メッシ中心の“ファンタスティック4”=W杯を彩る各国注目FW陣を紹介

河治良幸

世界に誇る“ツインタワー”――ボスニア・ヘルツェゴビナ

ボスニアの“ツインタワー”の一角を占めるエディン・ジェコ(右) 【Getty Images】

 そのアルゼンチンと同じF組に入ったボスニア・ヘルツェゴビナはエディン・ジェコとビダド・イビシェビッチの強力2トップを擁する。193センチのジェコと188センチのイビシェビッチは懐の深いポストプレーと強烈なヘディングシュートを誇り、まさに“ツインタワー”という表現がぴったりだ。

 初出場のボスニアにとって、この2トップにいかに良い形でボールを出すかが勝利の鍵となる。もっとも直前のテストマッチではコートジボワールを相手にジェコが2得点を決めて勝利したが、どちらの得点も相手のクリアミスを突いたもの。特にアルゼンチン戦など劣勢が予想される試合では、ロングクロスやロングパスを前線に放り込み、そこからジェコやイビシェビッチが強引に狙うシーンが出てきそうだ。

 セットプレーの得点力も強みで、欧州予選ではギリシャからも得点している。ミラレム・ピアニッチという最高レベルのキッカーがおり、彼と合わせたセットプレーは、どの国にとっても脅威となるだろう。

スアレスの負傷は不安視されるが……――ウルグアイ

“堅守速攻”が基本スタイルのウルグアイは、プレミアリーグ得点王のルイス・スアレス、パワーとスピードを兼ね備えるエディンソン・カバーニ、前回W杯南アフリカ大会のMVPでセレッソ大阪に所属するディエゴ・フォルランを擁する。予選で主に用いてきた「4−4−2」や「3−5−2」では誰かがベンチスタートとなるが、3選手が共に好調ならフォルランを中央のセカンドトップ気味に配置する「4−3−3」も有効なプランとなる。

 3人共にカウンターから一発のチャンスを得点に結び付けてしまう打開力と決定力があるが、特にスアレスは中央突破、カバーニは速いクロスを合わせる形を得意としており、フォルランは流れに応じて柔軟に合わせることができる。相手DFにとっては非常にマークしにくい。しかも、90分の中で相手が少しでも隙を見せると逃さないため、高い集中力が求められることは昨年8月に日本代表が経験した通りだ。

 代表の合宿中にスアレスがひざを負傷し一時は出場も危ぶまれたが、すでに練習に復帰しており、初戦のフル稼働は難しくても、決勝トーナメントでは大きな力になりそうだ。もう1人のFWクリスティアン・ストゥアーニは決め手と大舞台の実績こそ3人より落ちるものの、万能性が高く中央もウィングもこなせる貴重なバックアップで、終盤のパワープレーでも頼りになる長身ストライカーだ。

前線の決定力は大会屈指――オランダ

けが人が続出したオランダだが、ファン・ペルシ(写真)ら前線の選手の活躍がチームの浮沈に関わってくる 【Getty Images】

 ケヴィン・ストロートマン、ラファエル・ファン・デル・ファールトと中盤の主力クラスが相次いで欠場となり、苦しい戦いも予想されるオランダだが、ロビン・ファン・ペルシとアリエン・ロッベンを擁する前線は大会屈指の得点力を誇る。

 ファン・ペルシは柔らかいトラップからの正確なシュートが武器で、形がはまればタイトにマークされていても、しなやかな身のこなしでフィニッシュに持ち込んでしまう。ロッベンは縦の突破力がある上に、カットインからの左足のミドルシュートが強烈だ。彼らの動きがうまく噛み合えば2人でもゴールをこじ開けることができる。

 2人とも30歳で過去2大会を経験しており、ロッベンは実力通りに活躍しているが、ファン・ペルシは11試合で2得点と、これまでW杯にやや弱い印象を与えてしまっている。今大会が最後のW杯になる可能性もあり、期するものはあるだろう。

 左のウィングはロッベンにも負けない快速が自慢のレンスが第一候補。中央や右のウィングでも機能する万能性も魅力で、オランダ代表ではやや遅咲きの26歳だが、オランダの躍進と共に国際的なブレイクを果たす可能性は小さくない。

 ファン・ペルシが配置されるセンターフォワードにはクラース・ヤン・フンテラールというもう1人のワールドクラスがいる。左右にウィングを置く3トップを好むルイ・ファン・ハール監督だけに、スペシャリストの2人を同時起用するケースはほとんど無い。ある意味“最強の2番手”と言える存在だが、勝負どころでフンテラールが大仕事をやってのけるかもしれない。

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著者プロフィール

セガ『WCCF』の開発に携わり、手がけた選手カード は1万枚を超える。創刊にも関わったサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で現在は日本代表を担当。チーム戦術やプレー分析を得意と しており、その対象は海外サッカーから日本の育成年代まで幅広い。「タグマ!」にてWEBマガジン『サッカーの羅針盤』を展開中。

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