福嶋晃子の復帰から考える産休問題〜母としても輝き続けられる舞台を〜
ママとしては初、1年半ぶりの復帰は50位
1年半ぶりに復帰した福嶋晃子。ママとしては初の舞台となった「リゾートトラストレディス」は50位だった(2011年のNEC軽井沢ゴルフより) 【写真は共同】
1996、97年と2年連続で国内女子ツアー賞金女王を戴冠している福嶋が、ママになって初めて臨んだ試合。結果は通算1オーバー50位だった。開幕前に目標としていた予選通過を果たしたのはさすがだが、3日間の戦いを終えた感想は「(予選通過して)ここまで来たらもっと上に行きたかった」。語った言葉からは、プレーヤーとしての悔しさだけじゃない、現在の福嶋が背負う一戦の重みのようなものを感じた。
あのトッププロの福嶋をしても、結婚→出産→復帰は大変なのだと。
協会が規定する産休制度の適用外だった福嶋
「(抜粋)協会は、対象者に対して出産日から36カ月が経過するまでの間を限度として産休を認めるものとする」
ただし、対象者は「(同第1条、抜粋)前年度LPGA賞金ランキング50名までの者」。つまり、賞金シード選手しか対象ではない。「産休」が認められた選手は、その時点で持っているシードを一定条件下で凍結することができ、復帰した時にもシード選手として試合に出場できる。
デビュー以来シードを確保してきた福嶋は、2011年7月に実業家の北山英典さんと結婚後、家庭を優先する決断を自ら下し、翌12年のツアーへの出場は13試合だけ。賞金ランク96位でシード権を失った直後の13年1月に第1子の妊娠を発表し、同年9月1日に長男・和樹(かずき)君を出産した。当然「産休」の制度は利用できなかった。
数々の問題がのしかかるママさんプレイヤー
今回のように、試合への出場が叶ったとしても、「そりゃぁプレー中も気になりますよ」とプレー後に漏らしたように、母として、子供のことは気がかりだ。今回の福嶋の場合は夫、義理の姉、実母のサポートがあり、プロアマ出場から最終日の4日間を完遂したという。それでも「慣れているベビーシッターさんじゃないと、息子も懐かない。今週は預けているのが慣れている人たち(家族)なので、安心して私も練習に集中できますね」。
ただ、自分以外に子供の面倒を見てくれる人の旅費など諸々の経費が増加するので、帳簿上、50位の賞金28万円ではかなり厳しい計算となる。生涯獲得賞金が歴代3位で9億円を超える福嶋だからこそできる出産後復帰の挑戦だが、それでも「ここまで来たら…」という本音が思わず漏れた。
ライフサポートのインフラ整備の重要性
「産休制度」の条件論議は難しい問題をはらむが、賞金ランク1位の選手でも、100位の選手でも、試合に出ようと決意したときに安心してプレーできる環境は、いずれ必要になると思う。米国女子ツアーはすでに各大会に無料託児施設を用意していると聞いた。
現在は、昨年のメジャー覇者・茂木宏美が制度を使って「産休」中。今年4月には横峯さくらが電撃結婚し、女子ゴルフ人気を盛り上げた世代が、家庭を持つ時代に入ったことは明らかだろう。女性で組織される団体ならなおさら、ライフサポートのインフラを整えて現役選手に人生の選択肢を広げ、次々に飛び込んでくる若手アマチュアの夢を広げてほしいと願う。
ファンの数と試合数では世界一を誇る国内女子ツアー。それが妻・母…と立場が変わっても常に輝き続けられる舞台だったら、選手たちはきっと世界に胸を張れる。
<糸井順子>
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