球団消滅の当事者が語る“球界再編10年”=山村宏樹氏「“野球の力”再確認できた」

構成:スポーツナビ

球界再編で誕生した楽天の優勝、非常に価値がある

球団合併、1リーグ構想、ストライキ……04年は球界史においても大きな分岐点のひとつだった 【写真は共同】

――今年で球界再編が起きて10年が経過します。04年の球界再編の意味を当事者の一人として、どう考えますか?

 人間ですから10年前のことはどんどん忘れていきます。しかし、もし04年の出来事を教訓にできず、球界がまた同じことを繰り返すような事態が起きるなら、ファン離れの加速など、当時よりも大変なことになるのではないでしょうか。

 選手会はやむを得ずストライキを起こし、ファンの方に悲しい思いをさせました。選手としても不安な日々を過ごし本当にしんどかったです。後輩には絶対に経験させたくないですね。04年のような球団消滅の騒動は、選手、球団関係者、ファンといろいろな人が心痛め、傷つきました。なので、2度とあってはならないです。
 また、一部の人たちの事情で、路頭に迷う人がたくさん出るということも忘れてはいけないと思います。

 しかし、楽天が創設し、プロ野球選手として現役を続けることができると決まった時は、プロ入りが決まった時よりもうれしかったですね。東北、仙台の方々は非常に喜んでくれましたし、歓迎してくれました。多くの人にとって“野球が持つ意味”、“野球の持つ力”を再確認することができたと思います。
 また、昨シーズン、楽天が創設9年で日本一に輝きましたが、これはプロ野球界にとって非常に価値のある出来事だったと思います。

――今後のプロ野球をどう考えますか?

 もっとファンの方の声に耳を傾けなくてはならないですね。交流戦も最初は普段見ることができない、セ・リーグのバッター対パ・リーグのピッチャーの対決などが見たいと言って始まったものだと思います。ただ、毎年やっていれば、ファンの方も見慣れてきて新鮮さが失われてきます。
 もっとファンの方には応援しに球場に来ていただかないといけないし、テレビにも放送してもらわないといけないですよね。ですので、新しい企画を常にプロ野球は提供し続けないといけないと思います。球団やリーグにはもっと若い人の力を使ってほしいと思います。

もう一度、ワクワクするような企画を

近鉄が消滅してから10年。元近鉄の選手だった山村氏は「2度とあのような出来事を繰り返してはいけない」と強調する 【写真は共同】

――アベノミクスの成長戦略の中で16球団構想が盛り込まれているようですが。

 プレーしていた選手の一意見としては、チームが全国に広がる分、調整や移動も大変になります。プロ野球のレベルという問題もありますし、価値を下げるようなことはしなくていいと感じています。また、観客動員数に関しても課題がありますよね。

 ただ、確かに地元にプロ野球チームができれば地元の方はうれしいですよね。ですので、ファンの方がチーム増を本当に望んでいるのか、首都圏・関西圏以外にこれからチームを新設して球団経営が成り立っていくのか、しっかりと検証した上で決定してほしいと思います。

――10年間、12球団は維持したまま運営ができていますね。

 プロ野球が12球団を維持できたというのが一番良かったと思います。ただ、この12球団をどう維持して、ファンの方に飽きられないようにしていけるか、プロ野球を取り巻く課題は以前と大きく変わっていませんよね。
 ちょうど本日よりサッカーワールドカップ(W杯)が始まりますが、W杯開催中はどうしてもサッカーに話題は集中し、ファンの方々もサッカーに目が向きます。野球にもWBCがありますが、世界一決定戦として課題もあります。五輪の不参加とか、野球が抱えている問題はまだまだたくさんあります。

――今後の10年、野球界の未来について思うことはありますか?

 ファンの方々が何を望んでいるのか、もっともっと取り入れてほしいですね。新しいことに挑戦してほしいですね。10年前に交流戦をスタートさせた時のようなワクワクするような企画を考えていかなければなりませんね。

<全3回連載の第2回は6月16日(月)に掲載します>

(取材・構成:森隆史/スポーツナビ)

山村宏樹/Hiroki Yamamura

【スポーツナビ】

1976年5月2日、山梨県出身。甲府工高から95年ドラフト1位で阪神入団。2000年に大阪近鉄に移籍し、先発ローテとして01年のチームのリーグ優勝に貢献する。04年オフに分配ドラフトで東北楽天に移籍。12年の現役引退後は、野球解説やコラム執筆を中心に活動している。

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