ヤクルトが強くなるために必要なこと 黄金期メンバー飯田哲也氏が“喝”

ベースボール・タイムズ

「伸びしろがあり過ぎる」雄平に期待

飯田氏が「潜在能力が高い」とイチ押しする雄平 【写真は共同】

――高卒4年目の山田哲人だったり、ルーキーの西浦直亨だったり、他チーム以上に若手の成長が鍵になりそうですが?

 選手が入れ替わる時期に来ていることは確かです。6位から下に落ちることはないんで、どんどん思い切った起用をしてほしい。長期的に見ても、若手に経験を積ませることは必要でしょうからね。

――その中で飯田さんの今季イチ押しの選手は誰になりますか?

 僕が挙げるなら雄平ですね。僕自身がコーチとして彼をずっと見てきたという思い入れもあるんですけど、とにかく潜在能力が高い。去年は良いスタートを切りながらもケガをして、すごくもったいなかった。だからその分、今年にかける意気込みというのは強い。今年の雄平にはこれまで以上に期待したいですね。

――雄平選手の一番の魅力はどこでしょうか?

 やっぱりバッティング。長打も打てるし、逆方向にも打てるし、食らい付く力もある。力が有り余っている状態なので、「力を抜いて、確実性を上げなさい」という風にはアドバイスしました。とにかく数字うんぬんではなく、チームのために働ける選手になってほしい。打率2割5分でも、ファンやチームメートが「ここで打ってくれ」という時に打つ選手が本物。そういう頼りになる選手を目指してほしい。

――守備面、走塁面でも期待できると思いますが?

 守備も最初の頃はぎこちなかったですけど、徐々に形になってきた。僕から言わしたらまだまだですけど(笑)。本人もいろいろと考えながらやっているし、とにかく慣れることが一番です。足も速いですし、伸びしろはいっぱいある。伸びしろがあり過ぎちゃって、伸びしろの方が多い感じですよ。

90年代黄金期メンバーとして伝えたいこと

――チームが強くなるために必要なこと、必要な選手は?

 自分を犠牲にする選手。そういう選手が今は少ない。自分が犠牲になってでもランナーを進めるとか、状況に応じたバッティングをチーム全員でやっていかないとやっぱり勝てないですよ。

――飯田さんの現役時代、90年代の黄金期のチームには、そういう自己犠牲の精神があった?

 しっかりとみんなが“野球”をしていましたね。野球を楽しんでいるという雰囲気の中でも、やる時はしっかりやる。普段は和気あいあいとしていても、試合になればバシッと集中してプレーできていた。一つ一つのプレーをおろそかにせずにキッチリとやっていた。だから強かったんだと思います。

――当時、飯田さんの1番打者としてチームをけん引していましたが?

 僕は脇役でしたよ。自分を犠牲にしてここまで来た人間だと思っています。僕が何とか塁に出れば、他の人がつないでくれて、クリーンアップがしっかりと還してくれましたからね。最近、他のチームのコーチや監督とも話す機会が多いんですけど、当時を振り返って「知らない間に点を取られちゃうんだよなぁ」「そんなに打たれた記憶がないのに気付いたら1点取られちゃんうんだよ」と言われるんですよ。それはチームプレーができていたということなんだと思います。個人の力だけじゃなくて、“チーム力”というものがありましたね。

――今のチームに足りない部分はどういったものだと思いますか?

 まだまだ『野村野球』というものが心の中にあると思う。でも最近はそれを頭では分かっていても行動に移せない選手が多くなってしまった。チームが負けても「自分が打てればいいや」というのは下位に低迷するチームの典型的な考え。そうなると、良い選手がいても勝てない。去年だって最多勝とホームラン王がいても6位。それではダメ。基本的なことですけど、やっぱり「自分を犠牲にしてでもチームのために」という自己犠牲の精神を持ってプレーをしていかないといけない。厳しいことを言うようですけど、去年などは試合に負けても「今日はヒット3本打ったから良かった」とか、試合に勝っても「俺は打てなかったから……」と選手たちが思っていたようでならない。少なくとも、そういう風に見えてしまっていた。

――その意味でもリーダーシップを発揮してチームをまとめることのできる選手が重要になる?

 そうですね。そう考えると、宮本(慎也)が抜けたのは痛いですね。チームをまとめる、チームの雰囲気、空気を締めることのできる選手が必要でしょうね。川端(慎吾)はそういう意識が強くて一生懸命やっているけど、まだ若いし、まだ自分のことで精いっぱいのところがある。現時点では相川(亮二)に締めてもらうしかないですね。

勝負は「開幕1カ月」

――今季のヤクルトにどんな戦いを期待しますか?

 選手層が薄い分、一人一人がしっかりと自分の仕事をして、チーム一丸にならないと本当に勝てないと思います。でも若手が多い分、勢いに乗っていけばチャンスはある。逆に最初につまずいたら、そのままズルズルといってしまう危険性もある。借金を多く背負ったところから巻き返すのは非常に力がいるし、今のスワローズには難しい。そう考えると、開幕して1カ月が勝負になる。

――オープン戦では1勝11敗1分けでしたが、開幕戦は白星スタートを切りました。

 好スタートしても、毎年、そこからケガ人が出て落ちていってしまいますからね。代わりに出る選手が頑張れるかどうか。開幕戦の西浦のように、代わりの選手や新しい選手が現れればチームは勢い付く。勢いを付けるためにも開幕1カ月が大事。打線はそんなに悪くないし、巨人以外は付け入る隙がありますからチャンスはある。最初から3位狙いはダメなんで、優勝というものを目指しながら、1試合1試合を大事に、1つでも多く勝つという戦いをしてほしい。

(取材・文:三和直樹/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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