全米を震撼させた“レブロンの夏”再び オプトアウトを選択し、移籍市場へ

杉浦大介

“ビッグ3”解体後は球団社長の凄腕が問われる

もしレブロンがヒートを離れるとなると、“ビッグ3”は解体となるが、果たして!? 【Getty Images】

 それでは、レブロンはなぜFAになったのか?

 それは今季のファイナルでサンアントニオ・スパーズに惨敗を喫した後で、将来に向けて、より上質なメンバーをそろえる必要性を感じたからだろう。
「この4年間は歴史的なものだった。レブロン、ウェイド、ボッシュ、そしてエリック・スポールストラが、NBAの歴史においても前例のない快進撃の1つをマイアミ・ヒートにもたらしてくれた。レブロンと今後について話し合うのを楽しみにしている」

 そう語ったヒートのパット・ライリー球団社長は、もちろんレブロンの意図を理解しているはずである。

“ビッグ3”はそろって30歳を越えただけに、ロースターへのてこ入れは必須。ただ、サラリーキャップが設定されたNBAでさらなる補強に挑もうと思えば、レブロンを含めたスターたちも多少の減給をのむ必要がある。

 今後、同じくオプトアウト権を持つウェイド、ボッシュも、レブロンに続いてFAになるのか。そうなった後、再びヒートと新契約を結ぶとしても、3人はどれくらいの減給を受け入れるのか。

 ライリー社長とレブロンを先頭に、ヒートの主要メンバーはそれらの答えを見つけていかねばならない。経費を浮かせた後、どんな選手を加えられるかまでを含め、凄腕で知られるライリーの手腕が再び問われることになる。

レブロンの移籍でパワーバランスが変わる

 何らかの形で“ビッグ3”に亀裂が入った場合、あるいはヒート側がレブロンに豊かな将来性を提示できなかった場合、移籍の可能性も出てくる。

『ESPN.com』の報道によると、レブロンが視野に入れているのはヒート、キャバリアーズ、ヒューストン・ロケッツ、ニューヨーク・ニックス、ブルックリン・ネッツの5チーム。給料総額の超過したニックス、ネッツへの移籍は現実的でなく、代わりにロサンゼルス・クリッパーズ、シカゴ・ブルズなどを可能性があるチームとして加えるべきか。

「レブロンがここで移籍を決意したら、私は驚くだろう。マイアミで素晴らしい4年間を過ごし、相当なことがない限り、来季も優勝のチャンスが十分にある。一方、スターがそろった他のチームに移れば再び批判されかねないし、また新しい環境でチーム作りを進めていかねばならないのもマイナス材料だ」

 ドラフト会場で、リーグ内の事情に詳しいあるベテラン記者は筆者にそう語ってくれた。確かにその通りで、戦力面でも魅力的な移籍先はほとんど見当たらない。そんな中で、例外があるとすれば?

 それはカイリー・アービング、ウィギンスのような若きタレントをそろえ、同時に古巣ゆえに適応し易いクリーブランドではないか。高校時代から“選ばれし男”とまで呼ばれたレブロンが、もしも故郷のチームに戻ることがあれば、全米を揺るがすようなビッグストーリーになるが……。

“レブロンの夏”と呼ばれた2010年夏から4年が過ぎ、NBAの視線は再び現役最強プレイヤーに注がれる。残留が濃厚と分かってはいても、絶対確実ではない。続編にありがちな予定調和が崩れれば、NBAは震撼(しんかん)する。

 レブロンの一存次第でNBAのパワーバランスは完全に変わり得るだけに、最後の最後まで目を離すべきではないのだろう。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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