大学進学の桐生祥秀に新たな育成プラン 東京五輪に向け少しずつ進化する4年間に

石井安里

4月の織田記念で9秒台を狙う

東洋大で練習を公開した桐生。目標は東京五輪100メートルでの決勝進出だ 【写真は共同】

 桐生の最大の目標は6年後、東京五輪の決勝に進むことだ。「目先のところでは、織田記念での9秒台(を目指すこと)もあります。ただそれより、桐生とは長く陸上をやっていきたいと思いますし、2020年に東京でオリンピックがあることは運命。ファイナルに立ち、メダルを争うような戦いをしてほしいので、その前に世界で勝負慣れしていたい」とビジョンを語った土江コーチ。桐生も「世界のトップ選手と戦う経験をして、卒業後に東京五輪で勝負したい」と明確な意思を持っている。そこまでの6年間のうち、4年間を占める東洋大での時間は非常に大切で、長い目で見て、一歩一歩、進化していくことを考えている。

 昨年の10秒01があまりに鮮烈で、一気に上り詰めたように思われがちだが、桐生は中学時代から着実に成長を続けてきた。かつて、1991年世界選手権東京大会、92年バルセロナ五輪で400メートルのファイナリストになった高野進に代表されるように、世界大会で結果を残すには、決勝を見据えてラウンドを確実に通過する強さが求められる。この1年を振り返ると、桐生は昨年6月のダイヤモンドリーグで最下位と辛酸をなめたが、8月の世界選手権で惜しくも予選で敗退するも、まずまずの走りを見せた。そして今年3月の世界室内では予選を突破し、少しずつ進化してきた。ラウンドを1つ超えた経験は、確実に次につながる。

 桐生はまだ18歳。20年に向けては、見たこと、経験したこと、すべてが財産になる。始まったばかりの大学生活に、「人間としても大きくなれる4年間に」と希望に胸を膨らませている。

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著者プロフィール

静岡県出身。東洋大学社会学部在学中から、陸上競技専門誌に執筆を始める。卒業後8年間、大学勤務の傍ら陸上競技の執筆活動を続けた後、フリーライターに。中学生から社会人まで各世代の選手の取材、記録・データ関係記事を執筆。著書に『魂の走り』(埼玉新聞社)

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