タリエル、荒行100人組み手を完遂=史上9人目の快挙に「チャレンジだった」

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現役世界王者として荒行に挑戦

史上9人目の100人組み手を完遂した現役世界王者タリエル(左) 【t.SAKUMA】

 荒行完遂! 「国際空手道連盟 極真会館」創立50周年の記念行事の一環として荒行である百人組み手が26日、東京・本部直轄恵比寿道場で5年ぶりに復活し、ロシア支部所属のタリエル・ニコラシヴィリが史上9人目の完遂に成功した。

 100人組み手とは1日で100人と連続で組み手をすることで、50年の歴史を持つ極真空手の中でも過去に成功したのは、K−1でも活躍したフランシスコ・フィリオや極真会館の現館長である松井章圭ら8人のみという荒行。今回は組み手時間90秒、ルールは手やひじによる顔面攻撃が禁止されている国際空手道連盟ルールに準じ、25人ごとに審判が交代するのに合わせて状況に応じた休憩が取られることになった。

 身長173センチ、体重92キロと小柄な体ながらも抜群のスタミナと回転の速いラッシュを武器に10年には外国人としては初の全日本大会優勝、11年には史上最年少となる20歳で世界大会優勝と実績は十分のタリエル。1年弱の準備期間を経て、現役の世界チャンピオンとしてこの荒行に臨んだ。

開始早々は足掛け下段突きで勝利を重ねるも…

最後はスタミナを大きく奪われたタリエルだったが、気力で組み手を続けた 【t.SAKUMA】

 13時5分、松井館長が「極真会館創立50周年、大山倍達総裁が亡くなられて20年、そして折しも総裁の命日にあたる4月26日に100人組手を行うことは非常に意義のあること。勝敗は決めるけど100本の試合ではない。しっかり技のやり取りをして、きれいな組み手を心掛けてください」と挨拶。そして、13時10分に11年世界大会4位の赤石誠を1人目の対戦者として、100人組み手が開始された。

 赤石とは引き分けたタリエルだったが、豪快な突きと威力のある下段蹴りで2人から9人目まで8者連続勝利。11人目、12人目はともに合わせ1本勝ち。その後も特に足掛け下段突きが威力を発揮し、対戦者をバッタバッタとなぎ払って技有りを獲得するなど快調なペースで組み手は進んで行く。

 しかし、50人以降になると足が動かなくなりだし、手数が一気に減る。セコンドのロシア語の檄が激しくなる中で、57人目の身長178センチ、体重115キロという巨漢の岩井健相手には防戦一方で、とうとう初黒星となる優勢負けを喫した。その後も大きく肩で息を吸い、疲れからフットワークも使えず、ひたすら気合で突きや下段蹴りを出していくも単発で、その動作も弱々しくなるばかり。100人組み手完遂者の松井館長が「精神的に逃げ出したくなってくる」という70人目、71人目には初めての連敗を喫した。

 そして、75人を終えたところで3度目の休憩を挟み、76人目からは100人組み手の完遂者であるフィリオが審判を務める中で続行。最初は技有りを取りまくっていた足掛け下段突きの蹴りの威力もなく、相手が距離を詰めてくると息も絶え絶えになって体を相手に預けるだけに。元々色白い顔がさらに蒼白になっていった。

松井館長、完遂理由は「若さとそれに伴う体力」

結果の書いてあるホワイトボードの前でセコンド陣と完遂を喜ぶタリエル 【t.SAKUMA】

 立ってるだけがやっとのような状況の中、とうとう90人目に。松井館長からは「あと10人。締めくくりが大事」と檄。しかし、90人を過ぎると、組み手終わりの挨拶も忘れて自分の陣営に戻り、フィリオから注意される場面も。また、ダメージの蓄積からかガードする右手が上がらずにダラーンと垂れ下がってきた。99人目では大きく目を見開いてラッシュしようとする意欲を見せるも、スピードはなく足も動かない。

 そして、タリエルコールと観衆の拍手が会場を包む中、100人目の対戦者である13年の全日本王者・安島喬平を迎える。安島は容赦ない突きでタリエルを追い込むも、最後の気力を振り絞るタリエルは下がらず突きで対抗。さらには回転浴びせ蹴り、安島の顔を掠める上段前蹴りと意地を見せて、16時31分、3時間21分に及ぶ100人組み手終了を告げる太鼓の音が鳴った。結果は21の1本勝ち、30の技有り優勢勝ち、13の優勢勝ち、27の引き分け、9の優勢負けだった。

 終了の瞬間、セコンドに精も根も尽き果てたかのようにもたれかかって喜ぶタリエル。結果が書いてあるホワイトボードの前で完遂を認める賞状と盾を手に、ロシア支部の選手たちと記念撮影をし、「極真は僕の生活です。今回のチャレンジは生活すべてのチャレンジだった」と振り返った。その後は検査のため救急車で病院へ。松井館長は「若さが一番。それに伴う体力」と完遂の理由を挙げ、「見応えのある100人組み手だった。良く頑張ったと思う」と労った。
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