“王者復活”を印象づけたなでしこたち W杯連覇のキーワードは「成熟」
まるで二部構成の映画のような大会
なでしこジャパンが女子アジア杯初優勝。海外組を数名欠きながら、厳しい日程を勝ち抜いた 【写真:AP/アフロ】
「W杯の出場権を得ることは通過点。私たちの目標は、アジアカップのタイトルを取ることです。だから、ここがスタート地点です」
第一部のエンディングは、そのまま第二部『決勝トーナメント編』のプロローグとなった。準決勝に立ちはだかるのは、過去に何度もなでしこの行く手を阻んできた中国だ。
ぶっつけ本番だった中国戦の新布陣
対するなでしこジャパンはというと、エース大儀見優季が所属クラブ(チェルシー/イングランド)に戻るため、戦いの舞台を去った。そのため高瀬愛実、川澄奈穂美の新2トップで準決勝に臨んだが、攻撃の形が作れず苦しんだ。
ハーフタイムに、佐々木則夫監督は思いも寄らない手を打った。川澄と宮間の位置を入れ替え、宮間をセカンドトップに置いたのだ。「練習でもやったことがない」(阪口夢穂)という布陣だったが、前線の役割は明確になり、それぞれの長所も発揮されるようになった。この布陣の狙いについて、佐々木監督の言葉を引きながら整理してみたい。
「前半は高瀬と川澄に期待していた役割が逆になってしまった」。そこで監督は、高瀬には前半同様、相手ディフェンスラインの背後を狙う動きを続けさせる一方、スピードが武器の川澄を、守備網の中でボールを受けてさばく役割に埋没させないための方策を考えた。つまり「相手守備陣の間で受けるならば、宮間のほうがいい。サイドで仕掛ける役割は、宮間よりも川澄のほうがいい」。お互いの持ち味がより発揮できる布陣を指示すると、後半は見違えてボールが回るようになった。また、その後方でゲームメークしていた阪口は、フォーメーション変更後の手応えを「MFの中央が3人になり、その一番前に(宮間)あやがいることで、私が受けたボールをワンタッチであやに預けられるようになりました」と語っている。ぶっつけ本番ではあったが、チーム全体を最適化させた新フォーメーションは、対中国というだけでなく、今後の戦いにも有効な武器になる可能性を感じさせた。