米国・独立リーグで秋を迎えた渡辺俊介 サブマリンの手応えとMLBへの思い

山岡則夫@innings,Co.

米国仕様にマイナーチェンジしたサブマリン

NPB通算87勝を挙げたサブマリン。米国向けにフォームをマイナーチェンジし、手応えをつかんでいる 【河野大輔@innings,Co.】

 サブマリン(=潜水艦)と呼ばれる、地面すれすれからの投法でNPB時代は87勝をマークした渡辺俊介。今年2月、メジャー挑戦を表明し、レッドソックスの春季キャンプに参加した。

「ベテランと呼ばれる年齢になってきた。もちろん自分の役目もあった。だけど、若手も出てきて、1軍での登板も少なくなってきた。『これから何がやりたいか?』と考えたら、米国でプレーしたいと思った」

 メジャー挑戦にあたり、どうすれば実力を発揮できるのかを考えた。そこで投球フォームのマイナーチェンジに取り組んだ。

「メジャー球なので滑るし、ボールの扱いが難しくなる。また遅いボールのコントロールをつけることが大事だと思った。その中で今の投球フォームに行き着いた」

 セットポジションから足を高く上げず、クイックのような状態から投げる。

「中継ぎで契約という話だったので、セットで全部行こうと思った。あとは練習時の球数制限が多い。だからセットにまとめてしまったというのも理由の1つ。オフの練習時で前の投球フォームよりしっくりと来たので思い切って変えた」

独立リーグならではの苦労も

 今季プレーするのはランカスター・バーンズトーマーズ。メジャー傘下に属さない独立のアトランティックリーグである。このリーグはある意味、特殊なリーグである。誰もが上のカテゴリー(=メジャー)を目指しており、チャンスがあればシーズン中でもメジャー傘下のマイナーチームなどに移籍をする。そのため各チームの戦力がその都度、大きく変わる。

「時期によって選手のレベルが変わる。メジャーやマイナーがリリースした選手が集まってきた時期はスゴく強くなったりする。その逆もある。レベルが高い時期なら日本の1軍に近いレベルに感じた。実際に、打者の打撃力だけなら、日本のあまり打てないチームより打つだろうな、という時期もあった」

 投手であるからこそ戦力が大きく変化するために感じた苦労もある。

「一番戸惑ったのは毎回、知らない捕手だったこと。投球を受けてもらったことがないので……。どうやって自分の特徴を伝えるかが大変だった。そういう時にはサインを減らした。例えば、こっちの捕手は、小さな変化、速い系だと速い系で対応してくれる。真っすぐやシンカーはサインをまとめてしまった。曲がる系は1つにまとめたり。そこで僕がいろいろ投げ分けたりした」

 また、日米の打者のタイプの違いに対してもアジャストすることが求められた。NPB時代とは異なる配球の引き出しも増やしていった。

「渡米当初はデータが少ないことが大変だった。メジャーなら膨大なデータがある。でもマイナーや独立はそんなものがなく、どんな打者か投げてみないと分からない。特徴をつかむまでは、最初は投げるのが怖かった。夏ぐらいに、ようやく分かってきた」

「今は、『こういうタイプはこうだろうな』というのはある程度分かる。それでもたまに『あ、間違えた……』という時もある(笑)。間違えると、こちらの打者は特大ホームランになる。ミスしてもヒットならいいけど……。だから投げていて少し余裕が出てきた」

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著者プロフィール

1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページにて取材日記を定期的に更新中。

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