バッジョ、ジダンらスターが紡いだ歴史 W杯過去5大会の名勝負を振り返る

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4年前の南アフリカ大会はスペインが初優勝を飾った。果たしてブラジルの地で歓喜に浸るのはどの国か 【Getty Images】

 1930年にウルグアイで初めて開催されてから84年。ワールドカップ(W杯)はブラジル大会で実に20回目を迎える。第二次世界大戦により中止した時期もあるが、4年に1度の祭典として、人々を熱狂の渦に巻き込んでいる。これまで大会を制した経験があるのは8カ国。ブラジルが最多5回の優勝を達成しており、それに4回のイタリアが続く。4年前の南アフリカ大会ではスペインが初の世界王者に輝いた。

 サッカー選手ならば誰もがあこがれる夢舞台。それがW杯だ。そこで繰り広げられるのは国の威信を懸けた戦いであり、自らのサッカー人生を懸けた戦いでもある。それゆえにこれまでも数多くの激闘が演じられ、歴史に名を残すスターが誕生してきた。今大会も期待に違わぬドラマが待ち受けていることだろう。ここでは過去5大会の名勝負を振り返りながら、W杯をおさらいしていきたい。

ヒーローから一転、悲劇の主人公に

PKを外し、うなだれるバッジョ(青)。神がかり的なプレーを連発し、チームを決勝に導きながら、最後は悲劇の主人公となってしまった 【写真:ロイター/アフロ】

1994年 米国大会決勝 ブラジル 0(3PK2)0 イタリア

 欧州時間に合わせた影響で、酷暑にもかかわらず昼間に試合が行われた米国大会。イタリアにとって決勝までの道のりは苦難の連続だった。グループリーグの初戦でアイルランドにまさかの敗戦。続くノルウェー戦は10人での戦いを強いられ、守備の要で主将のフランコ・バレージがひざの負傷で離脱するなど、歯車が完全に狂っていた。それでもグループを3位で突破すると(注:当時は出場24カ国でグループ3位の上位4チームも決勝トーナメントに進むことができた)、決勝トーナメントはロベルト・バッジョが5ゴールを決める活躍を披露。ノルウェー戦で退場したGKの代わりに途中交代を告げられ、アリゴ・サッキ監督との確執もうわさされたエースが、チームをファイナルに導いた。

 ブラジルと対戦した決勝では、けがで離脱していたバレージが奇跡的な復活を遂げる。相手が誇る2トップ、ロマーリオとベベットをシャットアウトし、攻撃陣の援護を待った。しかし、準決勝でふくらはぎを痛めたバッジョが精彩を欠き、イタリアはゴールを奪えない。結局スコアは120分間で動かず、W杯の決勝としては史上初となるPK戦に勝敗が委ねられることになった。

 先行はイタリア。だが1人目のキッカー、バレージのシュートはバーの上を大きく越えていく。その後は両チームが1人ずつ外し、4人終了時点でブラジルが3−2とリードした。迎えたイタリア5人目のキッカーはバッジョ。しかし、決勝進出に多大なる貢献を果たしたエースのキックは、無情にもパサデナ(決勝の開催都市)の空に消えていった。この痛恨のミスにより、イタリアは世界一の座を逃し、バッジョも負傷を抱えながらスタメン志願したことを「チームに不利益をもたらした」とサッキ監督から非難された。決勝トーナメントで神がかり的なプレーを連発し“救世主”と崇められながら、最後は悲劇の主人公として記憶に残ることになったバッジョ。浮き沈みが激しかった彼のサッカー人生を象徴する大会となった。

W杯史に残るビューティフルゴール

華麗なボールタッチに完璧なシュート。ベルカンプの得点はW杯史に残るビーティフルゴールだった 【写真:VI Images/アフロ】

1998年 フランス大会準々決勝 オランダ 2−1 アルゼンチン

 決勝トーナメント1回戦でユーゴスラビア(現セルビア)をアディショナルタイムのゴールで下したオランダと、イングランドをPK戦の末に退けたアルゼンチンの一戦は、攻撃的なチーム同士の戦いとあって、序盤から互いが攻め合う展開となった。12分、ロナルド・デブール、デニス・ベルカンプとつないだボールを、最後はパトリック・クライファートが押し込みオランダが先制。しかし17分、アリエル・オルテガのスルーパスに抜け出したクラウディオ・ロペスがGKとの1対1を制し、アルゼンチンが同点に追いつく。

 その後はオランダが押し気味に試合を進めたが、アルゼンチンもカウンターで対抗。一進一退のまま終盤を迎えた。試合が動いたのは76分。オランダはヌーマンがこの日2枚目のイエローカードで退場となってしまう。しかし、アルゼンチンはこの数的優位を生かせない。87分、オルテガがオランダのGKエドウィン・ファン・デル・サールに暴力行為を働きレッドカードを受けてしまった。

 そしてW杯史に残るビーティフルゴールが生まれたのはその3分後だった。自陣からオランダのフランク・デブールがロングパスを送る。ペナルティーエリア付近やや右に走り込んだベルカンプは、そのボールをぴたりと止めると、チェックに来たアルゼンチンのロベルト・アジャラを、切り返しでかわし右足でシュート。これがネットを揺らし、終了間際に勝ち越したオランダが準決勝進出を決めた。柔らかなボールタッチと流れるような一連の動作。天から授かったセンスが凝縮されたベルカンプのゴールは、そのあまりの美しさゆえに「まるでレンブラントの筆さばきのようだ」と、オランダの歴史的画家に例えられて絶賛された。

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