新潟2歳Sのタッチ・アンド・ゴー馬券=乗峯栄一の「競馬巴投げ!第80回」

乗峯栄一

「女性と割り切ったセックス」のメール

[写真3]荒川厩舎のテイケイラピッド、厩舎の期待も高い素質馬だ 【写真:乗峯栄一】

「女性と割り切ったセックスをするだけで1回20万円もらえます。容貌や性的テクニックに自信のない方でも大丈夫!」というメールがよく入ってくる。

 そんなうまいことだらけの話が世の中に存在するかと、まず思ってしまう。女の立場になってみろ。「わたしね、割り切ったセックスに1回20万払いたいの。不細工でもヘタクソでも全然構わない、わたしは“払いたい女”なの」と言う、そんな女が世の中に存在するか? と疑ってしまう。
「20万あげます。でも後クサれあるわよ」とか「とびきりいい男か、とびきりうまい男でないとダメ」とかそういう条件付けるだろうと思って、即座に、この種のメールは消去している。

 でもこれも長年競馬をやってきた者の悲しい習性なのかもしれない。「ゴールドシップ外して買う人には百円につき20万あげます」という、そういう話がある訳ないじゃないかと、つまりそう考えてしまうのだ。「こいつほんとにゴールド外してやんの、バーカ、そんなうまい話が世の中にあるか、真面目に働け」と舌を出されるイメージがすぐに浮かんでくる。

 でも世の中には、そういうウマいことだらけの話も存在するかもしれない。こっちが世の中の常識をカサに、はじめから諦めてしまっているのが幸運を取り逃している原因ということもあるかもしれない。
「あなた、ほんと、ブサイクねえ。でもセックスしてくれたから、はい、20万円」とか「あなた、ほんとにセックス下手ねえ、でもセックスしてくれたから、はい、20万円」とかそういう話がほんとに実在するかもしれない。我々はハナから諦め過ぎなのではないだろうか。

 アメリカ軍海兵隊は、空母着艦に失敗したときのために、日夜、タッチ・アンド・ゴーの訓練をしている。触れただけで「あ、失敗した」と思ったら急上昇かける。つまり「触れただけで、あ、失敗した」と感知する能力を磨いている訳だ。

「女性と割り切ったセックスをするだけで1回20万差し上げます」のメールには、我々は「そんなウマい話が、この世の中、ある訳がない」と自主規制する。まだワンタッチすらしていないのにだ。
 つまり、タッチ・アンド・ゴーの、米海兵隊の訓練が足りない。
 女性と割り切ったセックスをするだけで20万?という、その話に乗り、「え、やっぱりオカシい」と感知したら、即座にタッチ・アンド・ゴーの急上昇を掛ける。競馬人たるもの、その訓練を日々続けなくてはいけない。

橋口厩舎2年連続ダービー祈念して◎ナヴィオン

[写真4]新潟2歳でも北出厩舎の勢いが怖い、ヒルノマレットと岸滋彦助手 【写真:乗峯栄一】

 今週は久々に栗東トレセンに出向いた。いまの時期は朝5時馬場開場で、夏至を過ぎてすでに2カ月も過ぎているので、朝5時はまだ暗い。当然のことながらフラッシュは焚けない。わがカメラは「AUTO」にすると、シャッターが開いたまま撮ろうとするので、動いていく馬たちはボケていく。いや、詳細に取り扱い説明書を読めば、方法はあるようなのだが、その手間を掛ける気になかなかなれない。

 したがって、この時期からローズSあたりまで、“カメラマン乗峯”としては午前5時開場シーズンが一年で一番困惑する時期なのだ。

 でも今週は収穫があった。ワンアンドオンリーの「GI馬ゼッケン」を初めて撮ることが出来た[写真1]。まだ星(獲得GI数)は一つだが、この星一つがどれほど貴重だったことか。それを思うと何だか感動してしまった。ワンアンドは神戸新聞杯から始動とのことだ。

 そのついでに、ということではないが、橋口調教師にナヴィオンの撮影を頼んだ[写真2]。昨年「わたしももう定年まで残り少ないから、そんないい新馬は入らないよ」と自嘲の笑いを浮かべていた橋口調教師だが、前走、ナヴィオンのデビュー戦を見る限り、「最終2年連続のダービー制覇」という離れ業もあるんじゃないの? という雰囲気を漂わせている。なにせ、上がりが32秒台というとんでもない末脚だった。前半が遅かったとはいえ、2歳でこのタイムは凄い。

 続いて新潟2歳の有力馬、荒川厩舎のテイケイラピッドを撮らせてもらいに行く[写真3]。前走は外、外を回り、最後、差し届かずの3着だったが、「成長すれば必ずいいところまで行く」という、佐藤淳助手のコメントもあるし、将来期待の馬であることは間違いない。

 ヒルノマレットも期待の一頭だ[写真4]。北出厩舎は函館2歳Sアクティブミノルで初重賞を獲得した。初重賞も凄いが、それが2歳重賞というところにも価値がある。2歳重賞を勝てば、来年のクラシック参戦もほぼ確定ということがある。余勢をかって、この新潟2歳Sもということは十分ありえる。この写真、鞍上は、あの“あっと驚くサンドピアリス”で一世を風靡した岸滋彦助手(元騎手)だ。今年は北出厩舎の当たり年かもしれない。

 それでも、とにかく、橋口厩舎の奇跡的2年連続ダービー制覇を祈念して、ナヴィオンの頭固定3連単で行く。ヒモにテイケイラピッド、ヒルノマレット、ワキノヒビキ、それに関東勢のアヴニールマルシェ、ミュゼスルタン、ニシノラッシュの計6頭、30点買いで勝負する。

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著者プロフィール

 1955年岡山県生まれ。文筆業。92年「奈良林さんのアドバイス」で「小説新潮」新人賞佳作受賞。98年「なにわ忠臣蔵伝説」で朝日新人文学賞受賞。92年より大阪スポニチで競馬コラム連載中で、そのせいで折あらば栗東トレセンに出向いている。著書に「なにわ忠臣蔵伝説」(朝日出版社)「いつかバラの花咲く馬券を」(アールズ出版)等。ブログ「乗峯栄一のトレセン・リポート」

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