ラグビー協会が主催する「みなとスポーツフォーラム 2019年ラグビーワールドカップ(W杯)に向けて」の第47回が9月25日、東京都港区の男女平等参画センター「リーブラ」で開催された。今回は一般財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会国際渉外・大会競技運営局競技担当部長の小林亨氏を招き、「国際大会が地域に残すレガシー」というテーマで行われた。

目に見えないレガシーも残した長野五輪

 小林氏は、1994年リレハンメル五輪を皮切りに、98年長野、2006年トリノ、10年バンクーバーと4度、冬季五輪の運営に携わった。その後は日本オリンピック委員会(JOC)の職員を経て、現職に就いている。

 まず、レガシーという言葉の定義について小林氏は紹介。レガシーとは「遺産」という意味であるが、現在の国際大会の意義には、レガシーに加えて、「サステナビリティ(持続可能性)」という点も重要視されていると述べ、人々の心や記憶に残ることも大切であると語った。

 具体例として小林氏が挙げたのは、現在でも多くのレガシーが残されている長野五輪。五輪開催に向けては、さまざまなスポーツイベントなどに活用されている競技場だけでなく、長野新幹線や上信越自動車道といったインフラや、宿泊施設が整備された。また、目に見えるものに加えて、長野で初めて取り組まれた「一校一国運動」がある。長野市内の学校がそれぞれ一つの国の文化を学び、応援する活動で、この運動は現在でも毎年4月に開催される長野マラソンなどで継続して行われている。

 長野では大会を通じて得られた収益を活用して“長野オリンピックムーブメント基金”が設けられ、その後、約12年にわたってさまざまな事業に活用された。また、大会が経験、ノウハウの蓄積や、ボランティア、ホスピタリティといった人材育成に寄与した点にも小林氏は触れた。

お国柄が見える各地のレガシー

 次に、小林氏は自身が運営に参加した海外の冬季五輪についても紹介した。94年のノルウェー・リレハンメルで開催された冬季五輪は、96年アトランタ五輪のテロ事件を契機に、五輪会場の警備が厳重になったこともあり、「古きよき時代に行われた最後の五輪」と世界のスポーツ関係者は考えている。リレハンメルは人口約2万3000人という小さな街だが、冬のスポーツに対する受け入れる環境がそろった街で、自然環境に配慮して運営された大会となった。この運営が評価されたこともあり、同地では2016年の第2回冬季ユース五輪も開催される予定だ。

 06年に開催されたイタリア・トリノは大手自動車メーカー「フィアット」の拠点があり、イタリア北部を代表する工業都市として知られる。ここでは、大会に合わせて地下鉄や高速鉄道といったインフラが整備される予定だったが、完成したのは大会終了後と、大幅に遅れてしまった。さらに大会終了後の選手村をはじめとする、いくつかの施設は放置され数年後に小林氏が再訪した際には荒れ果てていた。このような点から、計画的な整備と、レガシーの活用が必要であることがわかった。

 10年に開催されたカナダ・バンクーバー五輪では、「サステナビリティ」がキーワードとなり、環境保護活動に加えて、先住民族の社会参加や、ダウンタウンの変化をもたらす運動なども行われた。さらに、03年の大会開催決定前からレガシーを残す方法も検討された。そして国、州政府、組織委員会によって整備された施設は、その整備費の一部を大会終了後30年間にわたって、保守、運用する費用に充てられ、現在に至っている。

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