悲劇の一週間を過ごしたバルセロナ 明確に示された“輝かしき一時代”の最期
混乱するクラブにまん延しだした“危機感”と“恐怖”
クラシコ決戦となる16日の国王杯決勝。バルセロナにとっては、ここでの勝敗が今後のクラブの命運を握るといっても過言ではない 【Getty Images】
そのような状況下、マルティーノは現在ヨーロッパで最も堅固な守備組織を誇るアトレティコを相手に、勝利が必須の立場にあった第2レグでも両サイドにウイングを配置せず、多数の“フゴネス(創造者)”を中盤に並べる第1レグのプランを継続した。
一方、ハビエル・マスチェラーノ、マルク・バルトラ、ホセ・マヌエル・ピントのトライアングルが守備の穴だと考えたアトレティコの指揮官ディエゴ・シメオネは、第2レグでは専守防衛のプランを変更し、前から圧力をかけて攻めに出ることをチームに命じた。その結果、バルセロナは開始20分までに失点シーン以外にもクロスバーを強打したシュートを3本も打たれるという、近年経験したことのなかった窮地に追い込まれたのだった。
この敗戦が招いた危機的状況はクラブとその周囲に混乱をもたらし、一時は克服できたと思われていたバルセロナとカタルーニャに染み付く人々の被害者意識を再燃させることになる。わずか3日間のうちに三冠獲得への希望が潰えると、人々は今季の全タイトルだけでなく、近年続いてきた栄光のサイクルをも失ってしまうという恐怖に支配されるようになった。
国王杯決勝は傷ついた自尊心を回復する極めて重要な一戦
この試合でレアルは、崩壊しつつあるバルセロナの今季に終止符を打つ死刑執行人となるかもしれない。一方、バルセロナにとってこの国王杯は、シーズン無冠に終わることを避けるため、そして傷ついた自尊心を回復するためにも極めて重要なタイトルとなる。
アトレティコはそんなバルセロナと対照的な状況にあると言える。新たに台頭してきた新鋭として、成長著しい旬なチームとして、そして人々に活力を与える希望的存在として、彼らは心身共にこの上なく充実した状態にあるだけでなく、運をも味方につけながら快進撃を続けている。
彼らは自分たちが歴史的なシーズンを送っていること、リーガとCLの2冠獲得、さらには74年のチャンピオンズカップ決勝で敗れたバイエルン・ミュンヘンに対して40年越しのリベンジを果たせる可能性があることをよく自覚している。
昨日は上、今日は下、そして明日はどこにいるのか分からない。それがフットボールであり、世界中に普及し一大興行と化したこのスポーツの定めである。
近年輝かしい成功の味を堪能してきたバルセロナは今、栄光のサイクルの終わりに直面する恐怖に怯えながら、過去に歩んできた混沌とした時代へと通じる道を引き返しはじめている。
(翻訳:工藤拓)