厳しめジャッジも、光った実力、新しい力=澤田亜紀の世界フィギュア女子解説
優勝の浅田は、ジャンプで回転不足やエラーエッジマークが付いたが、澤田さんは「全体的には良かった」と評価する 【坂本清】
ソチ五輪を終えて1か月後に迎えた今大会。今季を「集大成のシーズン」としている浅田、現役引退を表明している鈴木、19歳村上ら各選手の出来は? 元選手の澤田亜紀さんに、女子シングルを解説してもらった。
浅田、勢いありすぎでミスも攻めの演技
演技は最後まで逃げずに攻めていました。ダブルアクセルのステップアウトも、スピードが出過ぎてのことだと思います。あの場面はダブルアクセルの次に3回転トゥループを付ける連続ジャンプを予定していたので、1つ目のアクセルは2つ目を跳びやすくするように、流れるような着氷をすることを意識するところです。そのため十分にスピードをつけたんだと思いますが、勢いがつきすぎて単独でのダブルアクセルのように高く跳び過ぎてしまったようでした。そのため、着氷が詰まってしまったんではないかと思います。
ジャンプ以外の部分ではスピンとステップでレベル4をもらっています。ジャンプには転倒やミスがありますが、スピンで必ず加点をもらってこられるのは大きいです。終盤のステップシークエンスでは全員が2〜3という高い評価をしています。五輪を終えて1カ月ですが、集中力を切らさずに練習を続けてこられたのかなと思いました。
現役引退の鈴木、最後まで光った冷静さと表現力
演技後、満足そうな笑顔で観客の声援に応える鈴木 【坂本清】
今の採点方法では、ジャンプは跳べば点数が入るので良かったと思います。それに同じようなケースで連続ジャンプを続けられたとしても、次のジャンプが1回転になってしまうこともあります。それでも2回転を跳ぶことができたのは、長年の経験があればこそではないかと思います。3回転が2回転になってしまったのは、跳ぶタイミングが合わなかったからだと思います。跳びながら3回転を2回転にするといった判断はほとんど瞬間的にします。ルッツの場合は跳ぶ前に(踏み切り足とは逆の右足で)トゥをつく動作があって、その瞬間くらいにタイミングが「あ、ズレたな」と分かるのでそこででしょうか。ルッツを跳ぶ前の踏み切り足と、もう片方の足の開きのちょうどいい距離というのがあるので、そこから長くても短くてもタイミングがズレてしまうんです。
全体的には最初の3つのジャンプは冒頭のミスの影響も感じられましたが、後半に曲調が変わってからは、ジャンプもバシバシと決まってスピードも出ていました。前半の3つのジャンプは少し詰まった部分もありましたが、後半はそんなことは忘れてしまうようなエネルギッシュな演技でした。曲調が変わると振り付けの雰囲気も変わるので、それも良かったかもしれません。ステップなどでの表現の部分では、もともと上半身を使うのは上手な選手ですが、いつも以上にもっと大きく見せられた気がしました。どういったテイストのプログラムでも、選手たちはアピールをするために指先や体の上下運動、なるべく手を前に出すなど演技が大きく見えるような工夫をします。今回の鈴木選手は、演技が大きくて、指先のもっと先まで何かがあるような表現力でした。
(現役最後の試合で)ベストの出来ではなかったと思うし、悔しい部分もあったと思いますが、それでも満足いく演技だったのではないでしょうか。演技を終えた後は、観客席を端から端まで見渡して、男子のアボット選手(今大会を最後に現役引退)のときにも言いましたが、この様子を目に焼き付けていたように見えました。予定の演技構成を知っているだけにミスも分かりましたが、普通に見た目的にはほぼノーミスの演技で終われて良かったのではないかと思います。