新生日本は千変万化のチームを目指せるか 脱・一本調子へ“つかみ”はOK

河治良幸

相手ありきのサッカーへ

相手の守備や状況を考えながら決断していく。アギーレ監督は、相手ありきのサッカーを目指しているようだ 【Getty Images】

 アルベルト・ザッケローニ前監督は初戦でアルゼンチンに1−0と勝利したが、“4年間でのベストゲーム”と評する記者もいるほど、いきなり組織的に整理された戦い方でアルゼンチンの個を封じた。それと比較すれば、アギーレ監督は最初から多くの情報を与えない中で、選手がどれだけやれるのか、どこで判断を迷うのかなどのチェックに重きを置いたように見える。

 同時に選手たちにも、新しい日本代表が一つのシステムや戦術を極めていくチームではないことを意識させる狙いもあったのではないか。それは「4−3−3」から「4−4−2」にシフトするという分かりやすい変更によって明確に表されたが、実はもう一つ、アギーレ監督のコンセプトを表す現象があった。それはポゼッションの考え方だ。

 アギーレ監督がアンカーを置く「4−3−3」をベースに置く理由の一つとして、このシステムがポゼッションを狙いやすい布陣であることは想像に難くない。ただ、ポゼッション=ボール支配率を高めることではなく、ボールを奪った時にしっかり保持し、チャンスの起点につなげていくことだ。言い換えれば、そこで保持できないのに無理につなぐ必要はない。

「相手チームのプレッシャーがかかっている状況で余計なプレーをしてはいけない。皆川佑介が前にいるので、プレッシャーのかかっている状況ではそこに入れるようにした。毎回、同じプレーすると相手に読まれることもある」

 前線にボールを当てるシーンが目立った理由について、アギーレ監督はこう説明した。要するにポゼッションかカウンターか、遅攻か速攻かの二者択一ではなく、相手の守備や状況を考えながら決断していく。そういうチームを目指したいということだろう。

示そうとしたのは“勝負への心構え”

 ここから本格的に強化していくにあたり、「4−3−3」のディテールや「4−4−2」の意図に関しても、より明確な形で選手に伝えていくのだろう。「カメレオンのように戦いたい」と公言しながら、システムも戦術も固定的になった前任者よりコンセプトは明確だ。

 そして、アギーレ監督が初戦から明確に示そうとしたのは“形”ではない。“勝負への心構え”だ。

 最終的に真剣勝負の場でウルグアイのような強豪と“90分の勝負”をしていけるチームになるのかどうか。それは監督の指導力に加え、選手の成長にもかかってくるだろう。そのためのポジティブな材料をこの試合から見いだすなら、選手が対戦相手を意識し、「90分の中でどう戦うか」を考えようとしていることだ。

「1−0や0−0で戦い方も違うと思うし、逆に前からみんなである程度プレスをかけに行くのか、リトリートしてポジションを作ってというのが重要なのか、それをチーム全体で見極めたい」(細貝)

 こうした発言が初戦から出てくるだけでも、“つかみ”としてアギーレ監督の大事なメッセージが一つ、選手たちに伝えられたことは確かだ。

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著者プロフィール

セガ『WCCF』の開発に携わり、手がけた選手カード は1万枚を超える。創刊にも関わったサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で現在は日本代表を担当。チーム戦術やプレー分析を得意と しており、その対象は海外サッカーから日本の育成年代まで幅広い。「タグマ!」にてWEBマガジン『サッカーの羅針盤』を展開中。

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