卓球日本女子に残された大きな伸びしろ 「2番のイス」の先のリオ、東京五輪世代

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日本女子チームの総合力

卓球の女子ダブルスでワールドツアー史上最年少優勝を果たした伊藤美誠(左)と平野美宇。若い年代から国際舞台を経験させようという日本卓球協会の方針のもと、ワールドツアーに多く派遣されている 【写真は共同】

 その意味では、ベテランの平野(29歳)は改めて見直される働きだった。ロンドン五輪後は世界ランキングで同じくらいの選手にはほとんど勝てず、衰えを指摘する声も少なからずあった。
 しかし、今大会は1次リーグ初戦のベラルーシ戦でトップバッターに起用され、世界ランキング11位のパブロビッチに快勝。得意のカット型とはいえ、緊張の解けない初戦でチームを波に乗せた。そして香港との準決勝第3試合。呉穎嵐に2ゲームを先取され、さらに第3ゲームも4―9とリードされてからの大逆転劇には驚かされた。
 村上監督も「奇跡。平野のすごい精神力が団体戦独特の雰囲気に引きずり込んだ」とたたえ、石川も「改めて尊敬できる先輩だと思った」と話している。サーブの種類やボールの変化など技術的にスーパーな武器は持ち合わせていないが、持てる力を常に十二分に発揮するメンタルの強さは今大会でも証明された。

 カット型の石垣優香(日本生命)も「福原愛の代役」という重圧に耐えて期待以上の活躍だった。特に準々決勝のオランダ戦、リー・ジエとのカット型対決を制した勝利は値千金。石川と平野がリー・ジャオに敗れた。オーダーでオランダに裏をかかれ、苦手なカット型をぶつけられた石垣の勝利がなければ、日本のメダルもなかったことになる。ともに初出場だった田代早紀(日本生命)と森さくら(大阪・昇陽高)も1次リーグの5戦全勝に貢献した。

大事なことは競争があるかどうか

 ホスト国として銀メダルは最高の結果といえる。石垣の1ゲームしか取れなかった決勝の内容に表れたように、中国の背中はまだまだ遠いのが現実だ。それよりも、今回はロンドン五輪に続いて「2番のイス」を確保したことを素直に喜ぶべきだろう。
 ホームの大声援を受け続けた地の利はもちろん、組み合わせにも相当に恵まれた。村上監督は「福原のいない日本の実力は6、7番目」と見ていたが、1次リーグの組み合わせで「決勝も行けるかもしれない」と思ったという。さらに決勝トーナメントは中国のみならず、シンガポール、北朝鮮、韓国といった強敵がそろって反対のブロックに入った。
 こうした幸運が重なった上での銀メダルだったことを考えれば、2年後のリオデジャネイロ五輪、その先の2020年東京五輪に向けては、まず2番手としての足場を確実に固めることだ。今回のチームがベストメンバーでなかったことを思えば、実は日本には大きな伸びしろが残されている。
 福原は左足小指疲労骨折からリハビリ中で、早期の復帰を目指している。加えて楽しみなのが「東京五輪世代」。平野美宇(14)と伊藤美誠(13)の中学2年生コンビは先月のワールドツアーのダブルスで最年少優勝を飾った。さらに1月の全日本選手権ジュニアを制した加藤美優(15)、身長170センチ超の大型選手、浜本由惟(15)ら逸材が控えている。
 若い年代から国際舞台を経験させようという日本卓球協会の方針のもと、ワールドツアーに多く派遣されている彼女たちは世界ランキングもぐんぐん上昇させている(平野49位、浜本52位、伊藤63位、加藤75位)。今回代表の田代(86位)や森(110位)よりも既に上だ。リオ五輪の代表争いに入ってくるのは難しいかもしれないが、2年後の次回団体戦の切符をつかむ可能性は十分にある。
 大事なことは競争があるかどうか。福原、石川、平野のロンドン五輪銀メダルトリオがトップを形勢する構図は変わらなくとも、3人を突き上げ、脅かす次の層が育つことが3人のレベルアップにもつながるはずである。

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