最後は団結したチームに神様がほほ笑む=都並敏史氏が語るリーガ優勝争い展望
ネイマール中心のチーム作りに無理が生じたバルセロナ
バルサ、レアルの2強にはいくつかの問題が生じていたと話す都並氏。最後に神様が微笑むチームは!? 【画像提供:WOWOW】
大きかったのは、シーズン前にネイマールという大きな存在を入れたことです。もちろん彼は素晴らしい選手ですが、彼中心にチームをまとめていくのは、雰囲気・戦術面を含めて非常に難しい部分があったことは否めない。
マルティーノ監督もバルセロナが持つ良さを踏襲しながら、徐々に自分のサッカースタイルを取り入れようと努力したと思います。ですが、前任者たちが作ったものがあまりにもレベルが高かった。その中で、選手たちがどちらに針を振ったらいいのか見つけられないまま進んできた。そういう気がします。
――重要なゲームで勝ちきれないことも多かったですね。
サッカーは戦術だけじゃないですが、戦術というのも確かにひとつの拠り所で、そのバランスが少し悪かった気がします。苦労してここまで来ているのだから、十分に素晴らしい結果ですが、最も素晴らしい時代と比べると……。ジョゼップ・グアルディオラ監督(現バイエルン・ミュンヘン監督)のサッカーが世界を魅了したチームですから、さすがに厳しい部分があったと思います。
――レアル・マドリーは、最後に優勝に手が届きそうな状況まで調子をあげてきました。
レアルは、カルロ・アンチェロッティ監督の手腕に脱帽という感じでしたね。バルセロナと同じようにガレス・ベイルという大きな存在が入って、みんなも苦労したし、ベイルも難しそうだった。ところが落とし所を見つけてくるアンチェロッティは、本当に監督としてうまい。チームは終盤で、ガーッとスピードアップして、ヨーロッパ最強のレベルにまで仕上がった。これはチャンピオンズリーグ(CL)決勝に残っていることでも、証明されています。
――では、失速のポイントはどこにあったと思いますか?
その一つの理由としては、ディエゴ・ロペスを触ってしまった瞬間に、運が逃げたような気もしますね。当然疲れがある中でも、人間だからCLで残っていれば、どちらも欲しくなる。そこで、CLも欲しいからイケル・カシージャスも、リーグ戦で使っておこうという思いが出た。
でも、結構こういうのが大きいのです。サッカーをやっている人間からすると、これは明らかに風が吹くし、波風が起きる。もちろんカシージャスは全く関係ないですが、他の選手の気持ちに、少し落胆や安心が芽生えたりする。そういう時に身体と心のバランスが悪くなって、筋肉系のトラブルが起きたり、信じられないようなミスが起きる。そういうケースが多々あるんです。そこは智将アンチェロッティも、自分で難しさを感じているんじゃないですかね。
サッカーの技術・戦術のレベルを越えたドラマを感じて欲しい
スペインは世界チャンピオンに君臨している国です。今大会も当然優勝候補に挙げるべき存在だと思います。ただ、相手を驚かせるようなポゼッションサッカーは、運動量やパスワークによって作り上げなければいけない。それをあの南米の暑さの中で実践するのは、ドリブラーのいないスペイン代表にとって、すごく難しい十字架を背負わされたと思います。そこそこはいくだろうけど、ちょっと厳しいかなと見ています。予選からチリに苦しむんじゃないですかね。
――日本代表はどれだけ勝ち上がれるでしょうか?
日本代表は解説を抜きにして、絶対に勝ち上がってもらいたいです。冷静に見て3戦全敗もありうるグループですし、うまくいけば全勝もあるようなグループ。なので、戦い方次第で変わってくるでしょう。
初戦のコートジボワールに対して、しっかり身体で守り、彼らの穴をうまく突けば、必ず勝てます。それを最初に表現して、2戦目で勝ち点6にして、コロンビアに負けてもいい状況を作っておく。そうじゃないと、コロンビアの攻撃力はかなりのものがあるので、なかなか難しいと思いますね。とにかく、勝ち上がってもらいたいと思います。
グループを勝ち抜けば、D組1位は僕の予想だとウルグアイなので、フォルランから情報をもらって勝つ(笑)。そして次に来るのはスペインなので、その試合が見られたら最高ですね。
――では、最終節を待つリーガファンの皆さまへメッセージをお願いします。
僕はサッカーの神様はいると信じているんです。サッカーをプレーした人間は確実に感じていると思いますが、これが今回の最終節では画面を通して感じられると思います。そのゲーム展開の中で、この1シーズンの流れをバルセロナが超えるもかもしれない。その時はメッシが確実に活躍して、特別な存在であることを見せるでしょうし、あるいはティト(・ビラノバ)の魂が降りてくるかもしれない。もちろん、順位通りアトレティコの絆の強さが、勝利するかもしれない。そういったサッカーの技術・戦術のレベルを超えたドラマを感じ取って欲しいし、そんなゲームを期待したいです。