シャラポワを制したウォズニアッキの課題=全米オープンテニス

WOWOW

全米でも中核選手が敗退――本命なき女子ツアー

マリア・シャラポワとの“元女王”対決を制したキャロライン・ウォズニアッキ 【Getty Images】

 今年のテニス界の特徴は、ここまでのグランドスラム3大会で、男女とも優勝者がすべて異なることだ。特に女子は昨年の2大会を制し、いまなお女王の座を維持しているセリーナ・ウィリアムズ(米国)が、一度も8強に届かない“異常事態”で、今季最後のグランドスラムである全米オープン(米国・ニューヨーク)が始まっている。

 現地時間31日に行われた大会7日目、出そろった16強に本命なき女子ツアーの実態が反映されている。

 第2シードのシモーナ・ハレップ(ルーマニア)、第3シードのペトラ・クビトバ(チェコ)、第4シードのアグニエシュカ・ラドワンスカ(ポーランド)、第6シードのアンジェリーク・カーバー(ドイツ)の姿が既にない。セリーナがランキングレースを無視してグランドスラムに比重を置いた日程編成をしている中で、セリーナに続くはずの中核がいずれも格下選手にあっさり敗退……。“下克上”と言うより、“混沌(こんとん)”と言った方がいいかもしれない。そこで注目されたのが、この日の第5シードのマリア・シャラポワ(ロシア)と第10シードのキャロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)の対戦だった。

元恋人の活躍に続き、『無冠の女王』を覆す!?

メジャータイトルを取れない『無冠の女王』と呼ばれたウォズニアッキだが、その要因がこの試合の中で見て取れた 【Getty Images】

 ウォズニアッキが女王に君臨したのは2010年から2011年にかけて。どんなショットも打ち返す『北欧の壁』と呼ばれ、ランキングではトップに就いたものの、メジャータイトルが取れず、ディナラ・サフィナ(ロシア)、エレナ・ヤンコビッチ(セルビア)とともに『無冠の女王』という有難くない肩書も頂戴した。

 問題はその後だ。プライベートな話になるが、ウォズニアッキと男子ゴルフの現世界ランキング1位のロリー・マキロイ(北アイルランド)との恋仲が公然となった。ウォズニアッキのパフォーマンスが下降線をたどったこととロマンスの影響は分からないのだが、2人の関係が決裂したこの夏、マキロイはメジャー2連勝の離れ業をやってのけ、今度はウォズニアッキの番になるかどうかだ。

 第1セット、1ゲームずつブレークして迎えた第10ゲームをウォズニアッキがブレークして先手を奪った。このセットのポイント推移を見ると、ウォズニアッキが獲得した36ポイントのうち21ポイントがシャラポワのアンフォーストエラーによるもの。自発的ポイントの評価は42%だ。これに対し、第2セット、シャラポワの39ポイントのうちウォズニアッキのアンフォーストエラーは5。シャラポワは自発的ポイント約90%でセットを奪っている。

 ミスもウィナーも同じポイントというテニスの特徴を表す試合展開でフルセットにもつれ込み、ファイナルセットはウォズニアッキが第4、第6ゲームをブレーク。シャラポワ戦では2011年以来、4試合ぶりの勝利を手にした。最終セットでもシャラポワにアンフォーストエラー10本が記録され、ウォズニアッキの自発的ポイントは64%、シャラポワは70%だった。

男子はフェデラーらが勝ち上がり 錦織は今日大一番!

 自発的ポイントは勝敗の推移を振り返るにはあまり意味がないだろう。ただ、プレースタイルは反映されている。ウォズニアッキのテニスを見ていると、確かに返球力は高いのだが、そこからの攻撃性が希薄で勝ち味が遅くなる。観客の声援がシャラポワになびくのが、その攻撃的スタイルの吸引力にあることも確かだ。グランドスラムの頂点に立つまでには7試合をこなさないといけない。このあたりに『無冠の女王』の背景があるのではないか。
 次の相手はこの日、ミルヤナ・ルチッチ=バローニ(クロアチア)を倒したサラ・エラーニだ。したたかなイタリアン・テニスにどう対処するか、注目したい。

 その他では、2回戦で奈良くるみ(安藤証券)を破った17歳の新鋭、ベリンダ・ベンチッチ(スイス)がヤンコビッチを倒し、ペン・シューアイ(中国)と共に8強入りした。

 男子は3回戦の残り半分が行われ、マーセル・グラノラーズ(スペイン)と対戦したロジャー・フェデラー(スイス)は、大雨で長い中断があった第1セットこそ落としたものの、続く3セットはまったく寄せ付けずに好調ぶりを見せつけた。
 第7シードのグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)はダビド・ゴフィン(ベルギー)を退け、全米初出場の20歳ドミニク・ティエム(オーストリア)がフェリシアーノ・ロペス(スペイン)を倒して初の16強入り。
 リシャール・ガスケとのフランス勢対決を制したガエル・モンフィス、トマシュ・ベルディヒ(チェコ)、マリン・チリッチ(クロアチア)なども勝ち上がった。一方で、第4シードのダビド・フェレール(スペイン)がジル・シモン(フランス)に敗れている。

 第8日は、錦織圭(日清食品)が2012年の全豪オープン以来のグランドスラム8強をかけてミロシュ・ラオニッチ(カナダ)と、センターコートの初めてのナイトセッションに登場する。2人の対戦成績は錦織の2勝1敗。直近の対戦となった今年のウィンブルドンでは、錦織が敗れている。

(文:武田薫)
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント