一時代の終焉を迎えるミランとインテル ミラノの名門2クラブ今季不振の背景
ビッグネーム売却で赤字補填をしてきたミラン
ビッグネームを売却し、フリートランスファーで補強に努めたミラン。戦力の低下は一目瞭然だ 【Getty Images】
94年の政界進出以来、ミランの実質的な経営は片腕のアドリアーノ・ガッリアーニ副会長に委ねられてきたが、その経営手法が「パトロン型」であったことに変わりはない。モラッティ家と同じくベルルスコーニ家も、本業の金融・メディアビジネスが不況の煽りを受けてかつてのような収益を上げられなくなってきており、09年以来ミランへの赤字補填は原則として行われなくなっている。
それ以来ミランは、カカ、イブラヒモビッチ、チアゴ・シルバなどビッグネームを売却して赤字を穴埋めしつつ、段階的に人件費を削減して支出をカット。なんとか収支均衡にこぎつけようと努力を続けてきた。
近年は補強にほとんど資金を投下しておらず、期限付きや契約満了選手のフリートランスファーによって戦力をまかなっている状態だ。昨夏、CSKAが要求する数百万ユーロの移籍金を渋った結果、本田圭祐の移籍が契約満了後の1月にずれ込んだことは記憶に新しい。
年俸の高いスター選手を手放し、補強予算や全体的な給与水準も抑制して人件費を削減すれば、とりあえず収支バランスを安定させることは可能だ。しかしその結果として、チームの競争力が低下することは避けようがない。こちらも、10−11シーズンにスクデットを勝ち取った当時と現在のメンバーを比較してみれば、戦力がどれだけ低下しているかは一目瞭然だ。
ユベントス、ローマ、ナポリは経営体制が整う
それと比較すると、例えば現在セリエA3連覇を目前にしているユベントスの経営体制は、あらゆる面でミラノ勢に先行している。オーナー家が送り込んだアンドレア・アニエッリが会長に就任した11年以降、下部リーグの弱小クラブのスポーツディレクターからたたき上げたエキスパートであるジュゼッペ・マロッタにクラブ経営の実務を委ね、筋の通った戦略的な強化体制を確立する一方で、イタリアで初めて自前の新スタジアムを建設、売上高の拡大も着実に進んできた。
そのユベントスに続いてセリエA2位のローマは、3年前に米国の投資家グループをオーナーに迎えており、先月末には新スタジアム建設計画を発表するなど、経営の近代化と継続的な戦力強化という両輪が順調に回り始めた印象だ。
3位のナポリも、04年にクラブの経営権を手に入れた映画プロデューサーのアウレリオ・デ・ラウレンティスが、収支の均衡を保ちながら少しずつ着実に売上高とピッチ上の結果の両面で成果を積み重ね、健全経営と高い競争力を両立させたビッグクラブに成長した。この両クラブも、チームの強化に関しては優秀なスポーツディレクターに大きな権限を与え、オーナーが過剰に介入することはない。
クラブ体制を再構築できれば再び結果はついてくる
シルヴィオ・ベルルスコーニの娘・バルバラ(中央)がミランの副会長に就任し、内部改革に乗り出している 【Getty Images】
バルバラは、当初は決定的に対立しているかに見えたガッリアーニと短期間のうちに協力体制を築き、経営体制の近代化を積極的に進めようとしている。インテル同様、短期間でピッチ上の結果が劇的に好転することは期待できないかもしれない。しかしユベントスやローマも、2シーズン続けてCLはおろかヨーロッパリーグ出場権すら得られない低迷期を経験している。クラブとしての体制を再構築することができれば、遠からず結果も自ずとついてくるはずだが。