アギーレ流は頭と体の切り替えの速さ重視 多彩な戦い方で初陣ウルグアイ戦に挑む

元川悦子

すべての練習をコンパクトに素早く

「激情家」や「厳しい人」のイメージとは異なり、フレンドリーさを前面に押し出して合宿を行ったアギーレ監督 【写真は共同】

 ハビエル・アギーレ新監督率いる日本代表が5日、新体制初戦となるウルグアイ戦(札幌)を迎える。9月1日から4日間、彼らは札幌市内で調整を続けてきたが、新指揮官は「激情家」や「厳しい人」のイメージとは異なり、時折、冗談を交えながら積極的に選手たちとコミュニケーションを取るなどフレンドリーさを前面に押し出した。

「厳しい監督と聞いていたので、壁を作るんじゃないかという印象はあったけど、自分から選手に近づいてきてくれるし、周りのスタッフにも気を遣ってくれる。本当に雰囲気を作ってくれていると思う」と長友佑都も笑顔で語っていたが、アギーレ監督の人柄に好感触を抱いた選手は少なくなかった。

 トレーニングは1・2日目が公開された。この両日は所属クラブでの試合後間もないこと、欧州から移動してきた選手も多かったことから、フィジカル的な要素の強いメニューが多かった。

 本田圭佑や長友、岡崎慎司ら2014年ブラジルワールドカップの主力が合流し、23人全員がそろった2日目は、チームを5グループに分けた4人1組のパス回しからスタート。4対1から4対2、6対4から5対5、8対8+4フリーマンから10対10、両サイドからのクロス&シュート、最後には5対5と、練習内容が2〜3分の間隔で目まぐるしく変化していった。トータルの時間は約1時間半だったが、選手たちは非常に多くのメニューを矢継ぎ早に消化した感覚だっただろう。

「すべての練習がコンパクトですね。アップから最後までダラダラせず、さっさとやるなと。それに切り替えが速いですね。一個のメニューをあまり長くやらない。『とにかく動いて』ってことは最初から最後まで言っていますし、『相手に的を絞らせないように速くプレーしよう』とも言われました」と3日目の後に離脱してしまった長谷部誠が話していたように、アギーレ流のトレーニングは頭と体の切り替えの速さを重視したものだとチーム全体が理解したようだ。

選手にプレーのこだわりを持たせる

アギーレ監督の練習は2〜3分の間隔で目まぐるしく内容が変化していき、頭と体の切り替えの速さを重視したものであった 【スポーツナビ】

 1つ1つのプレーにこだわりと責任を持たせるのも、アギーレ監督の特徴だ。
「シュートを決めるか決めないかにはすごいこだわるなと。『1つ1つのシュートにこだわりをもって挑め』というメッセージはコーチングや指示から感じます。気の抜けたプレーなんかは激しく注意してくる。そこはすごく特徴的だと思いました」と吉田麻也も語っていた。そのあたりに「闘将」の一面が見て取れたのだろう。

 そして、練習は3日目からは非公開へ。初日に「基本的に4−3−3でプレーし、試合開始1分から90分までしっかり戦う。しっかり走って、いいプレーをして勝つことを目指す」と明言した通り、指揮官は4−3−3を軸にしつつ、いくつかの基本コンセプトを植えつけた模様だ。

「2〜3日の間だったんで、約束事を詰め込むだけ詰め込んだんですけど、本当に最低限。コンパクトに保つこととか、切り替えをとにかく速くしないと相手チームは速いぞというところとか、そういうことを言われたんで、バランスが大事だと。自分から声を出さないと周りも分かりにくいし、とにかく喋ってコンパクトに保ってって感じですね」と田中順也が言うように、そこまで決まり事でがんじがらめにされたわけではないという。大迫勇也などは「(アルベルト・)ザッケローニ監督の時は動きが限られていたけど、比較的自由なのかな。前はあんまり引いてくるなと言われたけれど、今はサイドに流れることも要求されるし、結構自由な感じかな。前でずっと張っているよりその方が自分に合っている」と大いに歓迎していた。

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著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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