“幻の球団”のGMが振り返る球界再編「私たちの問題提起は正しかった」

構成:スポーツナビ

04年の球界再編で、堀江氏(左)とともに新規参入を目指したライブドア球団のGMだった小島氏(右)に、04年の意味を聞いた 【写真は共同】

 日本プロ野球界に激震が走った2004年の“球界再編”。大阪近鉄とオリックスの合併が報じられてから、10チーム・1リーグ構想、ライブドアの近鉄買収計画、選手会による史上初のストライキ、そして近鉄の消滅と新球団「東北楽天」の誕生――あれから10年が経った。スポーツナビでは、当時の関係者の証言から04年の意味、そして今後のプロ野球のあり方を考えることにした。全3回の最終回となる今回は、楽天との競合の末、幻の球団となった仙台ライブドアフェニックスGM(ゼネラルマネージャー)の小島克典氏に話を聞いた。

堀江氏の登場「脳天をかち割られたような衝撃を受けた」

知人を介して堀江氏と出会った小島氏。いまでも「堀江氏らとの出会いは一生の財産」と話す 【スポーツナビ】

――2004年6月13日、近鉄とオリックスが合併に向けて話し合いを行っていることが明らかになりましたが、どういった経緯でライブドアに加わることになったのですか?

 04年は、新庄(剛志)さんがニューヨーク・メッツから、北海道に移転した日本ハムファイターズに移籍した年でした。前年まで彼の通訳をしていた私は、日本でフリーランスのスポーツコメンテーターの仕事をしていました。ライブドアが買収に名乗りを挙げたのを知ったのは、ドライブ中でした。ラジオから「プロ野球・近鉄バファローズの買収に、インターネット関連会社のライブドアという会社が名乗りを挙げました」というニュースが流れてきました。「代表取締役社長、堀江貴文氏は31歳……」と、自分と同世代の人がプロ野球のオーナーになろうとしている事実に、脳天をかち割られたような強い衝撃と興奮を覚えました。その後、知人を介して堀江氏と出会ったのがライブドアとの出会いでした。
 
――小島さんは横浜ベイスターズで通訳や広報を務められ、メジャー球団での勤務も経験されています。球界のことを知っていて、新規参入の壁の高さもよくご存知だったと思います。
 
 新規参入自体が高橋ユニオンズ(1954年に誕生、56年に解散)以来50年ぶりのことでした。新規参入の難しさは、正直、分からなかったですよ。私は当時31歳で、日本球界で5年、米国で2年働いた程度でした。日米の両球団で勤務経験がある30代は、私を含めて数人しかいなかったと思いますが、プロ野球の新規参入なんて参考になる書籍もないし、50年前の高橋ユニオンズの関係者も多くがご存命ではなかった。誰にも聞けない、本当に分からないことだらけの話でした。
 
――それでも新規参入に動いた理由は何だったのでしょうか?

 1リーグ制の推進と、選手会による反対が一番大きな要素でした。世論はどちらを望んでいたかという話です。
 事の始まりは、経営難に陥った親会社の近畿日本鉄道が、子会社であるバファローズ球団の経営から手を引くという話でした。そこに出資とか買収という形でライブドアが名乗りを挙げたのが始まりです。堀江氏らが7月4日に大阪ドームに試合観戦に行ったのですが、もう「球界の救世主」みたいな大歓迎を受けました。そのあたりが潮目となって「ライブドア」の知名度が一気に上がりました。当時はITベンチャーのひとつだったライブドアにしてみれば、一夜にして認知が広まったメリットは計り知れなかったと思います。

出生率が高かった仙台、可能性のある街と確信

――小島さんのライブドアベースボールGMの就任が発表されたのは10月13日でしたが、当時はどのような段階だったのでしょうか?
 
 発表は10月でしたが、本格的に関わり始めたのは8月の終わりごろだったと思います。当時は、本拠地を決める最終段階でした。仙台のほかに、長野、高松、静岡、沖縄などが候補に挙がっていました。最終的には仙台に決めたわけですが、当時、私たちが大切にしていたキーワードのひとつは「スポーツの地方拡散」でした。東京にフランチャイズがあったファイターズが北海道に移転して成功し始めたころで、その少し前にはホークスが福岡に移転して大成功を収めていました。一連の流れをくんで、「スポーツの地方拡散」をキーワードにフランチャイズの選定を進めていきました。
 
――仙台の決め手は何だったのでしょうか?
 
 プロ野球球団の収益構造は、広告収入、放映権収入、チケット収入、それに物販の4つです。その点において、仙台は大きな会社の東北支社がだいたいあるなど、ビジネスポテンシャルが高かったことが挙げられます。あと、私自身が調べたのは出生者の数です。仙台はサラリーマンの転勤の影響か、人の流出入は大きいのですが、子供の出生率が高かった。子供が多いということは未来の「黄金顧客」です。そこに仙台の持つ可能性を感じました。

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