レイカーズ、歴史的低迷は悪循環の帰結 けが人続出の影に“お家”のゴタゴタも

宮地陽子

名オーナーが亡くなり、内部の複雑な人間関係も影響

名オーナー、ジェリー・バス(右)が亡くなり、“バス家”内部の複雑な人間関係もチームに影響したかもしれない…… 【Getty Images】

 移行期だったのは、コート上のチームだけではない。今シーズンは、レイカーズのオーナーであるバス家にとっても移行期だった。レイカーズの黄金期を築いた名オーナーのドクター・バスことジェリー・バスが去年2月に亡くなり、現在、レイカーズはバス家の子供たちによって共同運営されている。
 数年前からビジネス部門の責任者は長女のジニー・バス、バスケットボール部門の責任者は次男のジム・バスが担い、その他4人息子、娘たちも、それぞれチャリティー部門やD(デベロップメント)リーグチーム、Dフェンダーズなどを任されてきた。

 そのスタイルは変わらないので、一見、昨シーズンまでとも変わらないかのように見えるが、大きな決断をする時にいつも相談していた父がいなくなったことの影響は小さくない。

 さらに、内部での複雑な人間関係もあった。ジニーの婚約者で、レイカーズを5回の優勝に導いた名将、フィル・ジャクソンは、以前からジムとうまが合わず、そのためにジニーとジムの関係も一時期はかなり冷え切ったと伝えられていた。

 2人の役割はきちんと分けられているとはいえ、カリスマ性があったドクター・バスがいなくなったことで、チームのはっきりしたリーダーの顔が見えなくなった。対人関係がうまく、ファンから信頼され、人気なのはジニーだが、ファンにとって一番気になるチーム作りはジムに決定権がある。

 そんなチーム状況を見て、3月半ばにブライアントも、こんな懸念を口にしていた。
「ジムとジニー、2人の関係がどう影響するのかというところから始めなくてはいけない。権限をはっきりさせ、はっきりとした方向性を示したうえで、マイク(ダントーニ)をどうするのか、コーチ陣のことを決める必要がある。すべてはトップからだ」

コービーの引退ロードを飾るチームに立て直せるか!?

 故障が増えたことも、ジムとジャクソンの不仲と関係ないことではないかもしれない。ジャクソンが2010−11シーズン後にヘッドコーチを退くと、ジムは、リーグのロックアウト中の経費削減を名目に、それまで長く働いていた多くのスタッフを解雇した。この機にチーム内からジャクソン色を一掃したかったのではないかと噂されている。

 そして、解雇された中にはメディカル・スタッフもいた。そのうちの一人、アレックス・マケチーニは、現在、トロント・ラプターズのアシスタントコーチ兼スポーツ科学の責任者を務めている。そのラプターズの今シーズンの故障欠場試合は、リーグで一番少なく、チーム全体でブライアントの欠場数よりも少ないのだ。偶然かもしれないが、メディカル・スタッフの経費を削ったことの影響が出ている可能性も十分に考えられる。

 最大の問題は、どれも、すぐに根本的に解決できることではないことだ。あと2年の契約が残るブライアントが元通りのオールスター・レベルで復帰することができたとしても、まわりのメンバーは大幅に入れ替わる可能性が高い。そして、1年後、または2年後の夏までは、また短期間で契約できる選手で穴を埋めることになる。プレーオフには出られても優勝するためにはミラクルが必要だ。

 ジニー・バスはブライアントにはレイカーズで現役を終えてほしい、最後のシーズンにはチームからの感謝の気持ちを伝える引退ツアーをしたいと言う。確かに、それは選手を大事にしてきたレイカーズらしいあり方だ。ただ残念なことに、その忠誠心と優勝狙いを両方とも貫く時代は、もう終わってしまったのかもしれない。

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著者プロフィール

東京都出身。国際基督教大学教養学部卒。出版社勤務後にアメリカに居を移し、バスケットボール・ライターとしての活動を始める。NBAや国際大会(2002年・2006年の世界選手権、1996年のオリンピックなど)を取材するほか、アメリカで活動する日本人選手の取材も続けている。『Number』『HOOP』『月刊バスケットボール』に連載を持ち、雑誌を中心に執筆活動中。著書に『The Man 〜 マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編』(日本文化出版)、編書に田臥勇太著『Never Too Late 今からでも遅くない』(日本文化出版)がある。現在、ロサンゼルス近郊在住。

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