オールスターで期待したいのは真剣勝負! 12球団OB解説者の注目ポイント

ベースボール・タイムズ

広島は球団史上最多8選手が選出。前半戦の勢いが反映された形に。エース前田(中央)はもちろん、菊池(前列左)、丸(前列右)ら若手にも注目したい 【写真は共同】

 夏の風物詩となって久しいプロ野球オールスターゲーム。今年も歴戦のベテラン選手から脂の乗り切った実力者に、ブレーク中の新鋭、そして未来を担う黄金右腕と、多士済々の56選手が集結。第1戦(18日、西武ドーム)、第2戦(19日、甲子園)としのぎを削る。

“真夏の祭典”を前に、12球団のOBたちはどんな視点でオールスターを見ているのか。それぞれの古巣球団を中心に今年の注目ポイントを解説してもらった。

阿部、復調のきっかけをつかめるか

巨人:篠塚和典

 オールスターがお祭りだからといって、そこでいい加減なプレーをしたら調子を崩しますし、調子の良い選手はその状態をキープすることも必要になります。そして調子の悪い選手は何かきっかけをつかむことができる場所でもあります。

 そこで注目したいのが、阿部慎之助ですね。打席に入ってしまえば真剣勝負ではありますが、普段よりも気楽に打席に入れるということも確かです。相手投手も真っすぐで真っ向勝負してくることが多いですから、その勝負の中で自分も良いスイングができる。そして「シーズン中もこういう形で打席に入れたら」「こういう感じで打席に入った方が良い」と、それまでとは違った感覚をつかんだり、忘れていたことに気付いたりする場合もあります。今は阿部を見ていると、気合の入っている時と入っていない時の差があって好不調の波がある。数字的にも上がってきませんが、オールスターで何かのきっかけをつかんでほしいですね。

藤浪はファンの心に訴えかけるプレーを!

阪神:広澤克実

 阪神からは藤浪晋太郎、鳥谷敬、マートンの3選手がオールスターに参加します。彼らの活躍が楽しみではありますが、その一方で近年の日本の中でプロ野球オールスターへの興味が薄れてきてしまっていることも忘れてはいけない。昔は“お祭り”というだけでも人が集まりましたが、もうそういう時代ではなくなった。昭和のスタイルから平成のスタイルを見つけて、オールスターの新しい意義を見つけないといけない。

 そのためにも、何よりも真剣勝負が必要だと思います。去年は藤浪が中田翔(北海道日本ハム)に対してスローボールを投げてファンを沸かせる場面もありましたけど、そういうことをやり過ぎるとオールスターがただのイベントで終わってしまう。それよりもプライドを懸けた真剣勝負が見たい。熱い戦いでこそファンの心をつかめると思います。ファンの心に訴えかけるプレー。藤浪や大谷翔平(日本ハム)といった選手には、それができると思います。ぜひ新しい時代のオールスターを作っていってもらいたい。

丸、堂林、一岡に期待 シーズンに弾みつけて

広島:北別府学

 今年はカープから大量8選手が出場します。前半戦のカープの勢いが反映された形になりましたね。もちろんエース・前田健太には注目ですが、25歳の丸佳浩、22歳の堂林翔太、23歳の一岡竜司といった若い選手たちにも期待したい。僕もそうでしたが、オールスターに初めて出場した時はオドオドしてベンチの端っこに立っていましたけど、それがだんだん慣れてくると真ん中の方に座れるようになる。真ん中に座れる選手はプレーにも自信が満ち溢れています。何か疑問に感じたことは、そういう選手にどんどん質問すればいい。そういう情報交換ができるのもオールスターならではですからね。

 オールスターで活躍すればペナントレースにも弾みがつきます。何より自信がつきますし、それが今後の成長にもつながります。まずは気分転換して楽しんで。その上で、しっかりと自分たちの野球、セ・リーグの野球をして、試合に勝ってもらいたい。

谷繁兼任監督vs.パ・リーグの俊足選手

中日:山崎武司

 中日からは計5選手が選ばれましたが、その中でも現在セ・リーグ首位打者の大島洋平は、文句なしの選出でしょうね。オールスターという晴れ舞台でも、いつものようにしっかりボールを捉えてヒットを積み重ねてほしいですね。投手陣からは3人が選ばれましたが、いずれも初出場です。大野雄大は得意のスピードボールでパ・リーグの打者を翻弄(ほんろう)してほしい。福谷浩司も持ち味の思い切りの良さで、自分のストレートがどこまで通用するのかチャレンジしてほしい。山井大介は変に力勝負せずに、普段通りの自分のピッチングをしてほしいですね。

 そして最後の1人が谷繁元信選手兼任監督です。今さら何か注文を付ける部分はないのですが、パ・リーグの選手たちが賞狙いも兼ねてどんどん走ってくる可能性がありますので、捕手として、そこでランナーを刺せるかどうかに注目しましょう。いずれにしても出場する選手は何かをつかみ取ってチームに帰ってきてほしいと思います。

井納のマウンド上での“たたずまい”を見て

横浜DeNA:駒田徳広

「ブランコの長打力を見ましょう!」というのは誰もが言うことだと思いますので、触れずにいきます(笑)。今回、横浜DeNAから選ばれた井納翔一、三上朋也は、ともに今季ブレークしたピッチャーです。井納は2年目で、三上はルーキーですが、2人とも社会人卒ということもあってか、マウンド上ではもうプロで何年もやっているかのような雰囲気を出しています。

 特に注目してほしいのは井納ですね。角度ある直球とスライダー、フォークというボール自体も良いですが、見てほしいのはマウンド上での“たたずまい”です。今季は春の段階から非常に堂々としていて、不動のエースのような立ち居振る舞いが、見ていて非常に潔いですね。最近は選手同士が仲良くなったからか、真っすぐ勝負などにこだわる投手や打者が多いですが、井納には普段通りに淡々と投げてほしい。三振を取った時などのふてぶてしい感じをオールスターでも見せてほしい。

注目は雄平の打球の伸び

東京ヤクルト:飯田哲也

 東京ヤクルトからは中村悠平、山田哲人、バレンティン、雄平の4選手がオールスターに選ばれました。その中で唯一のファン投票選出がバレンティンです。4回目の出場になります。今季は左アキレス腱を痛めて1カ月半ほど休んでいましたが、7月13日の試合から復帰できましたので、間に合って良かったです。何といっても昨年、日本記録を更新するシーズン60本塁打をマークした過去最高の長距離砲ですから、オールスターの舞台でもその飛距離、パワーを存分に見せつけてほしいですね。

 他の3選手は、いずれも初出場です。捕手の中村は強肩ぶりをアピールしてほしいですし、バットコントロールの良さが魅力の山田には、ボールへの対応力と広角に打てるところを見せてほしい。そして期待の雄平です。雄平の魅力は思い切りの良いスイングです。そのスイングスピードから捉えた打球は、驚くほど、本当によく伸びます。雄平の打球の伸びに注目してほしいですね。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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