「特別な舞台」で世紀の大誤審! 寺尾悟さんに聞く五輪ショートトラック=プレーバック五輪 第5回
世界選手権ではメダルの常連だったショートトラックの寺尾悟(手前)。しかし五輪では誤審騒動もあり、メダルを手にすることができなかった
世界選手権ではメダルの常連だったショートトラックの寺尾悟(手前)。しかし五輪では誤審騒動もあり、メダルを手にすることができなかった【写真:北村大樹/アフロスポーツ】

 1周111.12メートルのスケートリンクで争われるショートトラックスピードスケート。単純に速さを競い合うだけでなく、レースの位置取り、駆け引きや戦略などで勝負の行方が変わり、最後まで目が離せない『氷上の競輪』競技だ。


 そのショートトラックで、日本を代表する選手が、現在トヨタ自動車スケート部監督を務める寺尾悟さん。世界選手権では1993年に初出場して以降、94年に5000メートルリレーのメンバーとして金メダル、99年には個人1000メートルで金メダルを獲得するなど、表彰台の常連として活躍した。


 五輪には94年のリレハンメルから2006年のトリノまで4大会連続出場。500メートルから1500メートル(02年のソルトレイクシティ五輪から追加)まですべての個人種目に出場した。どの距離でも力を発揮できるオールラウンダーとして活躍したが、最高位は94年リレハンメル五輪1000メートルの4位で、メダルには後一歩届かなかった。「五輪は4年に1度の大舞台。多くの人にショートトラックを知ってもらうためのチャンスです。世界選手権の方が出場する選手も多く、真の王者を決める舞台でもありますが、五輪は多くの人に見てもらっているということで、特別な舞台でした」と、五輪にはいつもと違う独特な雰囲気があると話す。


 その雰囲気の中、普通なら起こらないような出来事が起こることもある。それがソルトレイクシティ五輪・男子1000メートルでの事件だ。準決勝まで勝ち上がった寺尾さんは、98年長野五輪で金メダル、銀メダルを獲得した韓国の金東聖と中国の李佳軍らとともにスタート。最終周で金が転倒し、その後ろを走っていた李らが巻き添えに合い、その転倒を避けた寺尾さんがトップでゴール。しかし、その転倒の原因が寺尾さんにあるとして失格となり、決勝進出はならなかった。当時はビデオ判定が導入されていなかったため、ジャッジの判断で裁定が決定。VTRで確認しても寺尾さんは一切周りの選手に触れていることはなく、世紀の大誤審となった。

「決勝に行きたかったという気持ちはありましたね」と当時を振り返る寺尾さん。しかし「ただ、ほかの種目も残っていたので、引きずりたくないという気持ちでした。あまり悔しい思いはなかったです」と、寺尾さん自身はすぐに切り替えて次の種目に臨んでいた。


 誤審騒動に揺れた準決勝の後に続いた決勝でも、事件は起こった。5人で争われた決勝でも最後の最後まで金メダルをかけたつばぜり合いが行われ、最終周の最後のカーブのところでトップの選手が転倒。それに巻き込まれて2番手から4番手の選手も転倒し、結局、一番後ろを走っていたオーストラリアのスティーブン・ブラッドバリーが金メダルを獲得したのだ。「後にも先にもあのようなシーンを見たのは、ほとんどないですね」と寺尾さんが話すように、普段なら起こりえないことが起こってしまったのだ。

「それが五輪なんでしょうね。4年に1度ですし、やり直しがきかないので、失格してでも金メダルを取りたいという気持ちで強引にいき、最後は判定に委ねようというところかもしれません」と、五輪という舞台がそうさせたのだと話す。


 そのような特別な舞台。今回、日本からは男子3選手、女子5選手が参加。日本人選手について寺尾さんは「男子は坂下里士の500メートル、高御堂雄三、坂爪亮介の1500メートルに勝機があるかなと思います。また女子はリレーでメダルを狙ってほしい。厳しいとは思いますが、それぞれが得意な種目に特化して、それ以外の種目をうまくステップアップに使うぐらいの気持ちで臨んでほしいです」と活躍を期待している。


 果たしてソチには、いかなる“五輪の魔物”がすんでいるのか? そして日本人選手がどのような活躍を見せるかに注目だ。

スポーツナビ

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