プレミア優勝は“4強”の争いか? 識者が読み解く混戦必至のリーグ展望

構成:スポーツナビ

寺沢薫(プレミアリーグ中継リサーチャー/ライター)

コミュニティシールドではシティーに3−0と快勝。サンチェス(右)を加えたアーセナルは攻撃力をフルシーズン維持できればリーグ制覇も現実味を帯びる 【写真:Action Images/アフロ】

「優勝にはアーセナルを推したい」

 前年王者で戦力ダウンがないマンチェスター・シティー、2年目のモウリーニョ監督が彼好みの選手を集めているチェルシーが優勝争いに絡むのは間違いない。しかし、優勝にはアーセナルを推したい。

 1年前のエジルに続き、今夏もサンチェス獲得のために財布のひもを緩めたことが、ベンゲル監督の「本気」を物語っている。そのサンチェスが高速カウンターで存在感を放ち、主力を複数欠いたとはいえシティーを3−0と圧倒したコミュニティシールドで見せた攻撃力をフルシーズン維持できれば、頂点に立てる。

 ガナーズ(アーセナルの愛称)優勝の条件は「ケガ人を減らすこと」と「上位対決に勝つこと」。

 例年、入れ替わり立ち替わりに主力が離脱してしまう問題に関しては、ワールドカップ(W杯)・ブラジル大会でドイツ代表の優勝に貢献したフィットネスコーチを新たに雇い入れるなど、改善に向けた努力が見られる。

 また、数年来の弱点となっているビッグマッチでの弱さについても、9年ぶりのタイトル獲得となった昨季のFAカップ優勝、エジルやメルテザッカーらドイツ代表組のW杯優勝で得た選手たちの「成功体験」が、積年の勝負弱さを払拭するきっかけになるのではと期待。

 注目選手にはリヴァプールのスターリングを挙げたい。スピードと足技は元々優れていたが、昨季はサイドだけでなくトップ下の新境地も開き、周囲と連動する柔軟性、シュートの意識や精度が格段に向上した。W杯出場でさらに自信をつかんだ19歳が、次はどんな成長を見せてくれるか楽しみだ。

 昨季2位のリヴァプールは、フィニッシュ、チャンスメークの両面で軸だったスアレスの退団があまりに痛い。CL参戦で過密日程を強いられることも考え、プレミアではトップ4陥落を予想したが、スターリングが時折見せてきた「スアレス並み」の影響力を通年で発揮できるなら、話は変わってくる。

 プレミアの残留争いは毎シーズン熾(し)烈を極めるが、ここにサウサンプトンが巻き込まれないことを祈る。ポチェッティーノ監督に加えて主力を大量に引き抜かれて半壊状態、しかもクーマン新監督はプレミア1年生で苦戦は必至。願わくは、「吉田麻也の奮闘で降格回避」というストーリーが見たい。

【寺沢氏の予想】

優勝:アーセナル
2位:チェルシー
3位:マンチェスター・シティー
4位:マンチェスター・ユナイテッド

降格:
レスター
ウェスト・ブロム
バーンリー

注目選手:スターリング(リヴァプール)

スポーツナビ編集部サッカー担当O

ユナイテッドの再建はファン・ハール(写真)に託された。W杯でオランダを3位に導いた手腕を発揮できるか 【写真:Action Images/アフロ】

「リーグに専念できるユナイテッドが有利」

 王者マンチェスター・シティーと、大型補強を敢行したチェルシーが戦力値で他を圧倒しているのは疑いようがない。しかし、優勝チームにはあえてマンチェスター・ユナイテッドを推す。理由はCLに出場しないこと、そしてファン・ハール監督の存在だ。

 ウインターブレイクがないプレミアリーグは、CLの勝ち上がりが終盤戦の結果に影響することが多い。昨シーズン、戦力で劣るリヴァプールが連勝街道をひた走ったのも、ライバルたちがCL出場に伴う過密日程に苦しんでいたことが挙げられる。そういう意味で今季はリーグ戦に専念できるユナイテッドが、体力面では有利だろう。確かに守備陣の層の薄さには不安が大いに残る。しかし、W杯・ブラジル大会で同様に守備の問題を抱えていたオランダ代表を見事な采配で3位に導いたファン・ハール監督ならば、そうした難題もクリアできるはずだ。

 2位以下はアーセナル、チェルシー、シティーと続く。いずれもCLに出場し、特にチェルシーとシティーはビッグイヤー獲得に比重を置くと考えたため、その順位にした。アーセナルはサンチェスら実力者を補強し、2003−04シーズン以来のリーグ制覇も現実味を帯びている。もし移籍最終日までに手薄なセンターFWと、センターバックに一線級の選手を迎え入れることができれば、可能性はより高まるだろう。昨季31ゴールを挙げたスアレスを放出したリヴァプールは、CLとの掛け持ちもあり、選手層という面で少々厳しいか。

 降格するチームはレスター、バーンリーと昇格組に加え、ハルと予想する。純粋なタレント力で劣る昇格組の2チームはよほど選手たちが奮起しない限り、プレミア残留は難しいだろう。またハルはヨーロッパリーグに参戦することが、足かせになると考える。

 注目選手には、元バルセロナのFWでストークに完全移籍したボージャンを挙げたい。17歳でデビューし、メッシが持っていたクラブ最年少ゴール記録を更新したボージャンは、その後ローマ、ミラン、アヤックスと渡り歩き、今季はプレミアの中小クラブにたどり着いた。170センチと小柄なストライカーが、フィジカルがチームの代名詞とも言えるストークで復活を遂げることができるのか。もうすぐ24歳を迎える彼にとって正念場のシーズンとなるだろう。

【編集部サッカー担当Oの予想】

優勝:マンチェスター・ユナイテッド
2位:アーセナル
3位:チェルシー
4位:マンチェスター・シティー

降格:
ハル
レスター
バーンリー

注目選手:ボージャン(ストーク)

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