大内征さんが語る、低山トラベルのススメ 日帰りできる関東近辺3コース

NANO association編集部

【(C)ローカライズプロダクション】

「低山トラベル」をすすめるアウトドアプロデューサーの大内征さん 【(C)ローカライズプロダクション】

 富士山の世界遺産登録や、間ノ岳の標高が日本第4位から3位タイに改定されるなど、高い山の話題が尽きない中で、“低山”を味わう動きがあることを知っていますか? “低山トラベラー”として、世田谷ものづくり学校にある自由大学の講義「東京・日帰り登山ライフ」を担当し、アウトドアプロデューサーとしても活動している大内征さんにお話をうかがってきました。

東京は日本有数の日帰り登山の聖地

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――低山トラベルとはどういうものですか?

 僕は登山を“手段”だと思っているんです。地域の自然や産業、歴史文化を含めて日本を理解する最適な手段が登山であり、その最高の舞台が山だという考え方なんですね。その日本を理解するための理想的な山というのが、大体高さ2000m以下の山で、特に1000mに満たない山だと思います。

 例えば2500mくらいになると高山病が起こってくる高さで、森林限界という背の高い植物が生えなくなる高さでもあるんです。なので、いわゆる高山ではない低山を2000m以下としているんですけど、人の営みが見える範囲の山に行くことによって、知られざる日本の魅力とか、そこに暮らしている人しか知らない地域伝承があることを知る。

 そういうことに触れに行く、一番いい場所が低山だと考えています。そして、日常の営みの延長にあるぐらいの高さの山を旅することを、「低山トラベル」と呼んでいます。

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――低山トラベルを始めたきっかけは?

 将来のことをぼんやり考えながら、ちょっと自分の過去を振り返る時期があって、田んぼの緑とか、山や川のある風景をなつかしく感じたんです。僕はいま東京に暮らしていて、ここに暮らしながら原体験、原風景を感じられる場所を見つけることができれば、東京をもっともっと楽しめるんじゃないか。

 で、地図をよく見たら、愕然(がくぜん)としたんです。僕の知っている東京は、東の3分の1ぐらいのエリア、つまり23区の領域。残り3分の2の広大な領域が西に広がっている。東京には実はすごく自然があることを知って、実際に確かめに行ったんです。山の装備をして、東京とその周辺の山を調べて。おかげで自分にとっての遊びのフィールドが2倍3倍に広がりました。

 世界有数の大都会・東京は、日本有数の日帰り登山の聖地です。これに気付いてから、無理に地方に移住するとか、故郷に帰るとかをしなくても、まずは東京に基盤のあるうちは“東京ローカル”で活動しながら、アウトドアなことやローカルなことを楽しもうと考え始めたわけです。

人の営みにかかわるさまざまな文化を知る楽しみ

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――低山トラベルの魅力ってなんですか?

「ピークハント(山頂のみを目指す登り方)」という言葉がありますが、登った山の高さを競ったり、踏んだ頂の数を自慢する“消費登山”ではなく、もっと同じ山を何度も味わってもいいんじゃないかなと。その山でどういう人がどういう暮らしをしていて、歴史上どういう物語があって、さらにさかのぼるとどういう神様がいて、っていうことを知った方が、山が面白くなると思うんですよね。その時に、人の営みが及ぶ里山や低山を山旅する「低山トラベル」がちょうどいい。

 例えば東京都の御岳山にはヤマトタケルが道に迷った話からはじまり、麓の農家にとってのオオカミ信仰の話などがあって、実は今の僕らの暮らしに身近に関係している。そういうことに気付き始めたのも登山をしたおかげ。

 山の高さとか風景だけでなく、風土記や歴史小説のような物語や記紀神話(『古事記』や『日本書紀』)にある神様の話、地域伝承、農業や産業、食べ物、温泉などなど。つまり人の営みにかかわるさまざまな文化的なものが、全部勉強できるわけです、山に親しむと。これが登山の魅力だし、だとするならば、やっぱり登山はただ登るだけが目的じゃなくて、地域ひいては日本を理解するための手段で、それを繰り返し身近なところでできるのが「低山トラベル」の魅力だと、そう考えています。

――低山トラベルに必要なものは何ですか?

 テンションを上げる意味では「温泉セット(タオル、手ぬぐい、ビニール等)」は必須ですね。各ご当地タオルや手ぬぐいなどを集めるのも楽しみの一つ。安全面でいうと「ヘッドライト」。山は暗くなるのが早く、たとえ慣れている人でも歩くのが大変だし、滑りやすい場所や崖、蛇など危険に気づかなくなるので絶対に必要ですね。あとは「ホイッスル」はあった方がいい。救助を呼ぶ時やクマよけなどになります。

 地図や水はもちろん、登山用の装備類など、他にもたくさんありますが、行く場所によって環境が変わり、必要なものも変わります。しっかり山を研究して、専門書や専門家に聞くのがいいですね。そうやって調べるところから、「低山トラベル」が始まっています。それから、クッカーとバーナーがあれば、美味しい山ゴハンを作れます!

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著者プロフィール

国内外のスポーツを取材し、さまざまなメディアに向けてコンテンツを発信している少数精鋭TEAM。スポーツを軸としたマーケティング事業、国内はもとより世界を舞台にした取材・コンサルティングやイベント事務局、アプルーバル事業、販促グッズやキャラクター商品のプロデュース、あらゆる媒体を駆使したプロモーションをプロジェクトとして行っている

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