絶対王者・バイエルンは止められない? 識者が読み解くブンデスリーガの展望

構成:スポーツナビ

本田千尋(サッカーライター)

開幕から安定したパフォーマンスが期待できそうなドルトムント。ロイスの復帰も心強い 【Bongarts/Getty Images】

「ドルトムントが安定したパフォーマンスを発揮」

 昨季のブンデスリーガで史上最速優勝という圧倒的な強さを見せたことを考えれば、今季も同様にバイエルンが優勝する……と考えたいところだが、そう簡単にはいかないかもしれない。W杯・ブラジル大会に参加した選手たちのコンディションが整わないだけではなく、グアルディオラは新たに3バックの布陣に本格的に取り組んでおり、チームコンディションの調整と新戦術の浸透という課題を同時に抱えながら、当面の間を戦っていくことになる。また13日のスーパカップで、ペップ(グアルディオラの愛称)が3バックの要として期待を寄せていたハビ・マルティネスが重傷を負ったことで、移籍市場で急きょ代役を探し始めている。バイエルンが落ち着くまでは少し時間がかかりそうだ。

 その点、昨季2位のドルトムントは開幕から比較的安定したパフォーマンスを発揮しそうである。ドイツ代表のW杯参加組はマッツ・フンメルスを除いてブラジルでは試合に出場せず、ロイスも負傷から復帰した。攻撃の中心だったレバンドフスキは宿敵バイエルンへと移籍したが、いまだ残る前エースの存在感を払拭(ふっしょく)しようとアタッカー陣は奮起している。ユルゲン・クロップもまだ前線の組み合わせを模索しているところはあるが、バイエルンよりも早く落ち着けば、その差でなんとか1位の座にたどり着けるかもしれない。

 同様に開幕から安定した戦いを見せそうなのがレバークーゼンである。W杯ドイツ代表に招集された選手がおらず、チームコンディションの調整がうまくいっている。ハカン・チャルハノール、キリアコス・パパドプロスらの加入によって戦力も充実した。一方、一抹の不安が残るのはシャルケ04だ。チームの要であるクラース・ヤン・フンテラールと内田篤人のバックアッパーが不在となっている。すでにけが人が出始めているが、そのリストにもしフンテラールが加わってしまうようなことがあれば、昨季の前半戦のような苦戦は避けられないだろう。レバークーゼンが再び3位に返り咲き、地力はあるシャルケ04が4位には入り込んで、CL出場権を確保する。

 降格候補に目を向けると、パーダーボルンが2部へと戻るのは間違いない。ケルンも1部を戦うには、戦力的に厳しいか。大迫勇也の奮戦に期待したい。入れ替え戦に臨みそうなのはシュツットガルトだ。昨季はかろうじて15位にとどまったが、あまり良い補強ができておらず、どこか選手任せのアルミン・フェー監督が就任している。フェーも2007年はシュツットガルトを優勝へと導いたが、それも昔の話となった。16日のドイツカップ1回戦では2部のボーフムに敗れ、早くも失態を演じている。

【本田氏の予想】

優勝  :ドルトムント
CL圏内:バイエルン・ミュンヘン、レバークーゼン、シャルケ04
降格  :ケルン、パーダーボルン、シュツットガルト(入れ替え戦)
注目選手:マルコ・ロイス(ドルトムント)

スポーツナビ編集部I

2強に食い込んできそうなのがレバークーゼン。10番を背負う新戦力のチャルハノールに注目 【Bongarts/Getty Images】

「覇権奪回へ充実ドルトムント。ペップの改革は間に合うのか?」

 優勝争いのポイントは、バイエルンで2季目を迎えたペップ・グアルディオラの改革が成功するか、その途上で終わるかだ。“3冠”を成した前任ユップ・ハインケスの遺産を受け継ぎながら、フィリップ・ラームの中盤起用などポゼッションスタイルを前面に押し出した昨シーズン。国内では圧倒的強さを誇るも、CLでは苦杯をなめた。もう一度欧州の頂点を目指して今季はさらなる変化を追い求め、プレシーズンでは3バックシステムの構築に重点を置いている。

 だが、核となるべきハビ・マルティネスが左ひざ前十字じん帯断裂で年内絶望、欠かせないバックアッパーだったダニエル・ファン・ブイテンは現役引退、ホルガー・バドシュトゥバーこそ復帰したが、センターバックの駒は足りていない。ペップも危機感を覚え「高さと速さを兼ね備え、さまざまなポジションでプレーできる選手が欲しい。しかし、探すには遅過ぎるかもしれない」とコメント。ローマのメディ・ベナティア獲得のうわさもあるが、彼が加入したとしても不安は残る。また守備陣だけでなく、攻守のキーマンであったクロースの移籍が痛い。センターFWもマンジュキッチからレバンドフスキに代わり、チームの体制が整わない前半戦で取りこぼしが目立つようだと、3連覇は遠のくだろう。そして欧州どころか国内でも覇権を失えば、ペップの改革は頓挫することになる。

 一方で期待値が高いのはライバルのドルトムント。昨季はボランチから最終ラインにけが人が続出したが、その間にエリック・ドゥルム、ヨナス・ホフマンら若手が大きな成長を遂げ、新シーズンのプラス材料になっている。レバンドフスキ放出の穴も、新システム4−4−2を採用しながら昨季セリエA得点王インモービレ、アドリアン・ラモスら新戦力が埋めるだろう。天才的コンダクターのイルカイ・ギュンドアンが復活し、ロイスやフンメルスを残留させることができれば戦力は充実。バイエルンがもたつく隙に、3季ぶりのマイスターシャーレ(優勝皿)獲得へ近づくはずだ。

 5季タイトルを分け合ってきた前述の2強に食い込んできそうなのがレバークーゼン。注目選手に挙げた“スーパーフリーキッカー”の攻撃的MFチャルハノール、そしてザルツブルクで110得点をたたき出す攻撃サッカーで名をはせた新指揮官ロジャー・シュミットの手腕に注目だ。シルバーコレクターから脱却できるか否か、その試金石となるドルトムントとの開幕戦は見逃せない。

 残留争いでは、戦力的に見劣りする昇格組のパーダーボルンを降格筆頭候補に挙げざるを得ない。もう1チームの昇格組ケルンは、昨季2部で34試合20失点と堅守で優勝したこともあり、しぶとく勝ち点を積み重ねて残留すると予想する。U−21ドイツ代表GKティモ・ホルンも逸材だ。

 降格予想に戻ると、いよいよフライブルクが限界かもしれない。育成の名将シュトライヒの下で1部に定着して6季目。2シーズン前は5位に入るなど躍進したが、その反動で選手の草刈場となった昨季は14位に落ち込み、今季もドイツ代表DFギンターを放出。苦しい状況が予想される。入れ替え戦予想はシュツットガルト。この2季は下位に低迷、指揮官交代も多くチームとしての体をなしていない中、着任したのは評価の分かれるフェー。型にはまれば強いが、一度混沌に陥ると戦術的な引き出しは少なく、チームを落ち着かせることはできないだろう。

【編集部Iの予想】

優勝  :ドルトムント
CL圏内:バイエルン・ミュンヘン、レバークーゼン、シャルケ04
降格  :パーダーボルン、フライブルク、シュツットガルト(入れ替え戦)
注目選手:ハカン・チャルハノール(レバークーゼン)、ティモ・ホルン(ケルン)

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