“メッシ後”のアルゼンチンに残るもの 若手の人材不足に、問題先送りのAFA

決まらない次期監督

サベージャ監督はすでに辞任の意思を表明。果たして後任は誰になるのか 【写真:フォトレイド/アフロ】

 ワールドカップ(W杯)・ブラジル大会後の脱力感から少しずつ回復しつつある今、アルゼンチンのフットボール界には深い疑問が生じはじめている。

 アルゼンチンフットボール協会(AFA)は代表をW杯準優勝に導いたアレハンドロ・サベージャ監督との契約更新を目指して手を尽くしていた。

 FIFA副会長も務めるAFAのフリオ・グロンドーナ会長(7月30日に急逝)はこれまで「(サベージャに代わる)プランBはない」と繰り返してきた。選手たちも彼の続投を望んでいたが、すでに指揮官の口からは辞任の意思が伝えられている。

 このような状況下、サベージャの後任候補としていくつかの名前が浮上している。その筆頭であるヘラルド・マルティーノについては、彼にパラグアイ代表監督への復帰をオファーしたパラグアイフットボール協会の副会長が「既にAFAと合意しているため断られた」と発言している。

 他では10年ぶりにリーベル・プレートをリーグ優勝に導いたラモン・ディアスがアピールしている一方、ディエゴ・シメオネは将来的な就任を希望しながら現状はヨーロッパでのキャリアの継続を優先している。またW杯での代表の戦いぶりを厳しく批判していたディエゴ・マラドーナはベテランのセサル・ルイス・メノッティを支持して周囲を驚かせたが、メノッティが現場に復帰する可能性はまずないだろう。

若い世代の人材が欠如

 しかし、未来の方角に暗雲が立ちこめはじめた原因は監督人事にあるわけではない。それはブラジルの地で1つの世代が終わりを迎えたことにある。

 マルティン・デミチェリス、ハビエル・マスチェラーノ、マキシ・ロドリゲス、ロドリゴ・パラシオ、そして今回のW杯には招集されなかったカルロス・テベス。彼らはみな15年にチリで開催されるコパ・アメリカ(南米選手権)、もしかしたら16年に米国で行われるコパ・アメリカ・センテナリオ(編注:南米で初めて国際試合が行われてから100周年を記念して南北アメリカ大陸から16チームが参加する大会)までは良い状態でプレーできるかもしれないが、そろって34歳を超えてしまう18年のW杯までトップレベルを維持するのは難しいだろう。

 これまでアルゼンチンは優秀な選手を絶えず輩出してきた。だが現コロンビア代表監督のホセ・ペケルマンが06年のW杯敗退後に代表監督を辞任した際、「下には何もない」と言って若い世代における人材の欠如を指摘していたことを忘れてはならない。

 その後の8年間、アルゼンチンは18歳で迎えた06年のドイツ大会では多くの出場機会を得られなかったリオネル・メッシの存在を頼りに、世界の舞台で高みを目指してきた。大会中に31歳の誕生日を迎える18年のロシア大会はトップレベルで迎える最後の大会となるが、彼にとってW杯を勝ち獲る最大のチャンスは26歳で迎えた隣国でのブラジル大会にあったことは間違いない。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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