レイカーズ、歴史的低迷は悪循環の帰結 けが人続出の影に“お家”のゴタゴタも

宮地陽子

コービー、ナッシュら主力の故障で低迷

シーズン50敗を記録し、歴史的低迷の中にいるレイカーズ。故障者の続出が最大の要因だった 【Getty Images】

 ロサンゼルス・レイカーズは4月2日のサクラメント・キングス戦に敗れ、今シーズン7試合を残して50敗目を記録した。

 NBA16回の優勝という輝かしい歴史を持つチーム史上65年で、50試合以上負けたシーズンは過去3回、1960年にロサンゼルスに本拠地を移した後では1回(1974−75シーズン)あっただけだ。この調子では、チーム史上最低成績の19勝53敗(1957−58シーズン)を下回る可能性も高い。それだけ、歴史的に低迷したシーズンだった。プレーオフに出られないことは、レギュラーシーズンが終わる1カ月前、3月半ばに決定している。

 今シーズンのレイカーズが、これだけ低迷した最大の原因は故障だ。中心選手のコービー・ブライアント(去年4月の左アキレス腱断裂から12月に復帰するも、6試合に出ただけで左膝を骨折して残り試合全休)とスティーブ・ナッシュ(昨季の右足骨折から始まった腰の神経根炎で、ここまで62試合を欠場)がそれぞれ60試合以上欠場したのに加え、ジョーダン・ファーマーやザビエル・ヘンリーも、すでに30試合以上欠場している。チーム全体で見ると、これまで(4月3日現在、シーズン75試合目まで)に選手が故障欠場した試合数はのべ264試合だというから、1試合平均約3.5人が故障欠場していることになる。

スタメンが組めず、チームの継続性はなく……

 故障が多いことの問題は、戦力が欠けることはもちろんだが、チームに継続性がないという別の問題も生み出す。スターティング・ラインナップだけ見ても毎試合のように入れ替わっており、すでに今季34通りのラインナップが起用されている。
 一番よく使われたラインナップ(ケンドール・マーシャル、ジョディ・ミークス、ウェズリー・ジョンソン、ジョーダン・ヒル、パウ・ガソル)ですら、わずか11試合のみだったのだから、シーズンを通しての継続どころの話ではない。

 もっとも、ラインナップが猫の目のように変わったのは故障だけが理由ではない。負けが続いているときには、同じことを続けているわけにはいかなくなり、どこかでテコ入れが必要になる。スターティング・ラインナップはやりやすいテコ入れというわけだ。しかし、それによって継続性はなくなるという、典型的な低迷チームの悪循環に陥っていた。
 さらに、12月後半や1月に3度の長期連敗を喫して、プレーオフ出場が現実的ではなくなってからは、チームの目的が変化しこともある。
 来シーズン以降に向けて、若手選手を育て、実力を見定めることが優先されるようになった。ブライアントやナッシュが欠場するチームで、ベテランのリーダーとしてチームを引っ張っていたスティーブ・ブレイクが、2月下旬のトレード期限前に若手のケント・ベイズモア、マショーン・ブルックと引き換えでゴールデンステート・ウォリアーズにトレードになったのも、そのためだ。ブレイクの契約は今季が最終年なだけに、プレーオフに出られないチームとしては残しておかなくてはいけない理由はなかったのだ。

大物FA獲得の策が現状のチームの首を絞める

 契約の問題もある。今シーズンが契約最終年だった選手はブレイクだけではない。現在のロスター15人のうち、半分以上の選手の契約が今季限り。ガソル、ヒル、ミークスのように以前からいた選手も、去年夏に契約したクリス・ケイマン、ファーマー、ヘンリー、ジョンソンらも、そろって今季末で契約が切れる。

 もちろん、これは計画的に仕組んだことだ。毎年サラリーキャップを大幅に超えていたレイカーズだが、2011年に成立した新労使協定ではサラリーキャップを超えたチームの補強が大きく制限されることもあり、これまでと同じやり方を続けることが困難になった。チームの大半の選手の契約が同じ時期に終わるように設定することで、確実にサラリー枠をあけ、大物フリーエージェント選手を狙うという計画だ。去年夏にドワイト・ハワードとの再契約ができなかったことを受けての、チーム再建B案というわけだ。

 もっとも、今年夏にはフランチャイズを支えるほどの大物はFAとして出てくる可能性が低くなったため、計画は1、2年延期される可能性も高まっている。いずれにしても、それまでは計画の妨げになるような長期契約は避けるというのが、今のレイカーズの方針だ。

 そのため、去年夏にレイカーズが補強のために狙ったのは、1年契約でもレイカーズに入ることを魅力と感じる選手ばかりだった。ヤングやファーマーのようにロサンゼルス出身の選手や、ジョンソンやヘンリーのように、かつてはドラフトの上位指名ながら、評価が落ちている選手たちだ。彼らを加えたことで、昨シーズンよりはマイク・ダントーニHC(ヘッドコーチ)のスタイルで戦えるチームになったが、それでも寄せ集めチームであることに変わりはない。

 コービー・ブライアントやナッシュ、ガソルらベテランたちを中心に、寄せ集めの脇役選手たちがまとまり、運がよければプレーオフでも勝ち進む、という、今から思えばかなり虫のいいシナリオがフロントの考えだった。中心となる選手から先に故障で抜けてしまったため、結局は最初から最後まで寄せ集めで、入れ替わりの激しいチームで戦うことになってしまったわけだ。

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著者プロフィール

東京都出身。国際基督教大学教養学部卒。出版社勤務後にアメリカに居を移し、バスケットボール・ライターとしての活動を始める。NBAや国際大会(2002年・2006年の世界選手権、1996年のオリンピックなど)を取材するほか、アメリカで活動する日本人選手の取材も続けている。『Number』『HOOP』『月刊バスケットボール』に連載を持ち、雑誌を中心に執筆活動中。著書に『The Man 〜 マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編』(日本文化出版)、編書に田臥勇太著『Never Too Late 今からでも遅くない』(日本文化出版)がある。現在、ロサンゼルス近郊在住。

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