悲劇の一週間を過ごしたバルセロナ 明確に示された“輝かしき一時代”の最期

必然ともいえるCL準々決勝敗退

CL準々決勝でアトレティコに敗れ、4強進出を7季ぶりに逃したバルセロナ。この敗戦によるダメージは計り知れない 【Getty Images】

 昨年まで6季連続でチャンピオンズリーグ(CL)の準決勝に勝ち上がってきていたFCバルセロナにとって、アトレティコ・マドリーに敗れた準々決勝で生じたダメージの大きさは察して余りある。だがこの結果がサプライズだったかと言えば、そんなことは決してなかった。

 さらにバルセロナは直後のグラナダ戦でも0−1の完封負けを喫した。それはPKと相手選手のオウンゴールで勝利を手にしたベティス戦を含め、公式戦3試合連続で流れの中からゴールを決められなかったことを意味する。この「得点力不足」という病は、シーズン終盤に入って悪化の傾向を強め、遂には修正がきかなくなったチームの危機的状況を明確に示すとともに、過去にも見られた一時代の終わりをはっきりと印象づける要因となっている。

 昨年夏にヘラルド・マルティーノがティト・ビラノバの後任に抜てきされた際、クラブからは選手たちが主導権を握るようになって久しいチームから監督の権力を取り戻そうとしている意図が垣間見えた。選手たちをコントロールする術を失っていく中で消耗を募らせたジョゼップ・グアルディオラが去り、ビラノバが病気の治療のためバルセロナを離れて以降、チームは実質的に選手たち自身によってコントロールされるようになっていたからだ。

 もはや日々の練習に以前のような緊張感はなく、試合ではライバルを窒息させんとばかりに追いつめたプレッシングが見られなくなった。多くの選手がトップフォームを失い、出場機会を得られない選手たちは移籍の意思を表明し、リオネル・メッシはクラブよりワールドカップ(W杯)のことを重視している。

続出するチーム内外でのトラブル

 そんな批判の渦中にあったチームの舵取りを任されたマルティーノは、独自のアイデアをバルセロナに持ち込んだ。時にショートパスをベースとした既存のスタイルにカウンターやロングボール、サイドからのクロスボールを使った攻撃を織り交ぜ、時にウイング不在の4−4−2に近い布陣でボールポゼッションを高める。マルティーノはそうやってプレーのバリエーションを増やすことで対戦相手のバルセロナ対策を上回ろうと試みたのだが、それは4−3−3システムの信奉者たちから反発を買う結果となってしまった。

 しかも現在クラブは混乱した状況にある。ネイマールの獲得オペレーションをめぐる訴訟問題によってサンドロ・ロセイ前会長は辞任。FIFA(国際サッカー連盟)からは未成年選手の国際移籍に際して違反があったとして、1年間の補強禁止処分を受けた。

 さらに、スポーツディレクターのアンドニ・スビサレッタはビクトル・バルデスが長期離脱した場合を想定しておらず、結果として既に今季終了後に契約延長をオファーする意志がないことを伝えているホセ・マヌエル・ピントに3タイトル全てがかかったシーズン佳境のゴールマウスを託すことになった。またこのような状況を見越して第3GKオイエル・オラサバルにプレー経験を積ませてこなかったため、ピントに万一のトラブルが生じた際にはリーガ・エスパニョーラでの出場経験がわずか2試合のGKを起用しなければならない。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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