松井裕樹から主役を奪った大砲3人の共演、「スターへの登竜門」フレッシュ球宴総括
先発バッテリーを組んだ西武・森(左)と楽天・松井裕 【写真は共同】
1回表、守りに就いたイースタン選抜の先発マウンドに立ったのは松井裕樹(東北楽天)。受けるキャッチャーは森友哉(埼玉西武)。昨年まで一方は桐光学園(神奈川)のエース、もう一方は大阪桐蔭(大阪)で強打の正捕手でならした「甲子園のスター」2人が、プロで初めてバッテリーを組む。それが今年最大の目玉だった。
だが、先発松井裕がまさかの大乱調。試合は一気に打撃戦の展開となってしまった――。
久々先発の松井裕は荒れた内容に
試合前には「甲子園1試合22奪三振」の記録保持者らしいコメントもあった。松井裕の囲み取材が始まれば、ほとんどの報道陣が一気に集結。ベンチ裏では通路をふさいでしまうほどの大きな輪ができた。しかし、楽天担当記者によれば最近では珍しい光景だという。
開幕こそ、高卒ルーキーながら先発ローテ入りして大きな話題と注目を集めたが、制球難に苦しみ2軍落ち。7月、ようやく1軍で再び姿が見られるようになり、プロ初勝利もマークしたが、チームでの役割は中継ぎへと変わった。配置転換後は7月1日から9試合で1勝0敗、防御率2.08の好成績。だが、やはり腹の底では面白くないはずだ。この日は1イニング限定とはいえ久しぶりの先発マウンドである。
「チームの頭として行かせてもらうので、しっかり投げたいと思います」
しかし、その意気込みが空回りしてしまったのか、この日の松井裕のボールは荒れていた。以下、松井裕の投球内容である。
1番武田健吾(オリックス) ボール、レフト前安打
2番鈴木誠也(広島) 初球打ちで投手ライナー、一塁走者戻れず併殺
3番古本武尊(中日) ボール、ボール、ボール、空振り、四球
4番美間優槻(広島) ボール、ボール、ボール、レフトオーバーのタイムリー二塁打
5番北條史也(阪神) ボール、ボール、ボール、ファウル、センターフライ
17球のうち10球がボール。特にクリーンアップトリオにはいずれも3つボールが先行する苦しい投球だった。最速は143キロ。しかし美間に打たれたのは136キロの直球と、球速にもバラつきがあった。
1軍で見たい松井裕vs.北條の対決
対戦したウエスタン選抜で特に意識したのが北條である。松井裕が22奪三振を記録した高2の夏、桐光学園が準々決勝で敗れた相手が、北條が主軸を打った光星学院(現・八戸学院光星)だった。この試合でも松井裕は15三振を奪ったが、北條には4打数2安打2打点とやられ、試合も0対3で敗れたのだった。
「(対戦は)もったいなかったですね。ストライクを先行させて、自分のペースで投げたかった」
1軍でもリーグが違うため、再戦が実現するのはしばらく先になりそうだが、このような楽しみな対戦はやはり上の世界で見てみたいものだ。
また、キャッチャーの森も「楽しむことはできたけど、良いところを引き出せずに残念」と悔しがった。森はまだ1軍経験こそないが、バットでは打率3割3分8厘、39打点(いずれもイースタン5位)と非凡なものを見せており、試合前には「ホームランを打ってMVPを取ります」と高らかに宣言。残念ながら有言実行といかずも、第2打席ではレフトオーバーのタイムリー二塁打を放ち、意地は見せた。