Jリーグの品位を落とした浦和差別問題 サッカー面でも求められるチームの改善

島崎英純

FIFAの活動方針に背く卑劣な行為

差別問題に揺れた浦和。Jリーグの品位を落とし、多大な迷惑をかけたことを猛省する必要がある 【写真は共同】

 まず始めに。3月8日、埼玉スタジアム2002にて16:04から行われたJ1第2節の浦和レッズvs.サガン鳥栖において、浦和レッズサポーターによる『JAPANESE ONLY』という差別的な内容の横断幕が、ホーム側ゴール裏席に向かう入場ゲート上コンコースに向けて、14:00〜15:00の間から試合終了後までの間掲出され、最終的には18:04すぎに現場担当警備員によって撤去された件について、Jリーグから『ホームゲームにおける差別的な内容の横断幕掲出に対し浦和レッズに制裁を決定』というニュースリリースが発表されました。

 本件の『JAPANESE ONLY』という横断幕掲出は明確な差別行為であり、それを掲出した者、一定時間許容したクラブの責任は断じて免れるものではありません。そして浦和レッズを日々取材するメディアの一員である私も、浦和レッズのコミュニティー(共同体)のひとりとして、今回の卑劣な行為を見過ごしてしまった責任を痛感しております。これまでの取材活動の中で、浦和レッズの共同体内部に、差別へ直結する温床はなかったか、サッカー界の文化の範疇(はんちゅう)として軽率に物事を捉えて常識と照らし合わせずに、サポーターの振る舞いについて見て見ぬ振りをしてこなかったかを日々自問自答しております。

 国際サッカー連盟(FIFA)は世界にはびこる悪しき差別の根絶を宣言し、『Say no to racism』というスローガンを掲げています。浦和レッズは今回、この活動方針に背く行為を致しました。浦和レッズのコミュニティーの一員である私からも、深く謝罪を致します。申し訳ありませんでした。

 今回の浦和レッズの卑劣な行為によって、Jリーグ全体の品位を落とし、全てのクラブ、サポーターの方々に多大な迷惑をおかけしました。また今般の制裁措置として、Jリーグは3月23日のJ1第4節・浦和レッズvs.清水エスパルス戦(埼玉スタジアム2002)を無観客試合とする発表を致しました。これに際して、浦和レッズ、チーム、サポーターが責任を負うのはもちろんのことですが、それに伴い、アウェーチームである清水エスパルスのサポーターの方々のサッカーを楽しむ機会、愛するクラブを応援する機会を奪ってしまったことに対して、深くお詫びを申し上げます。

 浦和レッズサポーターの皆様。今回の一件を通して、我々の成すべきことを深く考えるきっかけとしましょう。今後はあらゆる方々からの厳しい評価を真摯に受け止め、改善の努力を怠ってはなりません。3月15日、J1第3節・浦和レッズvs.サンフレッチェ広島戦で行った、節度ある中でのチームへの熱いサポートを今後も継続していきましょう。

 3月23日のJ1第4節・浦和レッズvs.清水エスパルス戦は無観客試合です。これはスタジアム内への入場禁止という措置だけでなく、スタジアム周辺への立ち入りも禁止という意味合いも含まれています。スタジアム周辺に赴くことで生まれる関係各所への負担、そして新たな問題発生のリスクを十分考慮の上、どうか当日はテレビ、ラジオ、インターネットなどの媒体を通してチームを応援してください。それがチームをサポートするという純然たる応援姿勢へとつながります。切に、お願い申し上げます。

指揮官が着手している守備戦術の構築

 ここからは2014シーズンの浦和のサッカーを検証していきたい。浦和はJ1開幕戦のガンバ大阪戦で1−0の完封勝ちを収め、続く第2節の鳥栖戦をノーゴールの0−1で落としたが、第3節の広島戦を2−0で制して2勝1敗、リーグ戦5位の位置に付けている。

 浦和は昨シーズンから明確なスタイルチェンジを行っている。昨季成績はリーグ戦では終盤戦で失速して6位、ヤマザキナビスコカップ準優勝、天皇杯3回戦敗退、5年ぶりに出場したアジアチャンピオンズリーグはグループリーグ敗退だった。このうち、リーグ戦タイトル獲得を果たせなかった要因を考察すると、リーグトップの66得点を挙げた攻撃力と反比例するように積み上げてしまったリーグ12位タイ・56失点の弱体守備に帰結する。

 ミハイロ・ペトロヴィッチ監督は12年の浦和指揮官就任以来、選手たちにポジティブかつアグレッシブな姿勢を植え付けて攻撃力アップに邁進してきたが、昨季の成績を踏まえて、今季は守備の改善に着手してチーム全体の意識付けを行っている。

 ペトロヴィッチ監督は今季のチーム方針をこのように語っている。
「私が浦和に来て最初の2012シーズンは55ポイントを取ってリーグ戦3位の成績でした。昨季は33節を戦うまでは優勝の可能性を残し、ナビスコカップの決勝を戦ったシーズンでもありましたが、我々は2回のタイトルへのチャンスを逃してしまいました。私も選手たちも同じ過ちを繰り返すことはできないと思っています。今季は過去の出来事から学び、それを結果に結びつけます。昨年は我々が最も多くのゴールを決めたチームでした。66得点は1試合平均2得点弱です。それは優勝してもおかしくない数字だと思います。反対に、56失点をするチームというのは降格してもおかしくないチームです。ここまでの2年間、我々は攻撃の部分を強調してきました。その攻撃性を残しながら、守備を構築していく。今季はそれを行っていきたいと思います」

 指揮官の宣言通り、浦和は公式戦開幕前に実施された1月下旬の宮崎キャンプ、2月中旬の鹿児島キャンプで、昨季まではほとんど行われなかった守備練習を取り入れてチーム全体の意思統一を図っていた。その成果はリーグ戦3節までの試合内容、結果に如実に表れている。

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著者プロフィール

1970年生まれ。東京都出身。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当記者を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動。現在は浦和レッズ、日本代表を中心に取材活動を行っている。近著に『浦和再生』(講談社刊)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信。ほぼ毎日、浦和レッズ関連の情報やチーム分析、動画、選手コラムなどの原稿を更新中。

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