【週刊グランドスラム272】第49回社会人野球日本選手権大会の見どころ[後半ブロック編]

チーム・協会

東京都に本拠地を移したHondaは、東京スポニチ大会で最高殊勲選手賞の中村伊吹ら、経験豊富な選手で夏の借りを返したい。 【写真=真崎貴夫】

 10月29日の午後6時に、NTT東日本とマツゲン箕島硬式野球部の対戦で幕を開ける第49回社会人野球日本選手権大会の展望を前回に続いてまとめる。今回は、以下の組み合わせにある右側の2ブロックだ。なお、前号はこちらから。

【第49回社会人野球日本選手権大会組み合わせ】

 JR西日本は4月の四国大会で初優勝し、都市対抗には中国第一代表で出場した。一回戦でJR東日本東北に敗れたが、そのJR東日本東北は準優勝しただけに、JRグループのライバルに続きたい。強打の田村 強を二番に入れた打線は破壊力を備え、左腕の花村 凌が先発の柱に成熟。速球派右腕のルーキー・真城翔大も加わった投手陣が、しっかりとゲームメイクする。対する王子は、四国大会のケガで戦列を離れていた主将の宝島史貴が復帰し、打線は本領を発揮しそう。こちらも2年目の左腕・中島 航が中心となる投手陣が安定感をより高め、試合の主導権を握りたい。
 NTT西日本とHondaの対戦も、投打に充実したチーム同士で興味深い。NTT西日本は都市対抗近畿二次予選で第五代表と苦しんだ分、東京ドームでは投打の歯車をガッチリと噛み合わせて準々決勝に進出。タイブレークの延長11回で力尽きたが、頂点に立つ力はあると証明した。埼玉県から東京都に本拠地を移したHondaは、3月の東京スポニチ大会で優勝と最高のスタートを切ったものの、これまでと勝手の違う都市対抗予選では力を出し切ることができなかった。ただ、東京ガスの4強入りに貢献した中村伊吹をはじめ、出場4チームに補強された7名がしっかりと役割を果たしたように、選手のスキルは高い。秋の大舞台では、それを結集させる。
 明治安田とヤマハは、都市対抗一回戦と同一カード。6回までは1対1と投手戦を繰り広げたが、終盤に明治安田が8安打を集めて10点を奪い、8回コールドで完勝した。明治安田は、その勢いで42年ぶりとなるベスト8入り。今大会でも上位を見据える。一方のヤマハは、優勝候補に挙げられながら悔しい思いをさせられただけに、一気の巻き返しを見せたいはずだ。自信と意地がぶつかり合い、再び熱戦になるだろう。
 Honda熊本と東芝も、一回戦屈指の好カードだ。昨年の日本選手権で準優勝し、日本一を目指したHonda熊本は、まさかの都市対抗予選敗退。ただ、選手個々が自身のパフォーマンスを見直し、右肩上がりで大阪へ乗り込む。投手ではHondaから転籍した米倉貫太、打者では左打ちのスラッガー・山本卓弥がキーマンとなり、バイタリティにあふれた試合を見せたい。対する東芝も、京都大会で優勝し、ルーキー右腕の笹森公輔が最高殊勲選手賞を手にするなど順調だったが、都市対抗予選では三菱重工EastとENEOSに完敗した。それでも質、量ともに豊富な練習でチーム力を底上げした。その成果を発揮する舞台に臨む。

前年4強のうち3チームがいない大会を制するのは

 一番右のブロックにも、見逃せないカードが並ぶ。都市対抗二回戦でトヨタ自動車を倒した三菱重工Westは、プロ経験者の北條史也と山下航汰が加わった打線がパワーアップ。若手の台頭で投手陣も多彩な顔触れになっており、二回戦からは4連戦のブロックでも勝ち上がれる戦力だ。日本製鉄鹿島は3年ぶりに都市対抗出場を逃したが、日立市長杯大会と北海道大会を制するなどチーム力は高い。山口直哉と松田彪瑠を投打の柱に、先行逃げ切りの展開に持ち込めるか。

阪神から転籍した北條史也を筆頭に、新戦力で打線がパワーアップした三菱重工Westは、都市対抗で初優勝した三菱重工Eastに続きたい。 【写真=横尾弘一】

 三菱自動車岡崎も投打にヤングパワーの台頭著しく、活気にあふれたチームで粘り強く戦う。だが、都市対抗は一回戦でNTT西日本に大敗しただけに、秋は力を出し切ってベスト4以上を見据える。ただ、対戦相手は近年の躍進目覚ましい東京ガス。打線は2年目の中尾勇介らが頭角を現して活性化し、都市対抗でも準決勝まで勝ち上がった。臼井 浩と髙橋佑樹に頼りがちな投手陣に新星が現れれば、ダイヤモンド旗にも近づくはずだ。
 日本製鉄東海REXでは左腕の吉川大翔がエース格に成熟し、好投を続けてベーブルース杯大会を初制覇した。打線も爆発力を秘めており、試合序盤から活発に機能すれば流れを引き寄せられるだろう。対戦相手は、都市対抗との“夏秋連覇”に突き進む三菱重工Eastだ。橋戸賞の左腕・本間大暉を中心に大野亨輔、長島 彰と百戦錬磨の投手陣、不動の四番・小栁卓也を軸に、どこからでも得点できる打線で黒獅子旗を手にしたが、秋の王座も手中に収めるには新戦力も必要。特に池田陽佑らルーキー右腕がリードした展開でも登板できれば、連覇への道は磐石になる。
 しんがりのカードは、JR九州とバイタルネットが激突する。日本選手権の出場32チームのうち、半分の16チームが今夏の都市対抗出場を逃しているが、JR九州もそのひとつ。悔しさを原動力に伝統の猛練習で若手が力をつけ、日本選手権では九州第一代表を勝ち取った。投打に堅実な試合運びで、粘り強く戦う。また、バイタルネットは最近4年間で3回出場と、実力が拮抗している北信越でコンスタントな戦績を残している。U-23ワールドカップで世界一を経験した松田賢大をはじめ、成長途上の選手たちがのびのびとプレーし、全国でも目立つ実績を残したい。
 昨年優勝の大阪ガス、ベスト4の日本生命と西濃運輸が姿を消すなど熾烈な予選を勝ち抜き、さらに4試合を勝ち抜いたチーム同士によって、11月9日の午後1時には決勝が行なわれる。社会人日本一となってダイヤモンド旗を手にするのはどこか。京セラドーム大阪で熱き戦いをご観戦いただきたい。
【取材・文=横尾弘一】

【電子版はオールカラーになります。】

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著者プロフィール

1949年に設立した社会人野球を統轄する(公財)日本野球連盟の公式アカウントです。全国の企業、クラブチームが所属し、中学硬式や女子野球の団体も加盟しています。1993年から刊行している社会人野球オフィシャル・ガイド『グランドスラム』の編集部と連携し、都市対抗野球大会をはじめ、社会人野球の魅力や様々な情報を、毎週金曜日に更新する『週刊グランドスラム』などでお届けします。

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