若き天才が教えてくれた“登山” デビッド・ラマに志願弟子入り

芸部歩人

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天才クライマーから直接指導

愛好者のみなさん、素人ですみません。クライミング界の若き天才デビッド・ラマ(左)に直接指導してもらった(右が筆者) 【スポーツナビDo】

 ゲーム小僧だった昔、『クレイジー・クライマー』あるいは『アイスクライマー』というゲームによって“クライマー”という言葉を知った。それが“登る人”を意味する言葉であることも。間もなく公開となる、その名もズバリの映画『クライマー パタゴニアの彼方へ』(8月30日より新宿ピカデリー他全国ロードショー)は、クライミング界の若き天才デビッド・ラマが、あたかも垂直にそびえる南米の鋭鋒セロトーレに挑んだ3年を追ったドキュメンタリーである。

 1990年、オーストリア生まれのデビッドは日本で言えば平成世代。2008年に早くもワールドカップ総合優勝を果たした文字通りの“若き天才”だが、このたび映画のプロモーションで来日。波乗り・SUP・地引き網を終え、にわか“海の男”を気取る自称2代目スポーツ冒険家・芸部歩人(げいぶ・あると)に、なんと直接クライミングをご指導頂けるとのことで、「俺の人生にも一度くらいこんなことがあっていいだろう」と、さっそく都内のクライミングジムへ向かった。愛好者のみなさん、素人がすいません。でも私、スタローンのクライミング映画『クリフハンガー』から名前を取っているので、こんな幸運に感謝した次第。

「バランスより、むしろ重心をどう置くか」

【スポーツナビDo】

 お昼休みを終え、食後のコーヒーを手に現れたデビッドは、偉業を成し大きく見えたスクリーンより小柄な印象。気さくに差し出された手を握ると、ゴツゴツした硬い感触を想像したがずっと柔らかい。

 レンタルしたクライミング用の靴を履き、いざご指南をと思ったら、デビット先生、かの石田純一氏ばりに裸足で靴を履いている。

「これは昔からだしいつもそうで、素足の方がフィーリングがいいんだ。スリップも結構防げるし、靴下が1枚ない方が、より岩肌を感じられるから」

 そうか、“考えるな、感じろ!”ということか、とこちらも勝手に気分が高まる。

ひょいひょいと軽々登っていくデビッド先生に思わず見とれてしまいました 【スポーツナビDo】

手取り足取り教えてもらうも……ダメな生徒ですみません、 【スポーツナビDo】

 そして当たり前ながらデビット先生はヒョイヒョイ、あるいはホイホイと、まさに朝飯前という感じで壁を滑るように登っていく。その姿はあまりに流麗、かつ見事なため、思わず見とれ、せっかく示してくれたルートを忘れてしまう。しかし、「僕だったらこう登るけど、気にしないで好きにやってみてほしい」と寛大なデビッド先生。クライミングとは本人の能力・ひらめき・感性を総合して取り組むものなのだな、と一丁前に思いつつ、チャレンジを開始する。

「重要なのは足で壁にプレッシャーを与えること。腕で引っ張り上げるより、足で押し上げる力の方が絶対に強いので、そのことを忘れず、常に足に力を入れることを考えてください」

 しかし何とか落ちずにへばりつこうとすることばかり頭にあるため、力が入って腕はパンパンのカッチカチ、「体重を掛けるのは足の方」という教えを守れず、力が尽きるとともに空しく落下して背面受け身。ダメな生徒ですいません。
「壁から離れると遠心力で振り回されてしまうから、常に体を壁へ沿うように」

 腕頼みの登り方のため、力が尽きてくると体が壁から離れてしまい、余計重力に負けてマットへ落ちる。そして中年に似つかわしくない照れ笑いでごまかすという情けない結果に。

「重心がどこにあるかを把握するのが大切です。バランスより、むしろ重心をどう置くかということが」

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著者プロフィール

げいぶ・あると。体験系取材を中心に活動し、「2代目スポーツ冒険家」を自称する40代目前ライター。名前は映画『クリフハンガー』の主人公ゲイブ・ウォーカーから

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