フランクフルトで輝きを取り戻した乾 要因は新監督の配置転換と長谷部の支え

乾をサポートしながら、長谷部も信頼を獲得

乾をサポートした長谷部は、自身のポジションもしっかりと獲得している 【Bongarts/Getty Images】

 戦術的な理由からハンブルガーSV戦では先発しなかったが、ドイツの財政的に首都の役割を果たすこの街で、乾は2度目のチャンスを有効に活用した。その成功には、おそらく長谷部も鍵となったはずだ。

 長谷部は乾のとてつもなく大きなサポート役となっている。そのために日本代表のキャプテンが買い求められたわけではないが、指揮官はこうした前進をまさに望んでいた。「おそらく彼らは互いに助け合える。乾は長谷部にフランクフルトの街を教えて、長谷部は乾のピッチ上での成長を手助けする」とシャーフ監督は話している。

 このプランは、完璧に奏功した。現在ドイツで最長の経歴を誇るサムライは、ピルミン・シュヴェーガーの完璧な後継者となった。その「背番号6」は、開幕前にホッフェンハイムへと移籍していた。長谷部はその柔軟性をフランクフルトに買われ、あらゆる監督にとって信頼できるお気に入りの選手になる。守備の仕事もできるし、中盤の中央でも攻撃的な位置でもプレーが可能だからだ。ボルフスブルクでは右サイドを主戦場として、2009年にはこのフォルクスワーゲンのクラブでドイツを制している。

ヨーロッパの舞台も視野に

 W杯出場の経験も持ち、ブンデスリーガの成熟したプロフェッショナルである長谷部は、乾を引っ張り上げるのみならず、チーム全体に新たなクオリティーをもたらしている。シーズン前からシャーフ監督は、「移籍の成功に満足だ」と自信をうかがわせていた。技術的にユーティリティー性があり、国際的にも素晴らしい経験を積んでいる選手を獲得したのだから、当然のことだろう。長谷部は高品質の象徴なのだ。

 長谷部本人も新天地でリーダー役となることを望み、ワシをロゴにいただくクラブとともに、再びヨーロッパの舞台に挑戦したいことだろう。シーズン序盤こそ不安も見えたが、アイントラハトは成功を取り戻しつつある。

 第7節までを終え、フランクフルトは5位につける。ヨーロッパのカップ戦出場権も、十分に視野に入っているが、そのためには必要なものがある。長谷部と乾が波のないパフォーマンスの披露を継続することである。ファンで埋まったスタンドの前で、ヨーロッパのパーティーを楽しむために――。だが、まだ長い道のりが待っている。

(翻訳:杉山孝)

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著者プロフィール

フランソワ・デュシャト 1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net。 ダビド・ニーンハウス 1978年生まれ。20年以上にわたり、ルール地方のサッカークラブに焦点を当て、ブンデスリーガの取材を続ける。09年からは「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)で記者を務める。ツイッターアカウントは@ruhrpoet。自身のサイトはwww.david-nienhaus.de。

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