八重樫東、最強ロマゴン戦への決意=「負けるつもりはさらさらない」
苦い負けがきっかけとなった“激闘王”の新境地
「あの負けがなかったら、あそこまで頑張れなかったかもしれないし、劣勢に立たされても気持ちをしっかり持てていれば、形勢を逆転できる可能性があると心が折れなくなったのも、あの負けがあったから」
2012年6月、僅差の判定で敗れはしたが、統一戦でWBC世界ミニマム級王者の井岡一翔(井岡)と再び大熱戦を演じて“激闘王”と呼ばれたのも、2013年4月、アマ時代に4戦して全敗していたWBC世界フライ級王者の五十嵐俊幸(帝拳)と泥臭くフルラウンド打ち合い、2階級制覇を果たしたのも、苦い負けをきっかけに意識を変えて戦ってきたからだった。
大学の先輩・内山は「とにかく特攻してほしい」
「完全不利と言われる試合だけど、今まで何度もきつい戦いを乗り越えてきた八重樫がどうやってそれを打破するか。面白い試合になると思うし、軽量級では今までにないくらいのカード。とにかく特攻して、八重樫にはこのチャンスを必ずものにしてほしい」
八重樫も「内山先輩が『特攻』と言いましたけど、もしボクシングのレベルが1枚も2枚も違っても、僕は倒されても仕方ないくらいの気持ちでアタックをかけるつもり」と同調する。ゴンサレスにはそれだけの価値があると。
一世一代の大勝負に「爪痕は必ず残しますよ」
実は両雄は過去にも一度、同じリングで試合をしている。2008年9月、21歳のゴンサレスが4度防衛中だったWBA世界ミニマム級王者の新井田豊(横浜光)に4ラウンドTKO勝ちし、初めて戴冠したパシフィコ横浜。一方の八重樫が戦ったのは辻戦からの再起戦で、一度は立った世界との距離をまだ遠くに感じていた頃だった。
それから6年後、フライ級でゴンサレスを挑戦者に迎えて拳を交えることになるとは「まさか、まさかですね」と笑う。だが、この間に八重樫の心技体のバランスは確実に大きくなった。八重樫が臨む一世一代の大勝負。何カ月も前からこれほど楽しみな世界戦は近年にない。
「形としては僕がベルトを持っているだけで真の王者はロマゴン。強い王者に僕が挑むという形が自分の中でもしっくりくるし、みなさんも同じだと思う。ここまで負ける負けるみたいな言い方になっていますけど(笑)、負けるつもりはさらさらないし、僕の戦い方、生きざまみたいなものを感じていただけたらと思う。爪痕は必ず残しますよ」
5月末現在、具体的な日程や試合会場などはまだ正式発表に至っていないが、今秋9月頃の開催が濃厚である。
(文・船橋真二郎)