松井裕樹から主役を奪った大砲3人の共演、「スターへの登竜門」フレッシュ球宴総括

田尻耕太郎

先発バッテリーを組んだ西武・森(左)と楽天・松井裕 【写真は共同】

 プロ野球の未来のスター候補が集った「フレッシュオールスターゲーム2014」が、7月17日に長崎県営野球場(ビッグNスタジアム)で行われた。

 1回表、守りに就いたイースタン選抜の先発マウンドに立ったのは松井裕樹(東北楽天)。受けるキャッチャーは森友哉(埼玉西武)。昨年まで一方は桐光学園(神奈川)のエース、もう一方は大阪桐蔭(大阪)で強打の正捕手でならした「甲子園のスター」2人が、プロで初めてバッテリーを組む。それが今年最大の目玉だった。
 だが、先発松井裕がまさかの大乱調。試合は一気に打撃戦の展開となってしまった――。

久々先発の松井裕は荒れた内容に

「いいカウントになれば、(三振を)決めにいきたいですね」

 試合前には「甲子園1試合22奪三振」の記録保持者らしいコメントもあった。松井裕の囲み取材が始まれば、ほとんどの報道陣が一気に集結。ベンチ裏では通路をふさいでしまうほどの大きな輪ができた。しかし、楽天担当記者によれば最近では珍しい光景だという。

 開幕こそ、高卒ルーキーながら先発ローテ入りして大きな話題と注目を集めたが、制球難に苦しみ2軍落ち。7月、ようやく1軍で再び姿が見られるようになり、プロ初勝利もマークしたが、チームでの役割は中継ぎへと変わった。配置転換後は7月1日から9試合で1勝0敗、防御率2.08の好成績。だが、やはり腹の底では面白くないはずだ。この日は1イニング限定とはいえ久しぶりの先発マウンドである。

「チームの頭として行かせてもらうので、しっかり投げたいと思います」

 しかし、その意気込みが空回りしてしまったのか、この日の松井裕のボールは荒れていた。以下、松井裕の投球内容である。

1番武田健吾(オリックス) ボール、レフト前安打
2番鈴木誠也(広島) 初球打ちで投手ライナー、一塁走者戻れず併殺
3番古本武尊(中日) ボール、ボール、ボール、空振り、四球
4番美間優槻(広島) ボール、ボール、ボール、レフトオーバーのタイムリー二塁打
5番北條史也(阪神) ボール、ボール、ボール、ファウル、センターフライ

 17球のうち10球がボール。特にクリーンアップトリオにはいずれも3つボールが先行する苦しい投球だった。最速は143キロ。しかし美間に打たれたのは136キロの直球と、球速にもバラつきがあった。

1軍で見たい松井裕vs.北條の対決

 登板後の松井裕は第一声で「調子があまりよくなかった」と唇をかみつつ、「だけど言い訳はできない。その中で抑えないと先発は務まらない。今後しっかりやっていきたい」と前を向いた。

 対戦したウエスタン選抜で特に意識したのが北條である。松井裕が22奪三振を記録した高2の夏、桐光学園が準々決勝で敗れた相手が、北條が主軸を打った光星学院(現・八戸学院光星)だった。この試合でも松井裕は15三振を奪ったが、北條には4打数2安打2打点とやられ、試合も0対3で敗れたのだった。

「(対戦は)もったいなかったですね。ストライクを先行させて、自分のペースで投げたかった」

 1軍でもリーグが違うため、再戦が実現するのはしばらく先になりそうだが、このような楽しみな対戦はやはり上の世界で見てみたいものだ。

 また、キャッチャーの森も「楽しむことはできたけど、良いところを引き出せずに残念」と悔しがった。森はまだ1軍経験こそないが、バットでは打率3割3分8厘、39打点(いずれもイースタン5位)と非凡なものを見せており、試合前には「ホームランを打ってMVPを取ります」と高らかに宣言。残念ながら有言実行といかずも、第2打席ではレフトオーバーのタイムリー二塁打を放ち、意地は見せた。

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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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