ブラジル、6度目の優勝なるか? 識者の予想するW杯決勝Tの展望

構成:スポーツナビ

清水英斗(サッカーライター)

堅守速攻のスタイルでグループリーグを突破したオランダ。このまま頂点まで駆け上がることはできるか 【写真:ロイター/アフロ】

「オランダの堅守速攻がブラジルを困らせる」

 開幕前から変わらず、優勝予想にはオランダを推す。勝敗にこだわる試合運びでファイナルにたどり着いた10年の南アフリカ大会に続き、今回もオランダは、母国の伝統にこだわらず、5バックを用いたカウンター戦術を用い、選手個々のパフォーマンスを最大化させている。

 オランダは優勝経験こそないが、チームを率いるルイ・ファン・ハールには実績があり、結果に強い執着を見せる指揮官だ。唯一の不安は、チームのアクの強さから、一度試合に負けると空中分解を起こす危険性があること。しかし、グループリーグを突破した今、それを心配する必要はない。オランダがラウンド16で対戦するメキシコは、堅守速攻をベースとする厄介なチームだが、ここさえ越えれば、準決勝で対戦が予想されるアルゼンチンも、今のオランダのスタイルにとっては、むしろやりやすい相手だろう。メキシコさえ倒せば、オランダはファイナルにたどり着くと予想する。

 一方、反対側のブロックを見ると、優勝候補のブラジル、ドイツが目につく。ブラジルにとっての正念場は、準々決勝のコロンビア対ウルグアイの勝者との対戦だろう。相手チームに対して明らかな実力差があるときのブラジルは、まるでポゼッションチームのような試合運びで相手を圧倒するが、実力が拮抗(きっこう)した対戦では、カウンタースタイルという真の姿が浮かび上がる。そのため、チリのようなポゼッションチームを格好の獲物とする一方、スコアレスドローに終わったメキシコ戦のように、じっくりと堅守で対抗する相手を苦手とする。コロンビアとウルグアイも堅くバランスを保つチーム。かなり難しい試合になり、PK戦も充分にあり得る。この難敵を倒せば、ブラジルはベスト4に名乗りを上げる。

 そして準決勝がブラジルとドイツとの対戦になれば興味深い。ドイツはジョゼップ・グアルディオラが指揮したバイエルン・ミュンヘンから多くの選手を組み入れており、ある意味では、避けられない自然劣化によってスペインが失ったフレッシュさを復活させたポゼッションチームとも言える。ドイツが突き抜ける可能性もあるが、相性としてはブラジルが有利か。ドイツが3位決定戦に回れば、アルゼンチンを破って3位になるだろう。

 オランダとブラジルの決勝は、前述の理由で、オランダの堅守速攻がブラジルを困らせるのではないか。そしてオランダがW杯初優勝を果たすだろう。

【清水氏の順位予想】

1位:オランダ
2位:ブラジル
3位:ドイツ
4位:アルゼンチン

北健一郎(スポーツライター)

北氏は決勝カードをオランダ対フランスと予想。フランスの個々の能力が高い上に、チームとしてまとまっている点を評価した 【写真:ロイター/アフロ】

「2つの顔を使い分けるオランダが頂点に立つ」

 開幕前はブラジルがダントツの優勝候補だと思っていた。自国でプレーできる絶対的メリット、W杯を制したことのある監督の存在、熱狂的な観客の後押し……。どれをとっても優勝する要素しかないと。だが、グループリーグでは、ネイマールへの依存度の高さがあらためて浮き彫りになった。攻撃は単発で、マルセロやダニエウ・アウベスの調子も今ひとつ。ここまではネイマールが1人でけん引してきたが、タフな連戦を乗り切るには不安が残る。

 開催国ブラジルを沈めるとすればフランスか。フランスは個々の能力が高い上に、チームとしてまとまっている。エースのリベリが離脱したが、それによりカリム・ベンゼマとリベリが左サイドのスペースで重なってしまうという構造的問題が解消されたことが大きい。

 アルゼンチンはブラジル以上にメッシというエースに依存している。ただ、このチームの場合、組み合わせに恵まれており、ベスト4までは勝ち上がれるだろう。準決勝で当たるのは恐らくオランダ。スペインを丸裸にして5−1で打ち破ったファン・ハールのチームは、アルゼンチンをスカウティングしてくるに違いない。

 よって、決勝戦はフランスとオランダの“欧州対決”になると予想する。優勝はオランダ。今大会のオランダは対戦相手によって柔軟に戦い方を変えることができる。スペイン戦のように5バックで相手にボールを持たせてカウンターを仕掛けたと思えば、オーストラリア戦のように自分たちから攻めていくこともできる。さらに、ファン・ペルシ、アリエン・ロッベン、ウェズレイ・スナイデルの3人が好調をキープしているのも心強い。“トータルフットボール”と“カテナチオ”。2つの顔を使い分けるオランダが頂点に立つと見るが、果たして。

【北氏の順位予想】

1位:オランダ
2位:フランス
3位:ブラジル
4位:アルゼンチン

スポーツナビ編集部サッカー担当

編集部はギリシャが得意のカウンターで再び番狂わせを起こすと予想。果たしてどのような結末になるのか 【写真:ロイター/アフロ】

「決勝はPK! GKの差でブラジルが優勝」

 まずは、ベスト4予想。今大会の南米勢の強さと戦力を考えて、ブラジルとアルゼンチンは堅いはず。ブラジルのブロックは南米勢が固まっているが、ブラジルが負けるとは考えにくい。おそらくルイス・スアレスが出場できないウルグアイ、ベスト16以上の経験がないコロンビアのどちらが勝ち上がってきたとしても、開催国ブラジルの優位は動かない。南米勢のいないフランスやドイツのいるブロックは、盤石の強さを見せたドイツが勝ち上がり、オランダのいるブロックからは、土壇場で決勝トーナメント進出をつかんだギリシャが、得意のカウンターで再び大番狂わせの4強進出を果たすと予想する。

 準決勝のブラジル対ドイツのキーマンはネイマールとメスト・エジル。ブラジルの気候によりエジルはプレミアリーグでも被ったガス欠状態になると予想し、ブラジルが決勝に進出する。アルゼンチン対ギリシャだが、ベスト4以上は経験が必要となるため、アルゼンチンが決勝に進出するはずだ。

 決勝は「ネイマール対メッシ」の点の取り合い。今大会を象徴するようなスコア、3−3となり、勝負はPK戦にもつれるはず。最後は35歳のベテラン、ジュリオ・セーザルの読みがさえわたり、ブラジルが自国で6度目の優勝を成し遂げるだろう。

【編集部の順位予想】

1位:ブラジル
2位:アルゼンチン
3位:ドイツ
4位:ギリシャ

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