ワタナベジムの柴田明雄と田口良一に注目=7月のボクシング興行見どころ

船橋真二郎

日本&OPBFミドル級王者・柴田がタイトル戦

村田のデビュー戦の相手を務めた柴田、井上尚と日本タイトルを争った田口が昨夏の注目の一戦から1年が経ち、7月5日揃って後楽園のリングに上がる 【船橋真二郎】

 昨年8月、それぞれ注目のリングに上がったワタナベジムの柴田明雄と田口良一が7月5日(土)、揃って東京・後楽園ホールに登場する。

 ロンドン五輪金メダリストでWBC世界ミドル級13位の村田諒太(三迫)のデビュー戦の相手を務めた東洋太平洋ミドル級王者の柴田は今年3月、中川大資(帝拳)に判定勝ちし、再起を飾ると同時に日本ミドル級タイトルを吸収。2本のベルトを賭けて防衛戦を行なう。挑戦者は東洋太平洋6位、日本2位の西田光(川崎新田)。西田は10勝3KO6敗1分と戦績こそ平凡ながら、昨年4月以来、元東洋太平洋王者2人を含め、ランカー相手に4連勝と急上昇中の26歳の新鋭である。両者は昨年、村田戦の前にスパーリングで手合わせしており、柴田は西田の印象を「体の強さを武器に距離をつぶして、手数で圧力をかけてくる。正直、苦手なタイプ」と率直に語る。

 だが、柴田はむしろ「そういう選手に勝つことで成長できるし、チャンスと捉えている。今の自分に必要な対戦相手」と歓迎する。柴田は183センチ、西田は175センチと身長差もある両者。持ち味のスピードを生かしたアウトボクシングで柴田が西田のアタックをさばく展開が予想されるが、カギになるのが村田戦以降、柴田が力を入れているフィジカルトレーニングの効果。実感しているというパンチ力のアップを試合で発揮できれば、より楽に西田を突き放すこともできるはずだ。

「ベルトを持っている間は可能性が残されていると自分で決めて続けている。負ければ終わり。ベルトがある間は自分をより高い位置に持っていくことだけ考える。ランク(柴田は現在WBC19位)もそうだし、周りの評価もそう。自分自身の自分に対する評価も上げていきたい」
 経験で上回る柴田優位を推す声は多いが、32歳のベテランには微塵の油断もない。

元日本王者・田口は元世界王者と8回戦

 国内史上最速の6戦目でWBC世界ライトフライ級王座に就いた井上尚弥(大橋)に日本ライトフライ級タイトルを奪われた田口はWBO世界ミニマム級8位のフローレンテ・コンデス(フィリピン)と8回戦。元IBF世界ミニマム級王者でもあるコンデスは“リトル・パッキャオ”の異名を持つ。27勝23KO(8敗1分)の強打を誇るサウスポーで、強豪との敵地での対戦経験も豊富な34歳のベテランだ。「パンチャーで怖さもあるけど、自分がどこまで通用するのか楽しみ」と田口の気持ちは高まっている。

 井上に大差判定で敗れはしたが奮闘し、逆に評価を高めた田口。渡辺均会長は世界挑戦の機会をうかがい続けているが、「正直、自分が世界レベルなのかは疑問符」と冷静に自身を見つめる。だからこそ、田口にとってこの試合の持つ意味は大きい。
「(世界挑戦は)世界ランカーにあと何回か勝ってからでも遅くないと思うけど、元世界王者に勝てば大きな自信になると思うし、良い勝ち方ができれば自分の可能性を信じられるかもしれない」
 
 フジテレビ系列でゴールデンタイムに全国中継された試合から約1年。自身のキャリアを真摯に歩み続けている2人の今に注目したい。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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